Ｑ２

「これ、美味しい！」
「あぁ、それはカティス自慢の１本ですよ」
「いいの、そんなの出しちゃって…」
「えぇ、私はお酒はそれほど飲みませんし、お好きな方に飲んでいただけばカティスも嬉しいんじゃないかと…」
「おい、ルヴァ、そんな酒をこいつに飲ませるのはもったいないぞ。こいつは酒の良し悪しなんてわかっちゃいない。ただ酔っ払えればそれでいいんだから」
「オスカー、ずいぶんな言いようじゃない。確かにあんたンとこの酒はかなり私がいただいちゃってるけど、あれは公正な勝負の結果なんだから、私を恨むのはお門違いだよ」
「なんだと！」
「２人とも、こんなところでまで言い争うのは止めてください。ルヴァ様が困ってらっしゃいますよ」
「あ、あぁ…すまん」
「リュミちゃん、ごめん。ルヴァもごめんねぇ」
「いえ、いいんですよ。さ、オスカーも飲んでください」
「ほら、リュミちゃん、もっと飲んで」

中堅と呼ばれる３人は、休みの前日などにはよく集まってゲームに興じたり、飲み明かしたりしている。最近ではその場所が地の館であることが多い。もちろん狙いは地の館のセラーにカティスが残していったコレクションである。

「でも、こうしてここで飲んでるとさ…」
「ん？　何だ、どうしたオリヴィエ」
「またゼフェルが飛び込んでくるんじゃないかって思えて、笑えるんだよね」
「あぁ、あいつは酒の気配を嗅ぎ付けるのうまいよな」
「そうだよね〜。それで、ルヴァに「これが解けたら飲んでもいいです」って条件出されてさ…」
「あいつも懲りないよな。いつも降参してミネラルウォーター飲んでるくせに」
「そもそも、ルヴァの許可なんて貰わなくたって、他のところじゃ平気で飲んでるじゃない。なんでわざわざ注意されに来るのよ」
「そうだよな。俺んとこじゃ当たり前のように飲み明かしていくのにな」
「オスカー！」
「あ、ルヴァ、悪い。いや…そんなに強い酒は飲ませてないから…」
「気を付けてくださいね、オスカー。あの子はまだ成長期なんですから」
「相変わらず過保護だねぇ。そうやって子ども扱いするから、アンタに一人前だと認められたくってむきになるのかもね」
「良いではありませんか。つまりはルヴァ様とゼフェルの師弟の絆が強いということでしょう」
「なんだか親離れ子離れしていない親子みたいでもあるけどね」
「親子はないですよぉ〜」
賑やかな笑いが拡がる。

バタンと音を立ててドアが開いた。
戸口を振り返った誰もが予想したとおり、銀色の髪にルビーの瞳の少年が不敵な笑いを浮かべて立っていた。
「よお！　また集まって酒飲んでるな」
「ゼフェル…あなたはお酒はまだ早いですよ」
「堅ェこと言うなよ。自分たちだけ楽しもうったってそうはいかねーぞ。いいだろ、酒くれぇ。俺ァもう大人だぜ」
「そんなこと言っても、あなたはまだ成長期なんですよ。この時期の飲酒と喫煙はこれからの発達に大きな影響が…」
「酒くれぇ大丈夫だってば」
ゼフェルはつかつかとルヴァの傍まで来た。
「なぁ、ルヴァ、あんた酒飲み始めたのは幾つン時だ」
「え、私ですか。私は１５歳で守護聖になったので…その…」
「幾つン時に飲んだんだよ」
「あ…カティスが…その…少しくらいは薬だからって…その…」
「あぁ？」
「…１５歳の終わりくらいに…」
「今の俺より年下じゃん。それで俺に説教するのって説得力ねーぞ」
「だって、あれはカティスが強引に…」
「まぁまぁ、ルヴァ、これはアンタの負けだよ。観念して、いつもみたいに問題出してやりなよ」
「なんだよ、オリヴィエ。俺の勝ちなのにやっぱり問題解かせるのかよ」
「い〜じゃない。アンタだってルヴァの出す問題を立派に解いて、ルヴァに認められたいって思ってんでしょ」
「そっ、そんなんじゃねーよ。…でも、どうしてもって言うなら解いてやるから…ほれ、早く問題出せよ」
「仕方がありませんねぇ…」
ルヴァは少し考えていたが、あぁ、とゼフェルを見た。
「じゃあ、ゼフェル、これからいう問題にちゃんと答えられたら、あなたの望むようにしていいとしましょう」
「おう」
ゼフェルは自信に満ちた目でルヴァを見詰めた。
「では、ここに２．１リットルのお酒が入った容器があると思ってください。
その他に１．１リットルと０．８リットルと０．５リットルの容器が、これは空のままあります。
これを使って０．７リットルのお酒を計ってください。最小の手数でするにはどうしたらいいですか」
「最小の手数？」
「えぇ、一つの動作が一手です。例えばＡからＢに移したらそれで一手。さらにそれをＣに空けたらそれでまた一手となります。一番少ない手数で解いてください」
「えーと…」
渡された紙とペンを使って、ゼフェルは考え始めた。
心配そうにゼフェルを見詰めるルヴァの姿を、中堅の３人は優しく（面白そうに？）見守っていた。

問：０．７リットルを計り取る最小の手数と方法を示してください。

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