さて第１問です

Ｑ１

「いい天気だよね～」

空を仰いで大きく深呼吸したオリヴィエが、楽しそうに言った。
ルヴァとリュミエールが、「えぇ、そうですね」と応じる。
地の館のテラスで、相も変わらずのんびりとお茶に興じる３人であった。

「ここしばらく、厄介な事件は起こってないし、宇宙は平和そのものだし…。ま、たまにはこんな、のんびりするのもいいよね」

いつだって、自分の好きなように生きているようなオリヴィエがもっともらしく言うので、ルヴァとリュミエールはおかしくてたまらない。笑い出しそうになるのを抑えて、お茶を飲んでいる。

「ま～た集まって茶ァ飲んでやがんな」

乱暴な声がして、ゼフェルが姿を現す。

「ゼフェル、そんな言い方しちゃダメだよ」

後を追い掛けて走ってきたマルセルが、まだ息を切らせながら、それでも厳しい声でゼフェルを嗜める。

「マルセル、いいんですよ」

ルヴァの声に、マルセルがハッとこちらを見る。

「あ、すみません、ルヴァ様。あの…こんにちは」

すまなさそうに挨拶をするマルセルに、大人たちは笑顔で挨拶を返す。

「おや、今日は２人なの？　ランディはどーしたのさ」

「あぁ、ランディなら今日は崖登りに行っちまったぜ」

ゼフェルはマルセルの方を向いて「なぁ」と頷きあった。

「そうでしたか。いいお天気ですからね、ロッククライミングも楽しいでしょうねぇ」

ルヴァが微笑みながら席を勧める。

しばらくはお茶を飲みながら、あれこれと話が弾む。

「ところでよ…」

話の切れ目で、ゼフェルが手にした包みからごそごそと何かを取り出した。
「おや…」と大人たちが注目する。
いっとき流行ったボードゲームのセットだった。

「へぇ～懐かしいね。どーしたの、これ」

「さっき、探し物してたら出てきたんだ。で、久し振りにやってみたんだけどよ…」

マルセルの方を見てニヤリと笑う。マルセルがちょっと口をとがらせた。

「僕じゃ相手にならなくてごめんね」

すねたような物言いに、２人の間に何が起こったのか察せられて、大人たちは微笑ましそうに微笑む。

「ランディの野郎がいればマルセルといい勝負になったと思うんだけどよ。んで、ここに来てみたってわけだ」

「あぁ、残念だったねぇ。こっちも今日はオスカーがいなくって」

オリヴィエが面白そうに笑う。

「まったく、オスカーもランディも、武人のくせにどうしてゲームだと先が読めないんだろねぇ」

「そりゃバカだからだろーよ」

オリヴィエとゼフェルが顔を見合わせて笑う。周りの者は苦笑を浮かべていた。

「誰がバカだって？」

「あぁ、オスカー、いらっしゃい」

「こちらへどうぞ。お茶を淹れて差し上げましょう」

笑いを抑えて、ルヴァとリュミエールがオスカーを迎える。

「あぁ、すまないな。で、何の話をしていたんだ？」

「これだよ。オスカー、勝負しねーか」

「ほう、懐かしいな。よし、相手してやろう」

オスカーはゼフェルと向かい合った。

黒と白を張り合わせた石と呼ばれる円盤状の駒をざっと二つに分ける。ボードの中央に白黒交互に４つの石を置いて、ゲームは始まった。
相手の石を挟むと挟まれた石はひっくり返ってこちらの色になる。単純なゲームだった。
一つ置く度に盤上は忙しく白と黒が入れ替わる。しばらく均衡を保っていたかと思うと、終盤ゼフェルが置いた石で一気に石が動き、気が付けば盤上はほぼ１色で埋め尽くされていた。

「へへん。俺の勝ちだな」

「あれ、おかしいな…。こんなはずはないのに」

「オスカー様、今度は僕とお願いします」

「あ、あぁ、いいぜ、マルセル」

オスカーとマルセルが、いい勝負で何戦か繰り返すのを、周りは微笑ましく見守っていた。

「やっぱりこの辺だな、釣り合うのは」

面白そうにゼフェルが笑う。

「お２人とも、そのくらいにして、お茶になさいませんか」

何回目かの勝敗が決まったところで、リュミエールが声を掛ける。

「あぁ、そうだな。休憩しようぜ」

「そうですね」

「単純だけど面白いゲームだよね」

オリヴィエが石を弄びながら言った。

「同じ白と黒でも、…なんてったっけ、この間ルヴァが見せてくれたの…囲碁だっけか、あれとはずいぶん感じが違うし…」

「このひっくり返って色が変わるのが面白いよな」

オスカーが同じように石をいじりながら言った。

「じゃあ、気分転換に、この石で問題を出してみましょうか…」

にっこりと笑ってルヴァが言った。

「来たわね。いいよ、どんな問題？」

「えぇ、ここに何枚かの石があるとしましてね、これからいうヒントで白石が何枚で黒石が何枚あるかを当ててください」

「全部で何枚かはわからないんだな」

「えぇ、それは内緒です」

ルヴァは微笑んで、周りを見回した。

「いいですか、ヒントはこうです。

　白の石を１つひっくり返したら、白と黒の数は等しくなりました。
　石を元に戻して、今度は黒の石を１つひっくり返したら、白は黒の２倍の数になりました。

さて、最初の状態は、白が何枚で黒が何枚だったでしょう」

言い終わって、ルヴァはゆったりとお茶を飲む。
リュミエールが「あぁ」と微笑んで、ルヴァにそっと耳打ちする。
「えぇそうですね」とルヴァは嬉しそうに答える。
他のメンバーはまだ宙を見詰めたり、メモ帳を取り出して書き付けたりしながら考えていた。

問：この石は白と黒が張り合わせてあります。白の裏が黒、黒の裏が白です。さて、最初の状態は、白が何枚で黒が何枚だったでしょう。

おわかりになりましたら、２問目へどうぞ…　⇒　