週末の夜ともなると、守護聖たちもただ人と同様、のんびりとくつろいだ気分になる。今夜、ルヴァの屋敷では、大人たちが顔を合わせて、酒を酌み交わし談論風発といった感じになっていた。ひとしきり賑やかに話が弾んで、ちょっと小休止になる。「それにしても、ジュリアスとクラヴィスがこうしてきてくださるのは、なんだか久し振りですねぇ」新しいボトルを開けながらルヴァが言う。「そうだったか？」怪訝そうにジュリアスが聞き返した。すでにほんのりと頬が赤い。「そうそう。あんたたちったら、昼間のお茶会くらいしか来ないし、それだって長居しないでさっさと帰っちゃうことが多いからね～」年長者をものともせず、オリヴィエが言う。「まぁ、それくらいがよいのではないか」眠っているかと思われたクラヴィスが突然発言したので、思わず全員の視線が集中する。クラヴィスは笑いを含んで続けた。「我々…特にこれがいると」ジュリアスに視線を投げてフッと笑う。「緊張してくつろげぬヤツがいるからな」「はい？」指差されたオスカーが周りを見回してから「俺ですか？」と自分を指す。「俺はそんなことないですよ。ジュリアス様とご一緒できるのは光栄です」生真面目な口振りに、一同は、なるほどね…と頷き合う。「なんだよ、何笑ってるんだ」「まぁまぁ、気にしないで飲みなよ、ほら…」「あ、あぁ、すまんな」オリヴィエの注ぐ酒を受けながら、オスカーは小さくため息をついた。もう１人の当事者ジュリアスは、どうしたのだ、と、もの問いたげな眼差しでクラヴィスを見詰め、なんでもないから安心しろとでもいうように頭をポンポンとなでられて、「よさぬか」と払いのけながら、まんざらでもない顔をしていた。「でも、お子様連中がいないのは気が楽だね。そうじゃない？」突然オリヴィエに話を振られて、おとなしくグラスを傾けていたリュミエールは、「え、えぇ、そうですね」と少し驚きながら微笑んだ。「ほら、オスカーもっと飲みな」オリヴィエに勧められるままに、オスカーはグラスを重ねる。「オスカー、そんなに飲んで大丈夫ですか」心配そうにリュミエールが尋ねる。「あぁ？　もちろん大丈夫だ。このくらいどうってことないぜ」「ほぅ…。いつもながらそなたは酒に強いな」感心したように言うジュリアスはすでにかなり酔っていて、クラヴィスにソフトドリンクに変えさせられている。「ダメだよぉジュリアス、騙されちゃ。オスカーはもう正気じゃないくらい酔ってンだから」「何を言うんだ、オリヴィエ。ジュリアス様、俺は酔ってなんかいません。シラフです」「ジュリアスの前だからって無理しなさんなって。じゃあオスカー、これ答えてみる？」「おう、何でも言ってみろ」オリヴィエの挑発にまんまと乗ってしまうのが、すでに酔っている証拠ではないのか、と周りはオスカーを見詰める。オリヴィエはニッと笑ってゆっくりと話し出した。「あるところに、隣り合った国…Ａ国とＢ国としようか…があったんだけどね、Ａ国は「自分の領土内で死んだ人は全てＡ国に埋葬する」という慣習があり、Ｂ国は「Ｂ国の国籍を持った人が死んだ場合は、どこで死んだとしてもＢ国に埋葬する」という慣習があったんだよ。わかる？」「…あぁ。それで？」「さて、Ｂ国の国籍を持つ人たちの乗った飛行機がＡ国内に墜落したとしたら、生存者はどちらの国に埋葬されると思う？」「Ａ国内ならＡ国に埋葬されるんだろ？」「だけどＢ国民なんだよ」「うーん…」真剣に考え込むオスカーを見て、ジュリアスはため息をついた。「オスカー、そなた、やはり酔っておるぞ」「違うな、ジュリアス。酔っていなくても、オスカーはいつもこうだろう」クラヴィスの言葉に笑いが起こる。「オスカー、冷たい水ですけど、飲みますか」ルヴァがそっとグラスを出す。「あ～オスカーからかってると飽きないね～」オリヴィエが面白そうに笑う。なぜ笑われているのかわからないオスカーは、狐につままれたようにポカンとしていて、更なる笑いを買う。「じゃあ、私からも何か問題を出してみましょうか」ほろ酔い機嫌のルヴァが言い出した。「おや、ついに出たね。いいよ。どんなの？」「あるところに広い耕作地がありましてね、そこを耕して種を蒔くために２人の男を雇ったのです」ルヴァは手の中のグラスを弄びながら話し始めた。５人は真剣な顔で聞いている。「２人は半分ずつを担当して、耕作地の東と西から同時に耕し始めました。東から始めた男は、西から始めた男の倍の速さで耕していきました。反対に、種を蒔く作業は西側の男の方が４倍の速さでこなすことが出来ました。ただし、体力的には種を蒔く作業に比べて耕すのは３倍の労力を使うんです。全ての作業が終わった後で、雇い主は２人にまとめて２０枚の銀貨を支払いました。そこで、２人はそれぞれの働いた量に応じて分配しようとしたのですが… さあ、どう分けるのが公平でしょうか、というのが問題です」言い終わったルヴァは、にっこり笑って一同を見渡した。聞いた途端に「あぁ」と微笑む者、ちょっと待て、と計算を始める者、どこから考えればいいんだと頭を抱える者、反応は様々だった。　　（ま、皆さん酔ってますからね…）ルヴァは満足そうにグラスを空けた。
	問：２人は２０枚の銀貨をどう分けるのが公平でしょうか。　　理由も説明してください。

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