リュミエールが見詰めていると、目の前の闇が人の形となったように、つい、と現れた人影があった。 「…クラヴィス様…」 「リュミエールか。ルヴァはいるか」 「いえ、ご不在でいらっしゃいますので、待たせていただいているのですが…」 「…そうか… 目を伏せてしばらく何か考えていたクラヴィスは、目を上げるとフッと笑った。 「では、私も待たせてもらおう」 「あ、はい。ではこちらからどうぞ…」 「あぁ…」 主の不在の館に、クラヴィスと向かい合ってソファに腰を下ろし、時を過ごしているのは、なんだか妙な感じがした。 「クラヴィス様…」 そっと呼びかけた声が、思った以上に大きく響いてびっくりする。 「…なんだ…」 「ルヴァ様に、何かご用がおありでしたか」 「いや、用というわけではないが…散歩をしていたら灯りが見えたのでな…ちょっと寄ってみたのだ。 お前がいなかったら、そのまま帰っていた…」 「はぁ…」 「最近は、お前とゆっくり顔を合わせる機会もなかったな…」 「そうですね」 「たまにはハープなど聞かせてもらいたいものだが…」 「…では、今からお聞かせいたしましょうか」 リュミエールはにっこりと笑ってクラヴィスを見た。 「ハープを持っておるのか」 「はい…」 リュミエールは「しばらくお待ちください」とささやくと、部屋の隅のキャビネットを開けて、小振りのハープを取り出した。 クラヴィスは「ほぅ…」とつぶやいて、面白そうにリュミエールを見詰めた。 「あの…時々弾いて差し上げるので…予備のものを一つ、置いていただいているのです…」 恥じらうように頬を染めるリュミエールを見て、クラヴィスはまた笑った。 夜の静けさを破らないように、抑えた響きがゆったりと流れる。 クラヴィスはソファに沈み込み、目を閉じて、その音を味わっていた。 続けて何曲か奏でて、演奏を止める。 音の余韻が消えるのを待って、リュミエールは視線を上げてクラヴィスを見た

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