Q1

「うん、今日もいい天気だね」

晴れ渡った聖地の空を見上げて、オリヴィエは満足そうに笑った。
オリヴィエの視線をたどって、ルヴァとリュミエールも笑顔を浮かべる。
空は美しく澄み切って、さわやかな風が流れてくる。
本当に気持ちの良いお天気だった。

「お休みの日に良いお天気だと気持ちがいいですねぇ」

湯飲みを手に、ルヴァがのんびりと相槌を打つ。

「そうだよね〜。ま、聖地はいつだっていい天候だけれどさ」

３人は顔を見合わせてクスクスと笑い合った。



土の曜日、地の館ではいつもどおりまったりとお茶会が開かれている。
初めのうちはお茶会仲間の３人で過ごしていたが、やがてオスカーが加わり、少年たちが加わって、一挙に座は賑やかになった。
ルヴァはニコニコと嬉しそうに微笑みながら、とっときのお茶菓子を取り出してくる。



一渡り、出されたお茶菓子の類を味わいつくすと、少年たちは陽だまりに席を移して何やら楽しそうに話し出した。
大人たちの会話がふと途切れたとき、少年たちの声が風に乗って聞こえてきた。

「いいか、じゃあ、次の問題いくぞ」

「ああ。いいぞ。どんな問題だ」

「おや…」

面白そうに声を殺してオリヴィエが笑った。

「さすが、ルヴァの愛弟子たちだね」

照れたようにルヴァが微笑む。
リュミエールも笑顔で「そうですね」とうなずいた。
その横で、オスカーはなんとなく複雑な表情で少年たちに視線を向けていた。

「何？　どしたの、オスカー」

オリヴィエに声を掛けられて、オスカーは「あ、いや…」と言葉を濁して視線を戻す。
目を上げると、オリヴィエだけでなく、ルヴァとリュミエールも揃って自分を見詰めていた。
オスカーはさらにうろたえる。

「いや、あの…たいしたことじゃ…だから…その…つまりさ…」

目を逸らしながらオスカーは小声で続ける。

「ルヴァだけじゃなく、あいつらまで、ややこしい問題を出してくるようになったら…イヤ…かな、と…」

オスカーの声はだんだん小さくなる。
オリヴィエは遠慮もなく大笑いして、オスカーの背をバシバシと叩いた。
ルヴァとリュミエールもオスカーに気を使いながらも、こらえられないように笑っている。

「なんだよ。そんなに笑うことないじゃねーか…」

拗ねたようなオスカーの顔が面白いと、オリヴィエはまた笑った。

「ちぇっ…」

オスカーは舌打ちをして、ソファの背にもたれこんだ。
３人の笑い声が納まったところに、子供たちの声が聞こえてきた。

「いいか、５匹のネコが５匹のネズミを捕まえるのに５分かかるとしたら、１００匹のネコが１００匹のネズミを捕まえるのに必要な時間はどれだけだ」

ゼフェルの声だった。
そちらを見ると、ランディが一生懸命考えていて、マルセルが苦笑しながら見守っていた。

「ねえ、これってサ…」

「ええ、以前オスカーが見事に引っ掛かった問題でしたね（第４回Ｑ１参照）」

オリヴィエとリュミエールはオスカーを見ながら楽しそうに笑う。

「お前ら、遠慮ってものを知らないのか？」

オスカーの抗議も２人には相手にされていなかった。
中堅３人の様子を、ルヴァは微笑ましそうに眺めていた。


「じゃあ、こちらでも少し考えてみますか？」

さりげなく、ルヴァが提案する。
笑顔で同意したのがリュミエールとオリヴィエ。
オスカーは２人の手前、引きつったような笑顔でうなずいた。

「せっかくですから、同じようにネコとネズミの問題にしましょう」

ルヴァは、湯飲みのお茶を一口飲むとにっこりと微笑んで言った。

「３匹のネコが３匹のネズミを捕まえるのに３分掛かるとしたら、
１００匹のネコが１００匹のネズミを捕まえるのに必要な時間は、１００分…ではなくて３分ですね」

ルヴァはクスッと笑う。
オリヴィエとリュミエールの視線を受けて、オスカーが「なんだよ！」と膨れた。

「さて、ここからが問題ですよ。
３匹のネコが３分間に３匹のネズミを捕まえるということは、
同じ割合でいくと、３匹のネコが１分間に１匹のネズミを捕まえると考えられます。
では、１００分間に１００匹のネズミを捕まえるのにも３匹のネコで充分だ、という考えは正しいですか？」

「え？」

ルヴァが言い終わって、少しして、オリヴィエが思わず声をあげた。

「それだけ？」

「はい、これだけです。正しいのか正しくないのか、論理的に説明してください」

楽しそうに微笑むルヴァの目の前で、３人の中堅守護聖たちは戸惑ったように顔を見合わせていた。

問：３匹のネコが３分間に３匹のネズミを捕まえるとしたら、
「１００分間に１００匹のネズミを捕まえるのにも３匹で充分だ」という考えは正しいでしょうか。
正しいのか正しくないのか、説明してください。

では、第２問へどうぞ　⇒⇒　

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