水の館に戻るよう御者に命じて馬車に乗る。 馬車に揺られている間に、このまま帰っても眠れないだろう、と、ふと思った。 窓の外を見ると、馬車は森の横を走っていた。 とっさに決心して馬車を止める。 少し森を散策して見たいから、と馬車を下りる。 そのまま歩いて帰るからと、馬車を返して、リュミエールは森の中へ入っていった。 月明かりを頼りに森の小径をたどる。 ２人のお気に入りのあの場所へ行ってみようか。そう思ってリュミエールは歩いた。 既に夜の気配を濃くした森は、昼間とはまったく違う様相をしている。 リュミエールは、ただルヴァのことばかりを思いながら森の小径を歩いていった。 静まりかえった森の中に、夜啼く鳥の声が時折り聞こえる。 　　ルヴァ様… リュミエールは空を見上げる。 木々の茂りが邪魔をして、星空が僅かしか見えない。 ルヴァの行った惑星はどこになるのだろう… 足元に気を付けないといけないと思いつつ、ついつい意識は頭上の星空へと向かう。 大木の横を回り込んだところで、積もった枯葉に足を滑らせた。 あっと思う間もなく、身体が宙に泳ぐ。 かなりの勢いで木の幹に頭からぶつかった。 目の前が暗くなった…