Ｑ２

水の守護聖の誕生日を祝うパーティーは、それほど羽目を外すこともなく、穏やかな温もりに満ちていた。
同僚の守護聖たちの善意に包まれて、リュミエールは終始にこやかに微笑んでいた。
会が終了し、皆の祝いの言葉を受けながら、リュミエールは退場する。

水の館に戻り、しばらくすると執事が地の守護聖の来訪を告げた。


リュミエールの私室で、ゆったりとくつろいで、いつものお茶ではなく、今夜は少しアルコールなど口にする。

「落ち着いた、いいパーティーでしたね」

「えぇ。楽しく過ごすことが出来て嬉しかったです」

「いつもなら酔っ払って騒ぐような人も、今夜は神妙にしていましたからねぇ…」

ルヴァは思い出したように笑った。

「あなたに不快な思いをさせないように、充分楽しんでもらえるように、と誰もが考えたんでしょうね。
あなたのお誕生日を精一杯祝いたい、と、みんなが望んだんです。あなたの、人徳というものなんでしょうね…」

「ルヴァ様…」

リュミエールが、恥じらうように頬を染める。


「…ルヴァ様」

「はい」

「あの、先程はプレゼントをありがとうございました」

「あぁ…いえ、あれは…」

ルヴァが微かに微笑む。

「あれは、パーティーの席では皆さんからのプレゼント贈呈があるだろうと思って、それに合わせて一般的なプレゼントにしたんですが…」

リュミエールを見詰めて、フッと面白そうな笑いを浮かべる。

「実はね、もう一つあるんです」

「え？」

「誰にも知られずに、差し上げたいな、なんて思いましてね」

「ルヴァ様」

リュミエールが嬉しそうに微笑む。

「お心遣いありがとうございます」

「たいしたものではありませんけれどね」

ルヴァは小さな箱を３つ、テーブルの上に並べた。赤と青と緑と、綺麗な光沢のある紙でラッピングしてある。

「３つもですか？

「いいえ、１つだけです」

「あの…」

「うまく当てることが出来たら、差し上げます」

「ルヴァ様…」

リュミエールは楽しそうに笑っている恋人の顔を、笑いをこらえて睨む。

「あなたという方は…」

「だって、ただ渡すよりこの方が楽しいと思って…ダメですか」

「わかりました。受けてたちましょう」

曇りかけていたルヴァの顔に笑みが広がる。

「では、問題を聞かせてくださいますか」

「えぇ。よく聞いてくださいね。

この３つの箱のうち、１つにあなたへのプレゼントが入っていて、残りの２つは空っぽです。
どの箱に入っているかについて、あなたは「はい」か「いいえ」で答えられる質問をいくつでも出来ます。
それに対して、私は、すべてに正直に答えるか、常にウソをつくか、どちらかで答えます。

さて、あなたは『赤い箱にプレゼントが入っているのか』と訊ね、私は「はい」か「いいえ」で答えました。
あなたは続いて『緑の箱にプレゼントが入っているのか』と訊ね、私は再び「はい」か「いいえ」で答えました。
するとあなたは『あぁ、わかりました』といって、正しい箱を選んだのです。

さぁ、プレゼントの入っているのはどの箱で、あなたはどう考えたのでしょうか」

リュミエールは一瞬とまどった。

「わたくしが実際に質問して当てるのではないのですね」

「えぇ」

「ルヴァ様がどう答えたのかはわからないのですね」

「えぇ」

リュミエールはしばらく考えた。

「ルヴァ様、もし正解を出したら、このプレゼントにオマケを付けてくださいませんか」

「え、何をです？」

リュミエールはにっこりと微笑むとルヴァの傍へ行き、その耳にそっとささやく。
ルヴァの頬がカァッと赤く染まった…

問：プレゼントの入っているのはどの箱で、どう考えればいいのかを答えてください。

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