Q2
「ルヴァ、邪魔をするぞ…」

静かな声と共に、黒い影のように長身の姿が室内に入ってきた。

「おや、クラヴィス。いらっしゃい。…もうよろしいのですか」

「なんのことだ…」

「いえね、ジュリアスがなんだか拗ねているようでしたからねぇ。これは、あなたと口げんかでもしたか、それともあなたが何かに没頭していて相手をしてもらえなかったかのどちらかだろうと思っていたんですよ」

「ルヴァ！」

押し殺した悲鳴のような声で、ジュリアスが叫ぶ。
それに動じることもなく、ルヴァはにっこりと笑って話し続ける。
そんなルヴァの様子を、中堅の３人は息を詰めて見守っていた。

「ジュリアスだけではわかりませんでしたが、あなたから感じられるモノを合わせて考えますとね、どうやら後者のように思われましたから…」

「ルヴァには敵わぬな…」

苦笑を浮かべて、クラヴィスはジュリアスの隣に腰を下ろした。

「星の巡りがな…今日の明け方から数刻の間、特殊な状況にあったのだ。それを読み解くのに、これが傍にいては邪魔になる…」

「それならそうと、ちゃんと説明せよ。言ってくれれば納得できたのに…」

「説明など…面倒だ…」

「面倒とはなんだ！」

「面倒だから面倒と言った…」

「あ〜、ジュリアスもクラヴィスも、その先はまた後からにして、とりあえず、お茶を飲みませんか〜」

ルヴァの声に、ジュリアスはハッと周りを見た。
その頬がカーッと赤くなるのが、誰の目にも見えた。

「さ、じゃあルヴァ秘蔵のお茶を頂こうか」

そ知らぬ顔でオリヴィエが言った。



先程のルヴァの問題を聞いて、クラヴィスは「ふむ…」と片眉を上げた。

「そなた、わかるか」

「うむ…」

悠然と微笑むクラヴィスを横目で見て、オスカーは口の中で「ホントっすか…」とつぶやいた。
その途端、クラヴィスがジロリとオスカーを見て、フッと笑う。

「問題を解くのに苦労したようだな、オスカー…」

静かなだけにいっそう迫力を感じさせる声が、どこか笑いをこらえているような色を帯びて、オスカーに掛けられる。

「え、いえ、苦労だなんて、全然そんなことないですよ」

引きつった笑顔で、オスカーは答える。

「ほう…」

面白そうにクラヴィスは笑った。

「クラヴィス、あまりいじめてやるな」

ジュリアスの言葉は、クラヴィスを宥めるのに役にたったのかどうか…。
クラヴィスはオスカーに向かってからかうように言った。

「では、私からも問題を出してやろう。ルヴァの問題よりは易しいから安心しろ。あぁ、尻尾を巻いて逃げ出してもよいぞ…」

「…逃げ出したりしませんよ。いつでも受けてたちます」

「感心なことだな。では答えてみよ。よいか…」

「ええ、いいですよ」

妙な話の展開に、周りは皆呆然として２人を見詰めていた。
張り詰めた空気の中にクラヴィスの声が響く。

「ここに１００人の人間がいる。１００人とも、正直者かひねくれ者のどちらかだ。よいか…」

「はぁ…」

「そのうち、少なくとも１人は正直者だ。そして、１００人の中から任意に２人を選んだ場合、少なくとも１人はひねくれ者だ」

「はぁ…」

「では、この１００人のうち、何人が正直者で、何人がひねくれ者か…わかるか？」

「はぁ…？」

面食らったようにオスカーは情けない声を出した。
楽しそうに微笑んで、クラヴィスはお茶のカップを取り上げる。
オスカーは平静を装いながら、一生懸命考えていた。
そして、周りは皆、助言したものかどうか迷いながらオスカーを見守っていた。

問：１００人のうち、何人が正直者で、何人がひねくれ者でしょう。
　　　どう考えたかも答えてくださいね。

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