「クラヴィス様…？」 リュミエールの視線の先で、クラヴィスは目を閉じて、気持ち良さそうにソファに身を預けていた。 「あ〜クラヴィスは眠ってしまったようですねぇ〜」 突然、背後で声がした。 リュミエールは慌てて振り返る。 「ルヴァ様っ！」 ルヴァは「しぃっ」と人差し指を口に当てた。 「大きな声を出さないで。クラヴィスが起きてしまいますからね」 「あ、あぁ…はい…」 リュミエールはハープをそっと脇に置いて、ルヴァの傍に歩み寄る。 「ルヴァ様…お留守の間にお邪魔しておりました」 「急いで調べておきたいことがあったので、図書館と研究院を回ってきたんです。何も言わないで行ってしまってすみませんでした」 「いいぇ…いいぇ、ルヴァ様…」 リュミエールはルヴァを抱き締めて、耳元でささやく。 「ルヴァ様、お帰りなさい」 「…ただいま、リュミエール…」 くすぐったそうに、ルヴァが答える。 その様子が可愛くて、リュミエールは微笑みながらルヴァに口付けた。 軽い口付けがだんだん深くなってゆく。 ルヴァが切なそうに身をよじる。 長い口付けが終わって、名残惜しそうに唇が離れる。 リュミエールの唇がルヴァの首筋をたどる。 ルヴァが「あ…」と声を洩らした。 「お前ら…いい加減にせよ…」 背後から低い声が響いた。 「ク、クラヴィス様っ！」 リュミエールは慌てて頭を起こして振り返る。 クラヴィスがソファにもたれこんだままの姿勢で、こちらを見ていた。 「あ…あのっ…」 「あ〜クラヴィス…お目覚めでしたか…」 「始めから寝てなどおらぬ…」 「そうでしたか〜。じゃあ、お茶でも淹れましょうか…」 「襟元をはだけさせて何を言っている…」 「え、襟元って…あ…あぁ〜」 「あ、あぁ、すみませんっ…ルヴァ様」 じたばたとうろたえるルヴァ。 リュミエールが焦りながらルヴァの装束を整える。 フッと笑ってクラヴィスが立ち上がった。 「クラヴィス…？」 「帰る…」 「クラヴィス様…」 「面白い物を見せてもらった…礼を言うぞ…」 楽しげな笑みを残して、クラヴィスは来たときと同じようにテラスから立ち去った。 残された２人は顔を見合わせ、ボッと頬を赤らめる。 「あ、あの…」 「あ…あはは…びっくりしましたね〜」 苦笑いが行き交う。 「…お茶にしましょうか…」 「…そうですね」 リュミエールは、もう一度ルヴァを抱き締めて口付けた。 ルヴァが頬を染めて嬉しそうに微笑む。 ようやく２人の週末が始まろうとしていた。 　　　【　Ｅ　Ｎ　Ｄ　】