Q2

「リュミエール、もう一杯お代わりはいかがですか」

「ありがとうございます、ルヴァ様。もう充分いただきました」

「あ、私、もう１杯もらおっかな」

いつもながらの３人でお茶を飲む。
のんびりとした日の曜日。まだ太陽はそれほど高くない。

「そういえば、オスカーの視察もずいぶん長くなるよね」

「そうですねぇ。でもそろそろ帰ってくるのではありませんか」

リュミエールが訊ねるようにルヴァを見ると、ルヴァは「えぇ」と頷いた。

「えぇ、そうですね。今日辺り帰ってくると思いますよ」

「そっか」

オリヴィエは安心したように息を吐いて、微笑んで椅子の背にもたれ掛かる。

「やっぱり１人でもいないと寂しいもんね」

ルヴァもリュミエールも「そうですね」と微笑む。

「あ、ねぇねぇ、ルヴァ…」

ふと何かを思いついたようにオリヴィエが言って、お茶会の席はひとしきり賑わった。




「よぉ、相変わらず集まってるな」

庭先から声がした。

「オスカー。視察からお帰りでしたか」

「あぁ、とりあえず帰還の報告だけしてきた」

「長い間お疲れ様でした」

「帰り道を忘れたんじゃないかと思ってたよ」

歓迎の言葉に微笑みで応え、ルヴァに招かれるまま、テラスを横切って室内に入り、オリヴィエの隣にどかっと座り込む。

「少しやつれたね。男前が上がったじゃない」

オリヴィエのからかいを、オスカーは「フン」と鼻先で笑ってやり過ごした。

「あ〜ホントに疲れたぜ。早く聖地に戻って旨い酒が飲みたかったな」

「だったらこんなところに来ないで自分とこ戻って飲んでたら」

「つれないことを言うなよ。その飲みたい気持ちを抑えて、お前たちのたわいもない会話を聞きに来たんだぜ」

オスカーの言葉に、３人はさっき自分たちが感じていた寂しさと同じものを感じ取った。
宇宙に９人しかいない、自分と同じ存在…

リュミエールがお茶とケーキを勧める。
オスカーは一息で飲み干して、ゆったりとくつろいだ表情になる。
リュミエールは微笑んでお代わりを注いだ。

「で、視察はどうだったのよ？　何か面白いことはあった？」

「ん？　別に何もないな。調査と確認の連続だった。ただそれだけだ。こっちはどうだった」

「そうですねぇ。聖地はずっと平和でしたよ」

「いかにもルヴァらしい答えだな。聖地に戻ってきたって気がするぜ」

オスカーが楽しそうに笑う。

「オスカー、アンタもうちょっと早く帰って来られたらよかったのに」

「何で？　何かあったのか」

「うん。昨日ね…」

オリヴィエが楽しそうに話し始める。


「…この３人とガキども３人だって？。そんな大勢で聖地を抜け出したのか！？」

「そう。ここでお茶会してたら、ルヴァが突然「マス釣りに行きたい」って言い出してね。すぐ行って帰ってきたらお昼前に帰って来られるし、行っちゃおうかってことになったんだよ」

「無茶なヤツらだなぁ。オリヴィエはともかく、リュミエールも止めなかったのか」

「しょっちゅう抜け出して遊びに行ってるヤツに言われたくないね。何も問題にならなかったからいいじゃない。それよりさ、すっごく面白かったよ」

「ふーん」

「まぁ聞きなよ。行った先は大きな川でね、どうせなら競争しようかって釣り場は５箇所に分かれたんだ」

「５箇所？　６人で行ったんだろ。誰か組になったのか」

「マルセルとランディだよ。年齢に寄るハンデってことでね。リュミちゃんもルヴァと一緒に釣りたかったらしいけど」

「オリヴィエ！　わたくしはそんな…」

「冗談だよ。怒らない、怒らない。ところでオスカー、今からいくつかのデータを言うから、誰がどこで何を釣ったか当ててみない？」

「なんだよ、またパズルかよ。俺は疲れてるんだぜ」

「いーじゃない。ルヴァんところに来た〜って実感がするでしょ。いい、行くよ。

　　５箇所の釣り場はちょうど１００ｍずつ離れていました。

後はルヴァお願い」

「え、私ですか。はい、わかりました。えーと…

１．マルセルとランディの場所より１００ｍ上流でカットスロート・トラウトが釣れ、さらにその１００ｍ上流にオリヴィエがいました。

２．一番下流にいたのはゼフェルではありません。

３．私(ルヴァ)より１００ｍ上流でカワマスが釣れ、さらにその１００ｍ上流にリュミエールがいました。

４．ニジマスはブラウン・トラウトより上流で釣れました。

５．スペクル・トラウトを釣ったのはゼフェルではありません。

６・リュミエールが釣ったのは、ブラウン・トラウトでも、カットスロート・トラウトでもありません。

以上です。おわかりになりますか？」

「ちょっと待て。誰がどうしたって？」

ルヴァはもう１度繰り返す。急いでメモを取ったオスカーは真剣に考え始めた。


「６人揃って真昼間に聖地を抜け出すなんてこと、するわけないじゃないねぇ」

「すっかり信じきってますけど、よろしいのでしょうか」

「まぁ、いいんじゃないですか。答えが出たらウソだって教えてあげましょう」

「言わなくってもいーんじゃない、だまされたままの方が夢が持てるし」

「そうはいきませんよ…」

３人がひそひそと話し合っているのにも気が付かず、オスカーはまだ考え続けていた。

問：誰がどこで何を釣ったのかをまとめてください。



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