「あの、わたくしはこれでもう失礼します…」 酔って眠りかけている２人を起こさないように、そっと挨拶をすると、リュミエールは部屋を出ていこうとした。 「待ってよ、何言ってるのよ、リュミちゃん」 眠りかけていると思ったオリヴィエが、立ち上がってリュミエールを捉まえる。 「今夜は夜通し飲むんでしょぉ。ほら、突っ立ってないで座ってよ」 リュミエールを元の席に戻そうとするオリヴィエの手を押さえて、逆に、オリヴィエをソファに座らせる。 「ダメですよ、オリヴィエ。わたくしはルヴァ様を探しに行かなくてはいけませんから」 「どうしても？」 「えぇ、どうしても」 「つまんないなぁ。もっと飲もうよ。オスカーはさっさと潰れちゃうし、一人で飲んでても面白くないからさぁ…」 「オリヴィエも、そろそろおやすみになった方がいいですよ。もうずいぶん飲んだんですし」 「そんなこと言ったってさ…」 拗ねたような口ぶりだったオリヴィエも、酔いが回っているのだろう、ソファの背にもたれてゆっくりと眠りに落ちてゆく。 「そうですよ、オリヴィエ。いい子ですから朝までぐっすりおやすみなさいね」 リュミエールがやさしくオリヴィエの頭をなでる。 オリヴィエが眠ってしまったのを見定めて、リュミエールはそっと部屋を出た。 　　　さて… と、リュミエールは考えた。 なんだか身体中にアルコールの香りが染み付いているような感じがする。 このままでは、ルヴァの前に出るのは気が引ける。 ルヴァの館を訪れるにしても、シャワーを浴びて着替えてからの方がいいかもしれない。 　　　とりあえず、一度戻りましょうか… ため息をついたところへ現れた夢の館の執事が、馬車を用意しましょうと言うので、礼を言って外へ出る。 冷たい夜風がアルコールで火照った肌に気持ち好い。 見上げれば、既に真夜中に近い聖地の空には、満天の星が冴え冴えと輝いていた。

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