Ｑ１

年少守護聖たちが執務をさぼって遊びに行ってしまうことは、それほど珍しいことではない。
ジュリアスもある程度は見て見ない振りをしているところがある。
だが、遊びに行った先が聖地の外で、しかもそこで地元の少年と乱闘騒ぎになった、などとなれば見過ごすわけにはいかない。


「そなたたち、当分の間謹慎を言い渡す」

神妙に、あるいはふてぶてしく、並んで立っている３人に向かって、ジュリアスは重々しい声で言った。

「謹慎…って、ずっと館にいろってことか？」

だったら仕事しないですんで儲け者じゃん、という感じをありありとさせて、ゼフェルが訊ねる。

「もちろん、通常の執務は休まずやってもらう」

「え？」

訝しげな３対の目がジュリアスを見詰めた。

「聖殿への送り迎えには警備兵を派遣する。それ以外は、日の曜日であっても館より外へ出ることは許さぬ」

「げっ！」という声は誰のものだったか。
ジュリアスの怒りが真剣なのを見てとって、少年たちは黙って処分を受け入れる。

「あの〜ジュリアス様…当分の間ってどのくらいなんですか…」

恐る恐るマルセルが尋ねると、ジュリアスはおもむろに付け加えた。

「うむ、言い忘れていたが、毎日帰りに地の館に寄ってルヴァの講義を１時間受けるように。土の曜日にテストをして、その結果で謹慎を解除する」




というわけで、３人は地の館で夕食を食べていた。

「出歩けねぇのはつまんねーけど、ルヴァんとこに寄れってことなら、楽なもんだよな」

「あの〜、ゼフェル…。一応これもあなた方の罰則の内なんですからね。食事が済んだら講義を始めますよ」

「ホントにやるんかよ。なぁ、やめよーぜ。ジュリアスにはちゃんとやったって言ってくれりゃいーんだからさ」

「そうはいきませんよ」

ルヴァはため息混じりに言った。

「そうだな。俺たちがケンカなんかしちゃったからいけないんだもんな。早く許してもらえるように頑張ろう」

「うん、そうだね」

「マルセル、巻き込んじまってごめんな」

「いいよ、ランディ。一緒に頑張ろうね」

「おーお、青春だなー」

「ゼフェル。そもそもはあなたが首謀者なんでしょう」

「首謀者ってなんだよ…わぁったよ。マジメにやるよ。ほれ、とっとと始めよーぜ」

「あ、待ってください。お茶を飲んでから、ね」






「ルヴァ、今、良いか」

「あぁ、ジュリアス。えぇ、構いませんよ、どうぞ」

「あの者たちはどうだ。真面目にやっているか」

「えぇ。いい機会だから宇宙生成論の上級レベルを学ばせようとしたんですが、３人ともよく頑張ってますよ」

「そうか。うまく学んでくれるなら怪我の功名というものだな」

「えぇ、そうですね」

「それで、明日のテストは用意出来ているか」

「えぇ」

「良い結果を出して欲しいような、不合格で、もう少し学び続けて欲しいような、妙な気持ちだ」

「私もですよ」

２人は顔を見合わせて笑いあった。






「ルヴァ、失礼する」

「あぁ、ジュリアス。いらっしゃい。こちらへどうぞ」

「テストの結果はどうであった」

「えぇ…これが３人の答案なんですけどね…」

ルヴァは３枚の答案用紙を並べる。

「今回は、Ｙｅｓ、Ｎｏで答える問題を４問出したんですけど…」

並べられた答案用紙の内容はこんなふうだった。
第１問 第２問 第３問 第４問
ゼフェル Ｙｅｓ Ｙｅｓ Ｎｏ Ｎｏ
ランディ Ｎｏ Ｙｅｓ Ｙｅｓ Ｎｏ
マルセル Ｙｅｓ Ｎｏ Ｙｅｓ Ｙｅｓ


「１問１点で４点満点。合格点は３点です」

「答えがバラバラだな。正解はなんだ」

「えぇ…」

ルヴァが答えようとしたとき、ノックの音がして、オスカーが入ってきた。

「ルヴァ、いるか…あ…失礼しました、ジュリアス様」

「いや。それよりどうかしたのか」

「あぁ、いいえ…そこでチビ共に会ったので、テストの結果はどうだったかと聞いたんですが…」

「ほう。ルヴァ、彼らは自分の得点を知っているのか」

「えぇ。目の前で採点をしましたからね」

「で、あいつらはこんなふうに言ったんですよ。

　　　Zephel 「４問目の正解は Ｎｏ だったぜ」
　　　Randy　「ゼフェルは１点でした」
　　　Marcel 「ランディは１点でしたよ」

ルヴァ、これはどういうことなんだ」

「おや、最低点の人だけはウソをついていますね」

ルヴァは面白そうに微笑んだ。

「だから、どういう結果だったかって…」

問い掛けるオスカーをさえぎってジュリアスが尋ねる。

「同点の者はいたのか」

「いいえ、３人とも違う得点でしたよ」

「うむ」とジュリアスは笑みを漏らした。

「そういうことだ。オスカー、このテストの正解が何で、３人の得点はどうだったのか、そなた自分で考えてみよ」

「は、はいっ…」

３枚の答案を前に、オスカーは真剣に考え始めた。

「ところでジュリアス、謹慎解除の条件は、３人全員が合格点に達すること、でいいんですね」

「あぁ、そうだ。ルヴァには苦労を掛けるがよろしく頼む」

「えぇ…」

ルヴァは苦笑を浮かべて応えた。

問：このテストの正解は何だったでしょう。
正解と３人の得点を答えてください。
どう解いたかも記してくださいね。


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