Q2

ルヴァが私邸に戻ってくると、少年たちは既に帰った後だった。
提出されている課題のプリントを見て、ルヴァは「おやおや…」と苦笑を漏らした。
そこへ控えめなノックの音がした。
執事が来訪を取り次ぐのに続いておなじみのメンバーが現れる。

「はぁい、ルヴァ〜。お茶しに来たよぉ」

「ルヴァ様、お邪魔をいたします」

苦笑を素直な微笑みに変えて、ルヴァは２人を迎え入れる。

「いらっしゃい。今帰ってきたところなんですよ。ちょうどよかったです…」

「そりゃよかった…って、実はあんたが帰ってきたのを狙って来たんだ」

オリヴィエがクスッと笑ってウインクを飛ばした。
その横でリュミエールがちょっと困ったように微笑んでいた。

「おや、そうでしたか。まあ、とにかく座ってください。お茶を淹れましょう」

ソファを勧めるルヴァに、リュミエールがそっと声を掛けた。

「あの、ルヴァ様…どうかなさいましたか？」

「はい？」

「さきほど笑っていらっしゃったようにお見かけしたのですが…」

「え？　…あ、ああ…これなんですけれどね…」

ルヴァは再び苦笑を浮かべてプリントを２人に示した。

「子どもたちに授業をしているときに出掛けることになりましたから、そこで授業を終了する代わりに課題をやってもらったんですけれどね、どうやら私は間違えてしまったようです」

「何、これ…今日はパズルの授業だったの？」

プリントの中身を見たオリヴィエが呆れたようにルヴァを見詰めた。

「いえ、そうじゃありませんよ。急いでいたせいで間違えたんでしょう。あの子たちにはサクリア分布図の解析練習をしてもらうつもりだったんですよ」

「では、子どもたちにとってはずいぶん楽な課題になったのですね」

「そうだね。でも、これもけっこうややこしそうに見えるよ」

「どうでしょうね。試しにあなたがたも解いてみますか？」

「ん？　ま、それは今度にして、今はお茶にしない？　今はちょっと他の話がしたいからさ」

「…ええ、そうしましょうか」

ルヴァはおとなしくお茶の支度に掛かる。



「さっき、私が帰るのを狙ってやってきた、とおっしゃいましたね…」

一口お茶を味わってから、ルヴァはオリヴィエとリュミエールを交互に見詰めた。

「つまり、私がどこへいっていたかご存じだということですね」

「さすがルヴァだね。そのとおりだよ。あんたがジュリアスに呼ばれて行ったからさ」

「ルヴァ様がジュリアス様と急ぎの相談をされるときは、何か厄介な問題が起こっていることが多いですから…」

「ちょっと心配になって様子を見にきたってとこ」

「そうですか。どうして私のところにジュリアスから呼び出しがあったことを知っているのかはお聞きしませんけれど、相変わらずの早耳ですねぇ」

「ま、いいじゃん。で、何が起こったって？」

「いえ、別に事件が起こったわけじゃありませんよ。ただ、例の星系のバランスが不安定になってきたようなので、守護聖の何人かが現地に視察に行く必要があるんですよ。それで、誰をどこにいつ派遣するかを相談していたんです」

「そんなに大勢が出掛けることになるのですか」

「ええ。５人が２ヶ所ずつ行くことになりました。あなた方も対象に入っていますよ」

「おや、私たちもなの。じゃあ、いつどこに行くのか教えてよ」

「あ〜そうですねぇ…じゃあ、データを差し上げますから、いつものように考えてみてください」

「やっぱりそうきたね。いいよ。考えるからヒント言ってよ」

オリヴィエとリュミエールはうなずいて、ルヴァを見詰める。
ルヴァは「ええ」と微笑んでデータをあげて言った。

「ではお話ししますね。
出掛けるのはあなたたち２人と、オスカー、ゼフェル、ランディの５人です。
行く先は「風渡る草原の惑星」「深き闇の惑星」「輝く暁の惑星」「透き通る水の惑星」「実り豊かな光の惑星」の５ヶ所です。
あなたたちは５日間連続でこれらの惑星を訪れます」

「さっき５人が２ヶ所ずつ行くって言ってたよね。２人一緒に行けってこと？」

「１ヶ所に２人ずつですけど、一緒にじゃありません。午前に１人午後に１人という形で順番に行きます。
月の曜日から金の曜日まであなたたち５人は午前に１回午後に１回どこかの星に出掛けます。
１日の午前と午後の行く先は同じ星です。同じ人が同じ場所に行くことはありません。
そして、誰がどのように行くかはこうなります。

１．最初、つまり月の曜日の午前に出掛けるのはオスカーで、その日の午後に出掛ける人は「草原の惑星」にも出掛けます。
２．ある曜日の午後に「暁の惑星」に出掛けるのはリュミエールです。
３．オリヴィエが午前中に出掛ける日（行く先は「草原の惑星」じゃありません）の翌日の午前中にはランディが「水の惑星」に出掛けます。
４．最後、つまり金の曜日の午後に出掛けるのはオスカーじゃありません。
５．午前がゼフェル、午後がランディという日があります。
６．ゼフェルが午後「光の惑星」に出掛ける日の午前に出掛けるのはオリヴィエじゃありません。
７．水の曜日の行く先は「闇の惑星」です。

…ということですが、いかがです。わかりましたか？」

ルヴァはにっこりと笑って２人を見る。
オリヴィエとリュミエールはメモを見ながらいろいろと試行錯誤の最中だった。

問：いつ、誰が、どこに行くかを答えてください。

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