Q2


「あ〜あ、今回もルヴァにはあっさりとｊ答えられちゃったねぇ」

紅茶のカップを口に運びながら、残念そうにオリヴィエが言う。
「そうですね」とリュミエールが頷く。
すみませんねぇ…とでもいうように、ルヴァが苦笑する。

「ま、それでこそルヴァだけどな」

ゼフェルがぼそりと言った。



改めてお茶と茶菓子が供せられ、のんびりとしたいつものお茶会になっていた。

「しかし、どうしてルヴァはそんなに頭がいいんだ…」

突然オスカーが言い出して、皆同意するようにルヴァを見る。ルヴァが困ったような笑いを浮かべて「そんなことないですよぉ」と言った。

「ま、そりゃルヴァ自身が勉強家で読書好きでってことなんでしょうけど、血筋でもあるんじゃないの」

オリヴィエが言う。

「学者の家柄なんでしょ」

「え？　えぇ、そうですけど…」

「そうか、俺の家は代々軍人だからな…」

「だから頭も筋肉で出来てるってか」

「何だと！　そういうお前はどうなんだ、ゼフェル」

「俺か。俺ンちはずっとエンジニアだ。だからメカのことに掛けちゃ誰にも、ルヴァにだって負けねぇぜ」

「そのわりにはずっとルヴァに負けっぱなしじゃないか」

「なんだと」

口論になりそうな２人を、周りが引き離す。

「まったく、もうアンタたちは…。みっともない争いはやめてよね」

呆れたように２人を眺めたオリヴィエは、「そういえば…」とルヴァの方に向き直った。

「ルヴァ、前に話してくれたよねぇ。なんとかいういとこの話」

「アーマドのことですか」

「そうそう。そのアーマドってのもルヴァと同じような感じだったんでしょ」

「えぇ、まぁ…そうですね」

「ルヴァの家系って、みんな調べたり考えたりするのが好きなんじゃない」

「確かにそういう人は多いですけれど、そうでない人もいましたよ。剣を取って戦う道に進んだ人もいましたし…」

「へぇ〜」

「ルヴァ様、そのアーマドっていう人のお話、何か聞かせてくださいませんか」

「おい、マルセル、バカなこと言うんじゃねー！」

「なんで？」

「どーせ、ややこしい問題出されるのがオチに決まってるじゃねーか」

さもイヤそうに言うゼフェルの態度に、皆面白そうに笑った。

「そうですねぇ、じゃあ何かお話しましょうか…」

ルヴァが楽しそうに笑いながら話し始める。


「アーマドというのは、以前にもお話しましたが、私の父方のいとこで、陽気で頭のいい青年でした。
あれは、私がいくつのときでしたかねぇ…
彼が、しばらく大きな町にある宝石商のところで働いていたことがあったんです。
顔を合わせる度に、いろいろ面白い話を聞かせてくれましたが、その中にこんなお話がありましたよ。

あるとき、彼が店番をしていると、１人の客が６本の鎖を持ってやってきたのだそうです。
鎖はそれぞれ５つの輪で出来ていました。
それをつないで、１つの大きな輪にしたいのだが、費用はどのくらい掛かるのか、と客は言いました。
１つの輪を開いてまた閉じるのに銀貨１枚、というのがその店の料金でした。
アーマドが見積もりを告げると、客は喜んで鎖を預けて帰っていった、ということなんですが…」

ルヴァは言葉を切って、周囲を見回した。

「さて、その費用はいくら掛かったのか、わかりますか」

ゼフェルが「ほらみろ」と小さくマルセルを小突く。マルセルは「あははは…」と声を立てずに笑った。

「なぁゼフェル、どういうことなんだ、鎖をつなぐって」

「なんだ、わかんねぇのかよ。たとえば、こう…２本の鎖があるとするだろ。これをつないで１つの輪にするには…こうやって２箇所つなげばいいわけだ。３本の鎖なら…こう…３箇所だな」

丁寧にランディに説明するゼフェルを、ルヴァを始めとする大人たちは微笑ましく見守っていた。
その視線に気付いたゼフェルはカッと赤面し、照れ隠しのように叫んだ。

「ルヴァ！　他にもいろいろ話があるんだろ！　とっとと別の話をしろよ！」

「あぁ、はいはい。じゃあ、別のお話をしましょうねぇ…」

ルヴァがにこやかに応じるのが、また癪に障ったのか、ゼフェルは「ふん！」とそっぽを向いた。
それでも、ルヴァの話を聞こうと意識はこちらに集中しているのがわかって、大人たちはまたそっと微笑んだ。

「アーマドがしてくれた話には、こんなものもありました。

ある時、宝石を売りに来た男があったのだそうです。
その男はエメラルドとサファイヤを全部で５９個持ってきたのですが、エメラルドは４個ずつ袋に入っていて、サファイヤは９個ずつ袋に入っていました。
それだけ言って、アーマドは私にそれぞれ何個あったかわかるかと聞いてきました…」

「それだけで？　それだけでわかるのか？」

「えぇ、わかるんですよ、オスカー。では、皆さんで考えてみますか」

「やっぱりそうきたね。いいよ、考えてみる。今回は簡単そうじゃない」

オリヴィエが自信ありげに応じる。

「えぇ、簡単なんですよ」とルヴァが楽しそうに微笑んだ。

問：ルヴァの話した２つの問題に答えてください。
　１）６本の鎖を１つの輪につなぐにはいくら掛かったでしょう。
　２）エメラルドとサファイヤはそれぞれ何個あったのでしょう。

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