【№１４０】


Q2



「あ～そういうことかぁ～」

オリヴィエが残念そうな声をあげてソファに倒れこむ。

「残念でした。これで鉱物標本は無事、ということですね」

「う～ん、とりあえず今回はね」

「え…」

ルヴァは、今聞いた言葉の意味を確認するのが怖いというようにオリヴィエを見た。
オリヴィエは不敵な笑いを浮かべて言った。

「そのうちまた挑戦するよ。見事勝利するか、ルヴァがあきらめて無条件でくれるまで、挑戦するからね」

「オリヴィエ、それは…」

「私はあきらめないからね」

「やめてくださいよぉ～」

「それがイヤなら、今すぐさっさとちょうだい」

「オリヴィエ…」

ルヴァが苦笑しながらため息をつく。
そのままルヴァが首を縦に振るか、とオリヴィエが期待に満ちた眼差しで見詰めていると、その眼差しに気が付いたルヴァは「いいえ」と首を横に振った。

「いいえ、それはダメです。わかりました。あなたの挑戦を受け続けましょう」

「え～」

オリヴィエは、がっかりしてもう１度ソファに倒れこんだ。
リュミエールがクスッと笑う。

「さっぱりとあきらめてしまった方がいいのではありませんか、オリヴィエ」

「う～ん…」

悔しそうにオリヴィエが唸る。



「どうかしたのか、やけに静かじゃないか」

やってきたオスカーが、不思議そうに３人を見回した。
ルヴァとリュミエールは顔を見合わせてフフッと微笑み合う。

「ん？」

「いえ、何でもありませんよ、オスカー。どうぞ掛けてください」

笑顔で言って、ルヴァはお茶を淹れ始めた。
ソファに掛けたオスカーが探るような視線をオリヴィエに向ける。
オリヴィエは無言で肩をすくめた。



「なあ、この間面白いことがあったぜ」

お茶を飲み干したオスカーがおもむろに言い出した。
３人は「え？」とオスカーを見る。

「この間、視察に行った先の研究院で４人のレディと話す機会があったんだが、４人は最近順番に聖地の研究院にやってきたんだそうだ」

「あぁ、研究院の研修ですね」

ルヴァがうんうんとうなずく。

「そうらしいな。で、聖地にやってきても、研究院の中にいるだけで特に出歩いたりはしなかったというんだが、３番目にやってきたレディは、たまたまその時に研究院を訪れた地の守護聖の姿を遠くから見掛けて、身体が打ち震えるくらい幸せな気分になったんだとさ」

「わ、私ですか…？」

「ああ。隅に置けないな、ルヴァ」

「そんなこと、ないですよ…」

「俺とは普通に話していたのに、地の守護聖サマの話になったら頬を染めて、つっかえつっかえしゃべってたもんなぁ」

「へぇ～、やるじゃない、ルヴァ」

面白そうに、オリヴィエがルヴァに笑いかける。

「なんでも、小さい頃からあこがれていたんだそうだぜ」

オスカーはニッと笑う。

「可愛いレディだったぜ。ちょっと世間離れした感じはあったけどな」

「オスカー…」

ルヴァはどう返答したものかと動転している。
オリヴィエはますます面白そうに笑ってオスカーに尋ねた。

「ねぇねぇオスカー。もっとその話聞かせてよ。どんなコだったの？」

「ああ…」

オスカーは宙を見詰め、思い出しながら言った。

「４人の名前は、アニー、クレア、ブレンダ、ルイスっていったなあ。
４人はみんな髪の色が違っていて、専門もバラバラだった。
で、

１．『古代生物学』が専門のレディの次に聖地を訪れたのはクレアで、その次がブロンドのレディだったが、このレディはブレンダじゃなかった。

２．ルイスの次に聖地を訪れたのは栗色の髪のレディで、その次が『統計学』が専門のレディだった。

３．『植物学』が専門のレディの次は黒髪のレディだった。

ってことで、ルヴァにあこがれているレディの名前がわかるか？」

「は…？　なんでオスカーが問題出すわけ？　あんた、頭打つかどうかしちゃったんじゃないの？」

「いや…たまにはいいんじゃなヵって思って…。これで解けるのかどうかはわからんが」

「何、それ…」

あきれたような眼差しで、オリヴィエはオスカーを見た。

「データが不足していますよ、オスカー」

苦笑を浮かべてルヴァが言った。

「髪の色は、ブロンドと栗色と黒と、もう１人は何色だったんです？」

「あ、えーと…赤毛、だったな」

「専門分野は、『古代生物学』と『統計学』と『植物学』と、もう１人は？」

「何だったかな…。うん、『比較言語学』だ」

「そうですか」

ルヴァはうなずいてお茶を飲む。
すでに先程の動揺はみられない。
問題を解くことですっかり落ち着きを取り戻したようだった。

「え、どういうこと、ルヴァ。オスカーの言ったのはちゃんと問題になってるってこと？」

「ええ、なってますよ。無駄のないいい問題ですね」

「へ～」

オリヴィエは興味深そうにオスカーを見回してから、リュミエールに「信じられる？」とささやいた。
リュミエールは首を傾げて「さあ…」と僅かに微笑む。

「オスカーも長い間ルヴァ様の問題を解いてきましたから、いつのまにかそうした考え方ができるようになったのかも知れませんね」

「いいや、単なる『偶然』ってヤツじゃない？」

「お前ら、俺をなんだと思ってるんだよ…」

オスカーが拗ねたようにため息をつく。
問：ルヴァにあこがれている女性は誰でしょう。
ついでに聖地を訪れた順に４人の女性の名前、髪の色、専門分野をまとめてください。

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