Q1

「さて、今日は本の整理でもしましょうか…」

朝食を済ませ、ゆったりとお茶を飲みながら、ルヴァがつぶやく。
頭の中には書斎の床に積み上げられた本の山が浮かんでいる。
新しく届いて、読みはしたが書架に収められないままでいる本の数々…。
どこをどう動かして全部を書架に納めようか。

「少し書架を増やさないといけませんねぇ…」

「何を増やすって？」

突然声が掛かる。
驚いてそちらを見ると、オリヴィエが手を振っていた。
その横にはリュミエールも穏やかに微笑んでいる。

「あぁ、いらっしゃい。どうぞ座ってください。今お茶を淹れますね」

「ありがと」

「失礼いたします」

オリヴィエとリュミエールは慣れた足取りでソファに腰をおろす。

「で、何を増やすって？」

お茶を受け取りながらオリヴィエが改めて尋ねる。

「え？　…あぁ、あれですか。えぇ、どうも本が収まらなくなってきたようなので、書架を増やそうかと思いましてね」

「本棚かぁ。そりゃ確かに必要だろうねぇ」

「いくら増やしても、本が増えるのには追い付けないのではありませんか」

「え？」

ルヴァとオリヴィエは思わずリュミエールを見た。
リュミエールはクスクスと笑っている。
ルヴァもオリヴィエも可笑しそうに笑い出す。

「あぁ、可笑しい。リュミちゃんも言うねぇ」

「リュミエール、ひどいですよ〜。　　…確かにそうかもしれませんけれど…」

情けない口調でルヴァが言い足したので、更に笑いが起こる。

「さて、と…」

お茶を飲み干したオリヴィエがルヴァを見る。

「書架を増やそうなんて考えるってことは、今日は本の整理でもするつもりなのかな」

「えぇ、まあ少しでも片付けておこうかなぁと思いまして…」

「ふ〜ん。いいんじゃない。ほら、力強い助っ人もやってきたし」

「え？」

振り向いた視線の先に、バラの花束を手にしたオスカーが立っていた。



「ルヴァ、とりあえず全部本棚に収まったぞ」

そう言いながらオスカーが戻ってきた。ドカッとソファに倒れこむ。

「ありがとうございました、オスカー。あなたが来てくださって助かりましたよ」

ルヴァはにっこりと微笑んで礼を言う。

「オリヴィエとリュミエールも、手伝ってくださってありがとうございました」

「なんの。これくらい、いつでも言ってよ」

「少しでもお役に立てたのでしたら嬉しいのですが…」

「えぇ、ありがとうございます、リュミエール」

「おい、お前ら。一番労働したのは俺だぜ」

オスカーがオリヴィエとリュミエールに向かって主張する。
ルヴァが苦笑しながら「あぁ、もちろんですよ、オスカー」を宥め、オリヴィエは「おや、そうだった？」と面白そうに笑った。

「さ、お茶にしましょうか」

ルヴァがふわりと微笑む。



「平和だな…」

お茶を味わいながら、オスカーがぽつりとつぶやく。

「信じられないくらい静かだ…」

「そういえば、今日は子供たちがいないのですね」

リュミエールが今気が付いたというように周りを見回す。

「ええ。今日はゼフェルのところでゲームをやると言っていましたから、来ないんじゃないでしょうか」

「そうでしたか」

「どうやら、ゲーム大会は終わったらしいね。オスカー、アンタの平和もここまでだよ」

「なんだと」

聞き返す間もなく、少年たちの笑い声と足音が聞こえてくる。

「やれやれ…」

オスカーがため息をつく。
ルヴァは、子供たちのためにお茶の支度を始める。


お茶を飲み、ケーキやせんべいを頬張りながら、少年たちはゲームで大勝した話だとか、うまくトリックで引っ掛けた話だとかを話して聞かせた。
大人たちはけっこう楽しく、その話を聞いていた。


「ねぇ、結局３人のうち誰が１番だったの？」

オリヴィエが興味深げに尋ねる。

「いろんなゲームをやったからな。全部合わせると…」

ゼフェルは「…おっと」と、言いかけた口を閉じた。

「よお、どーせなら、俺たちの順位を当ててみねーか」

「おや、アンタたちから問題とは珍しいね。い〜よ、挑戦を受けようじゃない」

「よし。じゃーちょっと待ってろ」

少年たちは部屋の隅に集まって相談を始めた。
大人たちはその様子を見ながら、楽しそうな笑みを浮かべる。
ただオスカーだけが困ったように顔をしかめていた。


戻ってきた少年たちはニヤリと笑って大人たちを見回した。

「じゃあ問題だすぞ、いいか」

ゼフェルがフフンと笑って言った。

「えーと、俺たちは、自分より上位の人については絶対に真実をいいません。自分より下位の人については真実を言うとは限りません」

ランディが言う注意を聞いた途端、オスカーがげんなりした顔になる。

ゼフェルが「マルセルは３位じゃねーぜ」と言って笑った。
マルセルは「ランディは３位じゃありません」と澄まして言った。

「さあ、俺たちの順位を当ててみな。あ、ルヴァは答えんなよ」

何か言いかけたルヴァをゼフェルは抑える。

「これはオリヴィエとオスカーへの問題だ。ルヴァは黙ってろ」

「あの、わたくしは答えてもいいのでしょうか」

リュミエールが静かに尋ねる。
ゼフェルは少し戸惑ったようにリュミエールを見詰め、少しして「ダメだな」と言った。

「黙って見てな。オリヴィエとオスカーが俺らに降参するのをよ」

「とことん失礼なヤツだね。脳みそ筋肉男と一緒にしないでくれる」

憤慨しながらオリヴィエが噛み付く。
それすら耳に入らないように、オスカーは混乱していた。

問：少年たちの順位を答えてください。どう考えたのかも説明してくださいね。

では第２問へどうぞ　⇒⇒