Q2



ミックスジュースの大騒ぎが一段落して、６人が普通のお茶とお菓子で寛いでいると、しばらくしてルヴァが帰ってきた。


「あ〜、皆さん、まだいてくださったんですね。留守をしてすみませんでした」

「お帰りなさいませ、ルヴァ様」

「ルヴァ、お疲れ様」

「何か、重大事件でも起こったのか」

「いぃえ、急ぎではありましたけど、特に重大ということもない問題でしたよ。おや、あなたたちもいらしてたのですね」

「おぅ」

「こんにちは」

「お留守の間に失礼してます」

少年たちが口々に挨拶をする。嬉しそうな笑顔で、ルヴァは挨拶を返した。



ルヴァが着替えをすませて戻ってくると、改めてお茶会となる。
留守の間の顛末を聞いたルヴァは楽しそうに笑った。

「面白いことがあったのですねぇ。それで、あなた方は首尾よく美味しいジュースをご馳走になれたのですか」

「任しといて。ちゃぁんと問題を解いて一番美味しいってヤツを飲んだよ。ま、解いたのはほとんどリュミちゃんの力だったけどね」

「オリヴィエ、わたくしはそんな…」

「おい、ルヴァ、まだジュース残ってんぜ。飲んでみるか」

「え、何のジュースですか…ゼフェル…それ、一番まずいのじゃないですか…」

「遠慮するなよ、何事も自分で確かめることが大切だって、ルヴァいつも言ってるじゃん」

「それとこれとは話が違いますよぉ〜」

ジュースを手に追いかけるゼフェルと、必死で逃げ回るルヴァの姿に、皆、大笑いになった。



ほのぼのとした午後の時間が過ぎてゆく。

「ねぇ、ルヴァ、何か面白い話、ない？」

お茶の香りを楽しみながら、オリヴィエが尋ねる。
他の５人も、興味深げにルヴァを見詰めた。

「そうですねぇ…」

ルヴァは微笑んでお茶を一口飲む。

「私が留守の間に、皆さん、いろいろと頭を使われたようですから、傾向の違う、軽いモノにしましょうね」

「あらら、やっぱり問題になっちゃうわけだね」

面白そうにオリヴィエが声を上げて笑った。

「ま、それでこそルヴァだよね。いいよ、聞きましょう」

「えぇ…」

６人の顔をゆっくりと眺めまわして、ルヴァは話し始めた。

「エレベーターというモノはご存じですよね。ランディ、いかがですか」

「あ、はい。階段が動くヤツですね」

「バカ！　そいつァエスカレータだ。エレベータってのは箱が上下するヤツだよ！」

慌てたゼフェルが身振り付きで訂正する。ランディはちょっと考えて「あぁ、そっかー」と頭を掻いた。

「俺、すぐごっちゃになっちゃうんだよ。えーと、箱のヤツがエレベーターで、階段のがエスカレーターだな。よし、わかった。ルヴァ様、わかりました。大丈夫です」

「あぁ、はい。ではお話しましょうね。
これは主星のある街でのお話なんです。ナンシーという女性がいまして、この人は高いビルの１５階に住んでいました。そして、このナンシーは不思議な行動を取るのです」

「あ、あの、ルヴァ様…」

「はい、なんですか、マルセル」

「それ…怪談じゃありませんよね？　僕、怖い話苦手なんですけど…」

「あぁ…。えぇ、大丈夫ですよ。変わった話ですけど怖い話じゃありませんから」

「ほら、マルセル、落ち着いて座ってろよ。で？続きは何なんだ、ルヴァ？」

「えぇ、ナンシーの住んでいるビルは高いビルですから、もちろんエレベーターが設置されていました。ナンシーは毎朝エレベーターで１階まで降りて出掛けていきましたが、帰ってきたときの行動が変わっていました。彼女は周りを見回して、誰もいないことを確認すると、エレベーターに乗るんですけれど、なぜか５階で降りてしまうのです。そして、５階で降りても５階のどこかに行くというのではなく、そのまま普通の階段のところに行って１５階まで階段を昇って家に帰るのです」

「はぁ？　何だ、そりゃ…」

「彼女の行動の説明がつきますか」

ルヴァは６人を順々に眺めた。微笑んでうなずく者、混乱の眼差しを向ける者、様々だった。

「もう一つ、奇妙な話をしましょう。
これも主星のある街でのお話なんですが、とあるケーキ屋に入ってきた男の人が、
　『家には２人の母親と２人の娘がいるから…』
と言って、ケーキを３つ買っていったのです」

「え？４つ買わないと足りないんじゃないですか？」

「わかった。大きなケーキで、切り分けるんですね」

「いいえ。彼はちゃんと１人に１つケーキを買いましたよ」

「計算合わねーじゃん」

口々に疑問をぶつける少年たちを、ルヴァは微笑ましそうに相手にしている。
オリヴィエは、オスカーに「どう？」と目を向ける。
それにも気が付かない様子で、オスカーは戸惑った顔付きで考えていた。
オリヴィエはリュミエールと顔を見合わせて、クスリと笑った。

問：ルヴァが話した２つのお話に、合理的な説明をしてください。　（得点は１つ２点とします）

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