ゆっくりと、意識が戻ってくる。 目を開けると、見慣れた風景が目に映った。 　　これは…わたくしの寝室… 「リュミエール…気が付きましたか」 柔らかな声に首を巡らすと、ルヴァが心配そうに覗き込んでいた。 「ルヴァ…様…。わたくしは…」 「あなたは森の中で倒れていたのです。頭を打っているようだったので心配だったのですが…」 ルヴァの顔がフッとほころんだ。 「どうやら無事だったようですね。よかった…」 リュミエールが起き上がろうとするのを、ルヴァはそっと押し戻した。 「もう少し横になっていてください。打ったのが頭ですからね、用心しないと」 「…はい…」 見ると、カーテンの隙間から朝の光が差し込んでいる。 「…もう、朝なのですね…」 「えぇ。今日は休日ですからゆっくり休んでくださいね」 「ルヴァ様は、星に行かれたのではありませんでしたか」 「えぇ。思ったより早く片付きましたのでね、夜中頃に帰ってきました」 「そうだったのですか…」 　　よかった… 　　それほど厄介な事態ではなかったのですね… 　　無事に帰っていらして、よかった… 「あなたにお知らせすることが出来なかったので、ずいぶん心配をかけてしまいましたね。すみません」 「いぃえ…いぃえ、ルヴァ様…」 「こちらへ帰ってきて研究院での後始末が終わると…」 ルヴァはちょっと恥じらうように笑った。 「すぐにここに伺ったのです。もう夜中を過ぎていましたけど…あなたにお逢いしたくて…」 「…ルヴァ様…」 「そうしたら、館の方たちが、まだあなたが帰ってきていないと心配していて…」 ルヴァはリュミエールの頭をそっとなでる。 それが気持ちよくて、リュミエールはうっとりとする。 「森へ探しに行ったら、あなたが倒れていて…。私は心臓が止まるかと思いましたよ」 リュミエールの頭をなでていたルヴァの手が、リュミエールの頬へすべる。 「あなたが無事でよかった…」 「ルヴァ様…」 ルヴァが状態をかがめて、リュミエールに口付ける。 軽く口付けて身を起こすルヴァに、リュミエールは「もっと…」とねだる。 「え」とルヴァが見詰める。 視線が合って、同時に吹き出した。 「困ったヒトですねぇ〜」 苦笑したルヴァが、もう一度リュミエールに口付ける。 リュミエールの両腕がルヴァの首に絡む。 その腕をほどいてルヴァが身を起こしたのは、ずいぶん時間が経ってからだった。 「とにかく、今日はこのまま寝ていること。いいですね」 ルヴァが生真面目な顔で告げる。 「私が１日あなたのお世話をしますから…」 「はい…」 リュミエールが嬉しそうに答えた。 ルヴァに世話してもらって、１日ベッドで過ごす…それはとても楽しそうに思える。 昨夜はずいぶん心配もしたし、あちこち探し回りもしたけれど、最後は幸せな形に収まったようだ。 　　終わりよければすべてよし、ですね… 「リュミエール、何か飲み物でもいかがです。それとも、リンゴでも剥きましょうか」 「リンゴがいいです…。ウサギさんにしてくださいね」 もう今日は甘えまくりで過ごそう。リュミエールは密かにそう決心した。 　　　　　【　Ｅ　Ｎ　Ｄ　】