さあ、第１問をどうぞ

守護聖たちの休暇は、順調に日を重ねていた。
９人それぞれに満足のゆく毎日を過ごしていた。
その休暇もあと数日で終わる。

「妙なもんだよねぇ」

ゆったりとお茶を楽しみながら、オリヴィエが口を開いた。

「何が妙なんです？」

リュミエールが柔らかな微笑を浮かべて尋ねた。
ルヴァも湯飲みを手にしたまま、オリヴィエを見詰めていた。

「休暇、あと何日残ってる？」

「あと…５日ですね」

「５日も休みがあるってこと、普段だったらけっこう長い休みだと思わない？」

「ええ、確かにそうですが…」

リュミエールとルヴァは思わず顔を見合わせた。
オリヴィエはいったい何を言おうとしているのだろう。

「でしょ。休みが５日もある～って思うよね。だけどさ、３週間の休暇ってことになると、あと５日しか残ってないって思えちゃうんだよねぇ～」

オリヴィエはどこか寂しそうな様子でお茶を飲み干した。

「なるほど…確かにそう思えますね」

リュミエールが納得したようにうなずく。

「本当に、感じ方というものは妙なものですねぇ」

ルヴァも面白そうに、うんうんとうなずいた。

「では、改めて今日から５日も休みがある、ということにしてはどうですか」

「あぁ、そうだね、リュミちゃん。そんなふうに気持ちを持っていければいいかもね」

「あぁ、それがいいですねぇ～。じゃあ私たちは今日から５日間もある休暇を、ここで過ごすと考えましょう」

ルヴァがおっとりと微笑んだ。

「オリヴィエ、５日間のお休みですが、何をしたいですか」

「そうだねぇ…」

オリヴィエはしばらく考えていたが、にっこりと笑って言った。

「まずは、こうして３人でお茶、かな」

「おや…」

「オリヴィエ…」

一瞬の沈黙の後、３人は声をあげて笑った。

「また集まってお茶か？　そんなんじゃ聖地にいるときと同じじゃないか」

突然精悍な声がして、オスカーが姿を現した。

「オスカー、いらっしゃい。どうぞ座ってください。今、お茶を淹れますから」

「ああ、すまんな」

「オスカー」

「なんだ、オリヴィエ」

「今さ、これから５日間の休暇を過ごすって話をしてたんだよ」

「なんだって？　ああ、そうか。休暇はあと５日間だったな」

「そうなんだよ。だからあと５日って考えずに、これから５日って思った方が楽しいかなってね」

「なるほど。これから始まる楽しい休暇ってわけか。そりゃいいな」

「オスカー、あなたはこれからの５日間をどうなさるのです？」

リュミエールが面白そうに尋ねる。

「俺か。そうだな…まずは、レディのところを訪ねるか、それとも…」

「それとも？」

「ここでお茶、かな」

再び笑いが起こった。

「オスカー、はい、お茶がはいりましたよ」

笑いながらルヴァがオスカーの前にカップを置く。

「ところでさ、オスカー」

ふと思いついたようにオリヴィエが言った。

「何だ」

「この前の４人の美女たちとは、その後どうなったの」

「ああ…。彼女たちは楽しい友人だったな」

「友人？」

「ああ。彼女たちはいつも４人でいた。俺はいつも４人一緒の彼女たちと酒を飲んでいたんだ」

「おやおや…。さすがのオスカーも、彼女たちの結束を崩せなかったというわけだね」

「そうだ。それに彼女たちには妙な癖があって…」

オスカーは視線を巡らしてルヴァを見た。

「俺じゃなくて、ルヴァが相手をした方が向いてるかもしれん」

「え、何？　どういうこと、それ」

「彼女たちの名前やら飼ってる小鳥の数やらを当てるって話、この間しただろ」

「うん」

「あれは、４人より少し年上の女性の出題だったけど、彼女たち４人もそういう問題がひどく好きなんだ」

「へぇ～」

「話の合間にいろいろな問題を出してくるんだ。まるで４人のルヴァと話をしているような感じだったぜ」

「それで、オスカー、あなたはどうだったのです」

「どうって、なんだよ、リュミエール」

「あなたは、その彼女たちが出す問題にうまく答えられたのですか」

「あ、ああ…まあな。あれだけルヴァに鍛えられてるんだ。少しは出来るようになってるさ」

オスカーは得意そうに胸を張った。
３人は疑わしげな視線でオスカーを見詰めた。

「だけどな、どうにも手の出ない問題もあって…困る俺を見て面白がっているんだ。困ったものだぜ」

「あ～、私を睨まないでくださいよ、オスカー」

ルヴァが苦笑する。

「どんな問題だったの。聞かせてよ」

「ん～、じゃあオリヴィエ、お前、解いてみろよ。こんな問題だった」

お茶をグッと一口に飲み干すと、オスカーは話し出した。

「あの４人、名前はアリス、イーゼル、ケイト、グレースといったが、あるときこんなことを言ったんだ。
今、自分たちはそれぞれ何枚かの金貨を持っていて、４人の数を合計すると１０枚になる。
これから、持っている枚数についての情報を言うから、誰が何枚の金貨を持っているのか当ててみろ、とな。
ただし、２枚持っているものは必ずウソをつく。２枚でないものの言うことは正しい
そう言って、１人ずつ発言した。
こんなふうだ。
アリス「イーゼルとケイトの持っている金貨の合計は５枚」
イーゼル「ケイトとグレースの持っている金貨の合計は５枚」
ケイト「グレースとアリスの持っている金貨の合計は５枚」
グレース「アリスとイーゼルの持っている金貨の合計は４枚」
さあ、どうだ、解いてみろ」

「へえ～。そりゃ確かにルヴァみたいだねぇ～」

オリヴィエが笑った。

「笑ってないで早く解け」

「まあまあ、オスカー。焦らないでください。お茶のお代わりはいかがですか」

おっとりとルヴァが微笑んだ。

問：それぞれが持っている金貨の枚数を答えてください。
どう考えたのかも書いてくださいね。