第１問です

【№１５０】

Q1

土の曜日の昼下がり、オスカーは足早に地の館を訪れた。
通されたサロンでは、いつものようにオリヴィエとリュミエールが訪れていて、お茶を飲んでいた。

「よお、邪魔するぜ」

「ああ、オスカー、いらっしゃい」

ルヴァは笑顔でオスカーを迎える。
オリヴィエとリュミエールも笑顔でオスカーと挨拶を交わした。

「オスカー、視察はいかがでしたか」

ソファに腰をおろしたオスカーに、リュミエールがそっと尋ねる。

「ん？　別に何も問題はなかった。サクリアのバランスは簡単に調整できたしな」

「そうですか。お疲れ様でしたね」

「そっか。あんた朝から出掛けてたんだっけ」

オリヴィエがオスカーを見詰める。

「ああ。研究院からの急な要請でな」

「土の曜日だってのにご苦労様」

「まったくだ。よくこき使ってくれるぜ」

「守護聖といえば、女王陛下を支える存在として崇め奉られる存在なんだけどねえ」

「研究院のやつらは、生きたサクリア調整機ぐらいにしか思ってないぜ」

「それはあるね」

オスカーとオリヴィエは顔を見合わせて笑い合った。
リュミエールは小さく肩をすくめると苦笑を浮かべる。

「そんなふうに言ってはいけませんよ」

ルヴァが軽くたしなめる。

「あの人たちは、今必要なものしか見えていないだけなんです」

「ルヴァ、それ全然フォローになってないって」

オリヴィエが声をあげて笑う。
みんな、楽しそうに笑った。

新しいお茶を淹れて、のんびりと世間話をするうちにも、オスカーはなんとなく落ち着かない様子だった。
オリヴィエが目敏く見つけてフフンと笑う。

「ねえ、オスカー。早く用事を片付けたら？」

「え、何のことだ？」

「フフ～ン、隠さなくたっていいよぉ。視察から帰ってきたあんたが急いでルヴァのところへ来るっていったら、用事は決まってるもんね～」

「な、何言ってるんだよ…」

「オスカー、今更体裁を繕うことはありませんよ」

リュミエールがクスクス笑う。

オスカーが見回すと、オリヴィエもリュミエールも、ルヴァまでも笑っていた。

「ちぇっ」

オスカーは拗ねたように頬を膨らませる。

「で、オスカー、どうすればいいんです？」

ルヴァがおっとりと尋ねる。

「え？」

「視察の報告書ですよ」

「あ、ああ…」

「代筆するか、添削するかってことだよね～」

オリヴィエが楽しそうに横から口をだす。
オスカーはジロリとオリヴィエを見てから、ルヴァに視線を移す。
ルヴァと視線を合わせて、しばらく言い渋っていた後、ボソッとつぶやいた。

「ざっとはまとめるから…文章にしてほしい…」

「わかりました。資料も一緒に見せてくださいね」

ルヴァが微笑んでうなずく。

「ああ、…頼む」

神妙なオスカーの様子を見て、オリヴィエとリュミエールはクスクスと笑った。

「ところでさ、オスカーの頼みには条件を付けないの？」

オリヴィエが笑いを含んだ声で、ルヴァに尋ねた。

「何のことです？」

「だって、ゼフェルたちにはよく問題だしてるじゃない。うまく解けたら宿題は免除しましょうとか」

「ああ、そういうことですか」

「おい、オリヴィエっ、俺をガキどもと一緒にするなよっ」

オスカーが焦った声を出す。

「そうですね。ルヴァ様の手を煩わせるのなら、そのくらいの苦労はするべきでしょうね」

「リュミエール、お前まで何言うんだよ」

「それもそうですねえ。では何か問題をお出ししましょうか」

「ルヴァっ！」

オスカーの声は悲鳴に近い。

「大丈夫ですよ、オスカー。問題ができなくても見捨てたりしませんから」

ルヴァはフフッと笑った。

「わかった。とにかく考えてみる…」

覚悟を決めて、オスカーがうなずく。
オリヴィエとリュミエールは目を見交わして微笑んだ。

「じゃあ、言いますよ。ああ、リュミエール、オリヴィエ、あなたたちも考えてくださいね」

ルヴァは、ゆったりとソファにもたれて話し出した。

「以前、いとこのアーマドのことを何度かお話ししましたでしょう。私が小さいころ、久し振りにやってきた彼がこんなことを言ったんですよ。

『ルヴァ、お前、マリア叔母さんとこのハサンとイブンの双子を知ってるだろ』

もちろん私は知っていますから『はい』と答えました。そうしたら、アーマドはこんな話をしてくれました。

あの双子は滅茶苦茶だぞ。きのう、俺はマリア叔母さんのところに行ったんだが、
話の途中で叔母さんが『今日は何曜日だったかしら』と言ったらハサンは『月曜日だよ』と言い、イブンは『木曜日だよ』と言ったんだ。
そこで俺が『おいおい、じゃあ、きのうは何曜日だったんだ』と言うと、ハサンは『金曜日』と言い、イブンは『火曜日』と言った。
「じゃあ、明日は』と言ったらハサンは『水曜日だよ』と言い、イブンは『日曜日だってば』と言った。
ひどいだろ。２人とも、正しいのは１つだけで２つは間違いなんだぜ。

そう言ってアーマドが笑うので私も大笑いしました。
本当に、この双子はいとこたちの中でも変わり者で有名だったのです」

オスカーは、何なんだそれはとでもいうように、キョトンとした顔で聞いていた。
ルヴァはクスッと笑う。

「さて、オスカー」

「あ、ああ…」

「アーマドがこの話をしてくれたのが何曜日だったか、わかりますか」

「ああ、ちょっと待ってくれ…」

オスカーは一生懸命考え始める。
オリヴィエとリュミエールは面白そうにその様子を見守っていた。

　　問：アーマドがこの話をしてくれたのは何曜日だったでしょうか。

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