Q2

「え、そうなのか？」

「へぇ〜、おもしろいね」

「偶然のいたずらってヤツだな」

「えぇ、素敵な偶然ですね…」

ルヴァが新しいお湯をポットに満たし、ついでにお茶請けの追加も見繕って戻ってくると、お茶会の席は賑やかな会話で盛り上がっていた。

「楽しそうですねぇ。何のお話ですか」

「うん、昨日なかなか楽しい偶然があったって話なんだけどね…おや、どうしたの、それ。なんだか凝ったケーキじゃないの」

「あぁ、これはマルセルが持ってきてくれたんですよ」

「ふ〜ん。相変わらずの腕だね、マルセル」

「ありがとうございます。果物の収穫がいろいろあったんでいっぱい飾ってみたんです。中にもたくさん入ってるんですよ」

「ケーキなんかにするより、酒造れよ、酒。果実酒ってやつをよ」

「ゼフェル、無茶言うなよ。マルセルはお酒よりケーキの方が好きなんだからいいじゃないか」

「あぁ、おめーは食べられるものなら何でもいいだろーけどな」

「何だと！」

「何だよ！」

「ゼフェルもランディもやめてよ。あのね、少しだけだけどお酒も造ってみたんだよ」

「何、ホントか！」

「うん。出来上がったら２人で飲んでみてね」

マルセルに微笑まれて、ゼフェルとランディは大きくうなずいた。

「ふぅ〜ん。マルセルちゃんもついに酒造りを始めたか。そのうちカティスを凌ぐようなワインなんかも造っちゃうかもね」

「えぇ、楽しみですね」

「しかし、技術面はともかく、カティスを凌ぐのは難しいだろうな」

「何それ。技術面はともかくってどういう意味よ」

「カティスは、酒造りに関して技術以上のものを持っていた」

「どういうことです、オスカー」

リュミエールとオリヴィエは不思議そうな顔でオスカーを見詰める。
少年たちも話を止めてオスカーの答を待っていた。
オスカーはおもむろに口を開く。

「カティスはな…」

｢カティスは？」

「酒飲みだった」

「はぁ？」

「酒が好きで、この上なく酒を愛していた。カティスのワインにはその愛情が溢れている」

「何を言うかと思ったら、この男は…」

「でも、確かにそうかもしれませんね」

「リュミちゃん、アンタまで」

「だって、オリヴィエ、思い出しませんか。お酒を造っていらっしゃるときのカティス様は本当に楽しそうでしたよ」

「あぁ…うん、そうだね。確かに、土いじりをするときとワインの仕込みをしているときのカティスはいい顔してたよねぇ」

中堅３人はしばし口を閉じて、それぞれにカティスを思い出していた。
ゼフェルは笑みを浮かべてマルセルを見る。

「おい、聞いたか。おめーが師匠を越えようと思ったら、あれ以上の酒飲みにならなきゃなんねーってよ」

「え〜。僕とても無理だよ。カティス様以上なんて…」

マルセルの情けない声に笑いが起こる。

「さぁ、お茶のお代わりがはいりましたよ」

ルヴァが微笑みながら声をかけた。


「で、先ほどのお話は何だったのです？」

ケーキがあらかた片付いたころ、ふとルヴァが言った。

「さっきの話…あぁ、昨日の楽しい偶然ってヤツのこと？」

よく覚えてたわね、というようにオリヴィエが答える。

「えぇ。昨日いったい何が起こったんです？」

「そんなたいしたことじゃないんだけどね。最近、回ってくる書類が入ってるファイルが色分けされてるでしょ」

「えぇ、そうですね。書類の区別がわかりやすいようにって、この間からそうなりましたね。急ぎの書類を後回しにされないようにという配慮らしいですよ」

「最優先のモノが赤、それほど緊急でもないモノが青、複数の守護聖が係わるモノが黄色、処理中の案件で手元保管用が緑、と４色に分かれてるでしょ。昨日の朝イチで回ってきた書類が４件あって、ちょうどその４色のファイルが１つずつあって、なかなか綺麗だったって話をしたら…」

「俺も４色来てた」

「わたくしもです」

「俺ンとこもそうだったぜ」

「って話になってね、詳しく話してみたら、なんと、４人とも同じ４ヶ所からの書類で、しかも一つもダブっていなかったんだよ。これってスゴイと思わない？」

「ダブっていなかったということは、つまり、その４ヶ所とも４色のファイルを１つずつ送ったということですね。なるほど、それは面白いですね〜」

「でしょ」

「ルヴァ様」

ふと何か思いついたようにリュミエールが言った。

「わたくしたちがそれぞれどこから何色のファイルを受け取ったか、当ててごらんになりませんか」

「おう、そりゃ面白れーな。いつもルヴァに難しい問題出されてばっかだもんな。たまにはこっちから問題出してやろーぜ」

リュミエールの提案に、ゼフェルが笑いながら同意した。
オリヴィエとオスカーもうなずいてルヴァを見た。

「そうですねぇ。えぇ、いいですよ。考えてみましょう」

「よし。じゃあ最初に確認しとくぜ。書類の出どこは女王補佐官、ジュリアス、王立研究院、王立派遣軍だ。４ヶ所とも赤・青・黄・緑のファイルを１つずつ回してきた。で、俺たち４人は４箇所から１つずつファイルを受け取った。受け取った４通は全部色が違っていた。そーいうことだ。いいか」

「えぇ」

ルヴァがうなずくと、４人はちょっと打ち合わせをしてから、次のように話した。

ゼフェル「俺のとこには補佐官から赤いファイルが回ってきた」

オスカー「『補佐官殿から緑のファイル、ジュリアス様から青のファイル』が回ってきたのはリュミエールじゃないぜ」

リュミエール「王立派遣軍から緑のファイルが回ってきたのはオリヴィエではありませんでしたよ」

オリヴィエ「リュミちゃんに赤いファイルを回してきたところは、オスカーに黄色のファイルを回してきたんだよね」

ゼフェル「俺に青のファイルを回してきたところは、リュミエールに黄色のファイルを回してきたぜ」

「さぁ、これだけのデータでわかるかなぁ〜」

不適に微笑むオリヴィエに、ルヴァは「そうですね〜」と笑った。

問：４人のところには、それぞれどこから何色のファイルが回ってきたのでしょうか？

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