【№１３８】


Q2



オリヴィエとリュミエールの手助けを借りて、オスカーもどうにか問題を解き終え、改めてお茶となった。
新しく供された茶菓子がなかなか美味しくて、ルヴァがいかにしてこの菓子を入手したかについての武勇伝で話が盛り上がった。

笑っているところに突然ジュリアスの来訪が告げられた。
突然オスカーが居住まいを正したことがまた笑いを誘う。


「ルヴァ、邪魔をするぞ。…なんだ、ずいぶん楽しそうだな。何かあったのか」

執事に案内されてやってきたジュリアスが、４人の顔を見回す。

「ああ、いえ、何でもないんですよ。よくいらっしゃいました、ジュリアス。どうぞ掛けてください」

「うむ。失礼する…」

ジュリアスは勧められたソファに腰をおろした。
オリヴィエとリュミエールは笑顔でジュリアスを迎える。

「突然邪魔をしてすまぬな」

「邪魔だなんて全然そんなことないよぉ～。ジュリアスももっと私たちと一緒にお茶してもいいんじゃない」

「そうか…？」

「ええ。ジュリアス様さえよろしければ、どうぞわたくしたちとお過ごしください」

「ありがとう。機会があればぜひ参加させてもらおう」

ジュリアスはにっこり笑った。

「ジュリアス、お茶をどうぞ」

「ああ、すまぬ」

ルヴァの差し出す茶を飲んで、ジュリアスは満足そうにうなずいた。

「うまい茶だな。うまい茶を飲み、気ままな会話を楽しむ…なかなか贅沢なひと時だな」

「ありがとうございます」

ルヴァが笑顔で応じる。

「それにしても…」

ジュリアスはチラリとオスカーを見た。

「オスカー、どうかしたのか。なんだかひどく疲れているようだが」

ジュリアスに声をかけられ、オスカーは背筋を伸ばした。

「いえ、別にどうもしていません。大丈夫です、ジュリアス様…」

オリヴィエは楽しそうに笑ってオスカーに視線を投げる。

「気にしなくていいよ、ジュリアス。ルヴァに問題出されて、なれない頭使っただけだから」

ジュリアスは僅かに目を剥いてオスカーを見詰めた。
すぐに納得したように笑顔でうなずく。

「なるほど」

「ジュリアス様、その『なるほど』っていうのはどういうことですか」

オスカーの抗議する様子は、かなり情けなかった。
オリヴィエが声をあげて笑う。
ルヴァとリュミエールも笑いを抑えられずにいた。


「ところで…」

笑いが収まって、ふとルヴァが言った。

「ジュリアス、何かご用でしたか」

「うむ？　ああ、忘れていた。これだ…」

ジュリアスはファイルを取り出した。

「さっきまで王立研究院に行っていたのだ。ルヴァにも検討してもらいたい資料があったので届けにきた」

「そうでしたか…」

ルヴァは、受け取ったファイルの中身をパラパラと見た。

「急ぎますか」

「いや、ゆっくり検討してもらえばいい。月の曜日に聖殿で意見を聞かせてくれ」

「わかりました。お預かりします」

ルヴァはファイルをサイドボードの上に置いて、改めてジュリアスを見た。

「さあ、それはそれとして、せっかくいらしたんですから、ゆっくりしていってくださいね」

「構わぬのか？」

「ええ、もちろんです」

ということで、珍しくジュリアスを交えてのお茶会となった。



「そういえば、今週は珍しくあなたも視察に出られたのでしたねえ」

茶菓子を勧めながら、ルヴァがジュリアスに話し掛ける。
「ああ」とジュリアスが微笑んだ。

「久し振りの機会だった」

「へえ～ジュリアスも視察に行ったりするんだ～。…って、当たり前か。光の守護聖が要請されることだってあるよね」

オリヴィエが面白そうにうなずく。

「で、何か面白いことあった？」

オリヴィエの問いに、ジュリアスは何かを思い出したようにフフッと笑った。

「ああ、あった」

「へえ～。どんなこと？　聞かせてよ」

「うむ。視察に行ったときに、ちょうど大規模な馬術大会が行われていて、その見学も予定に入っていたのだ」

「馬術大会ですか。それは楽しんでこられたことでしょうね」

オスカーがやや嬉しそうに相槌を打つ。

「ああ、楽しかった。いずれも厳しい予選を勝ち抜いてきた精鋭ばかりだったからな。見事な技の連続で見応えがあった」

楽しそうに語っていたジュリアスが、ニッと笑った。

「特に優れた選手が４人いてな、その４人が馬場馬術と障害飛越競技の２種目の競技で１位から４位を占めていた。名前はジュリアン、クラウディア、オズワルド、リュミエラといったな」

「おや、なんだか聞き覚えのあるような名前だねえ」

オリヴィエが笑った。
リュミエールとルヴァも「そうですね」と微笑み合った。

「オスカー」

不意にジュリアスはオスカーに声をかけた」

「はい、何でしょう、ジュリアス様」

「その４人が２つの競技でそれぞれ何位だったか当ててみぬか」

「はい…えっ？」

オスカーは目に見えてうろたえていた。
ルヴァたちは、面白そうに成り行きを見守っていた。

「今からいうヒントで４人の順位を当ててみよ…無理か？」

「いえっ…無理などとそんなことはないです」

「そうか。ではヒントを言うぞ」

「はい…」

「よいか、こうだ。

１）障害で１位だった者の馬場馬術での順位はジュリアンより１位下だった。
２）馬場馬術で３位だった者の障害での順位はクラウディアより１位下だった。
３）馬場馬術でのオズワルドの順位は、障害で４位だった者より１位下だった。
４）障害でのリュミエラの順位は、馬場馬術で２位だった者より１位下だった。

ヒントは以上だ。さあ、それぞれの競技での４人の順位がどうだったか当ててみよ」

「はあ…」

オスカーは困りきった表情で固まっている。
ルヴァたちは手を貸したほうがいいだろうか、と考えながら、顔を見合わせていた。
　問：２つの競技で４人がそれぞれ何位だったかを答えてください。

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