Ｑ１


「今日も好いお天気ですよ」
寝室のカーテンを開けながらリュミエールが言う。
「聖地はほとんどいつでも好いお天気ですけれどね」
目を覚ましたルヴァがそっと微笑む。
窓を開けると、少し冷たい朝の大気が流れ込んできた。
「あ、寒くありませんか」
「いぃえ、大丈夫ですよ、リュミエール。それに、もう今日は起きられると思います」
「無理なさらないでくださいね」
数日前、惑星の視察から戻ったルヴァは、視察先のどこかで貰ってきたらしい悪性の風邪を発症して、それ以来床に就いたきりだったのだ。
一時はかなり高熱を出し、意識も朦朧としていて、付きっ切りで看病していたリュミエールはずいぶん心を痛めていた。
それでも、少しずつ快方に向かい、昨日は、診察した医師がもう大丈夫だと言ってくれた。
「あなたにもずいぶん心配を掛けましたね…」
少しやつれた顔で、ルヴァはにっこりと微笑む。
「いいえ…」
リュミエールが嬉しそうに微笑を返した。


お昼近くになって、ジュリアスとクラヴィスが見舞いに来た。
「横になっていなくてよいのか」
ベッドには居るものの、背中にいくつものクッションをかって起き上がっているルヴァを見て、ジュリアスが言った。
「えぇ、どうやら起き上がってもふらつかなくなりました。寝てばかりいるのも疲れますしね」
「寝ていては本も読めぬ、か…」
サイドテーブルの上の書物を見ながら、クラヴィスがフッと笑った。
「あははは…」
ルヴァが照れたように笑った。
「ジュリアス様、クラヴィス様、お茶が入りました。どうぞ」
「あぁ、リュミエール、すまぬ」
ルヴァの傍にテーブルとイスを運んで、お茶となった。

「それにしても長いこと寝込んでしまいましたねぇ〜」
「そうだな。そなたが視察から帰ってきたのは土の曜日の明け方だった。その夜に倒れて…今日は日の曜日だから…１週間以上になるか」
「今週どんなことが起こっていたのか、まったく知らないんですよ。何か変わったことがありましたか」
「変わったことか。いや特に何も事件は起こらなかったぞ。そうだな、クラヴィス」
「あぁ。まぁ、事件と言えば地の守護聖が風邪で寝込んだことくらいか」
温かな笑いが行き交う。「ひどいですよぉ」とルヴァは苦笑した。

「あぁ、それから、そなたが提案した守護聖親睦ボードゲーム大会だが、昨日実施した」
「そうでしたか」
「うむ。そなたと」言いながらリュミエールに視線を走らせる。「そなたに付きっ切りのリュミエールは不参加の形となったが、とりあえず試行として一度やってみてはどうかとディアに言われてな…」
「あ〜、参加出来なくって残念でした。リュミエールまで巻き添えにしてしまいましたね。で、どうでした」
「なかなか面白かったぞ。種目を入れ替えて定期的に行うのもよいのではなかろうかと、ディアと話している」
「私は…どちらでもよい。…面白くはあったがな…」
「クラヴィス、どうしてそなたはいつもそのようにやる気がないのだ。もっと積極的に事に当たるようにと何度言ったら…」
「まぁまぁジュリアス。それより昨日は何をしたんですか」
「最初だし、オーソドックスなものが良いのではということで、メインはモノポリーだ。その他にカードゲームをいくつかやった」
「モノポリーですか。あれは熱中しますからねぇ〜。で、結果は？」
「クラヴィスと私は観戦に回り、オスカー以下の５人で行ったのだが…」
ジュリアスは２枚のメモをルヴァに渡した。
「参加出来なかったそなたにも、少しは楽しんで貰おうと思ってな。この２枚のデータから５人の順位を当ててみるがいい」
ルヴァは２枚のメモを見る。
　　
ゲーム前の目標
　オリヴィエ「最下位にはなりたくないね」
　ランディ「１位か２位にはなりたいです」
　ゼフェル「３位以内には入る！」
　オスカー「オリヴィエには勝つぜ」
　マルセル「ランディには勝ちたいなぁ〜」
ゲーム後のコメント
　オリヴィエ「最下位はマルセルだったね」
　ランディ「俺、目標達成出来ませんでした」
　ゼフェル「目標を達成したのは俺サマだけだな」
　オスカー「俺は２位だったぜ」
　マルセル「僕、オリヴィエ様より下の順位でした」

「これは…？」
「ゲームを始める前と終わってからのそれぞれのコメントだ。ただし、ゲーム後の発言については、ゲーム前の目標を達成した者は本当のことを言っているが、目標を達成出来なかった者はウソを言っている場合もある」
ジュリアスは楽しそうにルヴァを眺めた。
「病み上がりとはいえ、そなたには簡単な問題であろう。どうだ？」
２枚のメモを見ながらしばらく考えていたルヴァは「あぁ」と顔を上げた。
「なかなか興味深い結果ですねぇ」
ルヴァはリュミエールにメモを渡した。
リュミエールは戸惑ったようにメモを読み始める…

問：５人の順位を当ててください。

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