Q1




「いかがです…？」

「ん〜、うん、美味しい。美味しいよ、これ」

「そうですか。よかった」

オリヴィエの言葉に、リュミエールはホッとしたように微笑んだ。

「初めて使うハーブで、どんな配合が適するのかよくわかりませんでしたから、試しに合わせてみたのですが…」

「いいんじゃないかな。私としてはもう少し刺激的でもかまわないけどさ」

「俺には何がどうだなんてことはわからんな。ただ、まぁ飲みやすいことは飲みやすい」

「飲みやすいと言っていただけるだけで充分ですよ、オスカー」

「そうだよ〜オスカー。アンタがハーブのこと薀蓄たれたりしたらこっちがびっくりしちゃうからね。アンタは黙って飲んでりゃいいんだよ」

「オリヴィエ、お前、俺をバカにしてないか」

「してないしてない…」

オリヴィエは面白そうに笑い出す。
オスカーは小さく「ちぇっ」とつぶやいた。

土の曜日の午後、主のいない、地の館だった。




賑やかな笑い声と足音が近付いてきた。
待つ間もなく、年少守護聖たちが元気な姿を現す。

「よぉ、じゃまするぜっ」

「こんにちは〜」

「失礼しま〜す」

「来たね、悪ガキ共」

「いらっしゃい。いつもお元気ですね」

「お前たち、遊んでばっかりいるんじゃないぞ」

「うっせぇな。おっさんたちだって集まって茶ァ飲んでばっかりいるじゃね〜か」

「大人はいーんだ」

「なんだよ、その理屈は」

「はいはい、子供の言い合いみたいなのは止めてね。早く座んなさいよ。リュミちゃんの新作飲んでみる？」

「オリヴィエ様、何のことですか、新作って」

イスに座りながら、マルセルが尋ねる。

「先日、新しいハーブを手に入れたのです。なかなかいい香りなので、ブレンドしてみたのですよ」

リュミエールが静かに答える。

「へぇ〜。つまり今日は新しいハーブティーの試飲会ってことですか」

「えぇ、まぁ…そういうことになってしまいましたね」

「あれ、ルヴァ様はいらっしゃらないんですか」

辺りを見回してランディが言った。

「うん。ルヴァはジュリアスに呼び出されて王立研究院に行ってるよ」

「おめーら、相変わらずだなぁ」

ゼフェルが呆れたような声を出す。

「館の主人が出掛けてるってのに、よくのんびりと茶ァ飲んでられるもんだ」

小さな笑いが起こる。

「でも、ま、その方が都合がいいかな」

ゼフェルがニヤッと笑ったのを見咎めて、オスカーが座り直す。

「お前ら、何をたくらんでる」

「たくらんでるだなんて、人聞きの悪いこと言わないでください、オスカー様」

マルセルが抗議するのに、ランディも「そうですよ」と言葉を添えた。ゼフェルは「フン」とせせら笑っている。

「じゃあ、何しにきたのか、説明してもらおうか」

オリヴィエに問い詰められ、３人は顔を見合わせてニッと笑った。

「何よ」

「ん。まぁ、俺たちも試飲会ってとこかな」

「え、何だって？」

「ほら、ランディ、出せよ」

「あ、あぁ」

ランディは肩に掛けていたクーラーボックスをテーブルの上に置いた。

「何、それ。何持ってきたの？」

「この間、ルヴァが野菜をもっと食えって言ったんだよ。ビタミンだの何だのっていろいろ必要だからって」

「あぁ、そうだねぇ。野菜は健康にも美容にもいいんだよ」

「食うのが面倒だったらジュースにしてもいいって、ルヴァが言ったからよ」

「僕のところで取れた野菜でジュースを作ったんです」

「ちょっと待ってよ。いくら美容にいいからって、青汁飲む趣味はないよ、私は」

「安心しろよ。俺にもねーぜ」

「ちゃんと果物とのミックスジュースにしてあるんです」

「へぇ〜、やるねぇ」

「それだけじゃねーぜ。なぁ？」

「俺たち、さらに一味付け加えたんですよ」

「どういうこと？」

「さて、これからが問題だぜ」

「問題？」

「あぁ、そうだ」

３人はまた顔を見合わせて笑った。

「あのな、俺たち、いろいろな野菜ジュースを作ってみたんだ」

「えーと、使った野菜は…ピーマン、ほうれん草、セロリ、キャベツ、にんじん。果物は…マスカット、バナナ、桃、オレンジ、レモンでした」

「野菜と果物は１種類ずつの組み合わせで、それぞれ１回しか使ってないぜ」

「で、一味付け加えたのは、はちみつ、シナモン、タバスコ、ミント、コショーでした」

「へぇ〜。妙なことやってたんだねぇ。それで？」

「えぇ、せっかくだから皆さんにもご馳走しようと思って…」

「ただ飲ませるのは芸がねーからな。これから俺たちが言うことから、５種類のジュースの組み合わせと、どのくらいうまかったかのランクを当ててみな」

「全部当たったら、その中のお望みのジュースを差し上げます」

そう言ってランディはテーブルの上のクーラーボックスを叩いた。

「その代わり、間違えたら、俺たちが選んだヤツを飲んでもらうぜ」

楽しそうにゼフェルが笑う。

「別にそんなもの飲みたくないけどさ…」

「挑戦されて逃げるわけには行かないってことだな」

「そういうことだね。さぁ、ヒントを聞こうじゃない」

闘志を表すオスカーとオリヴィエの傍らで、リュミエールは困ったように微笑んでいた。

「ようし、じゃぁ行くぜ」

「キャベツとコショーなんてよく思いついたよねぇ」

「ピーマンと桃ってのもいい組み合わせだったと思うよ」

「レモンとミントのジュースってヤツは、はちみつの入ったヤツとバナナのヤツよりはうまさは下だったな」

「にんじんとマスカットの組み合わせは失敗だったよね」

「ああ。あれはまずかったもんな。タバスコの入ったのは普通だったけど」

「セロリのジュースがいちばんうまかったぜ。なぁ」

「うん、そうだね」

「さぁ、ここまでだ。わかるか」

「あ、うまさのランクは、うまい・まぁうまい・普通・ちょっとまずい・まずいの５段階です」

期待に満ちた少年たちの視線を浴びながら、中堅３人は真剣に考え始めた。

問：５種類のジュースについて、野菜・果物・加えたもの・美味しさのランクを答えてください。

では、第２問へどうぞ⇒⇒