Q2

ゼフェルとマルセルがルヴァの問題に正解を出し、更に関連した問題にチャレンジしているところに、中堅守護聖の来訪が告げられた。
華やかなオリヴィエを先頭に、オスカー、リュミエールと続いて現れる。

「そろそろお勉強会も終わる頃だと思ってね。アンタたち、今日もしっかり学んだ？」

「はい、オリヴィエ様」

「何しに来たんだよ、てめーら」

「ま、お前らの激励かな」

「ンなものいらねーよ、。とっとと帰りやがれ」

「あ〜ゼフェル…ここは私の館なんですけどねぇ…」

「ルヴァ様、突然押しかけてきて申し訳ありません」

「あれ、オスカー様、いついらしたんですか」

「やっと現実逃避から戻ってきやがったか、ランディ野郎」

「相変わらず元気だね、アンタたち。まぁ落ち着きなさいよ。ルヴァ、私たちにもお茶ちょうだい」

「はいはい、ちょっと待っててくださいね〜」

一気に賑やかになった中に、嬉しそうなルヴァの声が響く。
中堅３人もお気に入りの席に座を占め、のんびりとしたお茶会の空気が漂う。

「あなたたち、今日は３人ご一緒だったんですか」

ほんわりとした笑顔でルヴァが尋ねる。

「いえ…そういうわけではありませんが…」

リュミエールがオリヴィエに視線を投げる。

「うん。私とリュミちゃんは一緒だったんだけどね。さっきオスカーがやってきて、同期の飲み会する前にルヴァんとこ行ってお茶にしないかって言うからさ、前触れもなしに来ちゃってゴメンネ」

「いえいえ、来てくださって嬉しいですよ」

「で、おっさんよぉ」

ゼフェルのからかうような言い方に、オスカーは少しムッとした様子で視線を向ける。

「ルヴァんとこに来たがったのは何でなんだよ。何かわけがあんのか」

「いや、別に理由はないが、まぁ、ついでってやつだ」

「ついでって何だよ」

ゼフェルの追求に構わず、オスカーはルヴァに小さな包みを差し出した。

「これ…アンタに頼まれたもの、これでいいか？」

受け取った包みを解いて中を確認したルヴァの表情が、パァァッと明るくなる。

「ええ、これが欲しかったんです。ありがとうございました、オスカー」

「おや、何だか意味ありげなやりとりだねぇ。何なの、いったい」

「あ〜、なんでもないんですよ、オリヴィエ。オスカーの視察先の惑星に、ちょっと欲しいものがあったのでお願いしておいたんです。なにしろ中央との正式な交流が始まったばかりの星ですから、研究院を通すと時間が掛かりますのでね…」

「あぁ、そういえばオスカー、アンタ、さっき辺境の視察から帰ってきたんだっけ」

いかにも忘れてた、と言わんばかりのオリヴィエの言葉に、オスカーは苦笑交じりにうなずく。

「まったく、友達甲斐のないやつだな」

「また、怪しげな実験とかするんじゃねーだろーな」

ゼフェルが不審げな視線をルヴァの手元に向ける。

「いえ…そんなんじゃないんですよ、本当に…」

そそくさと包みをしまいこんで、ルヴァはにっこりと笑う。

「怪しーな…。ま、危険なことはすんなよ」

「ゼフェル、その注意はお前自身にしろよ」

「何だと、ランディ野郎！　何が言いてーんだよ」

「お前が思っているとおりだよ」

「あ〜もう２人とも、ケンカ止めて！」

いつもながらの少年たちのやり取りを大人たちは微笑ましく見守った。


「あの、オスカー…」

お茶を飲み終えて少年たちが帰っていってから、リュミエールはそっと声を掛けた。

「なんだ」

「あなたがルヴァ様のところに来たがったのは、その頼まれもののためだけですか？」

「え、な、何だよ」

「どうもそれだけではないように思われるのですが…」

リュミエールの視線を受けて、オスカーはフッと苦笑いを浮かべた。

「まったく、お前は妙なところで鋭いな」

「へぇ〜、じゃあ、やっぱり何か隠し事してたんだね、オスカー」

オリヴィエが笑いながらオスカーの肩を叩く。

「なんだよ、もう」

「で、何なの。言ってごらんよ」

「あぁ…」

「オスカー、何なんです？」

ルヴァに促されて、オスカーは覚悟を決めたように話しだした。

「俺がさっきまで視察に行っていたのは最近見つかって交流が始まったばかりの惑星だ。それで、今回の視察はその惑星の実態調査でもあったわけだが…」

オスカーは目の前に置かれたお茶を一口飲むと、話を続けた。

「その惑星には、１３の大陸があった。で、その１３の大陸の状況についてもレポートとして提出したんだが、抜けている項目があったことに気が付いたんだ…。

・温暖な気候で、かつ雨の多い大陸が５つ。
・温暖な気候か、あるいは強い風の吹く大陸が８つ。
・強い風は吹かず、かつ雨の多い大陸が５つ。
・温暖な気候でもなく、かつ雨も多くなく、かつ強い風も吹かない大陸が３つ。

レポートにはそんなふうにまとめて書いたんだが、
『温暖な気候で、かつ雨が多く、かつ強い風が吹く大陸』の数を数え忘れていたんだ。
で、どうしたらいいか…ルヴァに相談しようと思って」

「そんなの、もう１度データを見ればいいじゃない。１３の大陸の１つ１つについてのデータがあったからそうやってまとめたんでしょ」

「ああ。ただ、その生のデータは持ち出さないようにと言われて…だからそんな形でまとめたんだ」

「そうなんだ…。ま、いーんじゃない、その項目がなくたって…」

「いや、しかし、ジュリアス様に質問されたらどうすればいいか」

「大丈夫ですよ、オスカー」

おっとりと言って、ルヴァは微笑んだ。

「それだけまとめてあれば、『温暖な気候で、かつ雨が多く、かつ強い風が吹く大陸』の数はわかりますから」

「本当か！」

「ええ。でもジュリアスに聞かれて、計算してくれとも言えないでしょうから、あなたもちゃんと算出しておいた方がいいでしょうね」

「ああ、そうだな」

「オスカー、アンタ何ニコニコしてんの。早く計算したらどう？」

「え、…俺がやるのか」

「あったりまえでしょぉ。ルヴァが教えてくれるの待っててどうするのよ」

「あ…いや…でも…」

「頑張ってくださいね」

リュミエールはにっこりと微笑む。
ルヴァも穏やかに微笑んで、「それが片付いたらディナーにしましょう。食べていってくださるでしょう？」と３人を見回した。

問：１３の大陸のうち、『温暖な気候で、かつ雨が多く、かつ強い風が吹く大陸』はいくつあるでしょう？

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