では第１問です

Q1

「ちょっと変わったお茶を試してみませんか」

子供のような笑顔でルヴァが言った。

「変わったお茶って何？」

オリヴィエが好奇心に満ちた顔で尋ねる。

「また主星かどこかからお取り寄せをなさいましたか」

リュミエールがクスッと笑った。

「わざわざ取り寄せたんじゃないんですよ」

ルヴァは面白そうに笑う。

「いつもどおりに緑茶を頼んだんですけれどね、新商品のお試しサンプルとして面白いものが付いてきたんです」

「へえ～。どんなの？」

「これですよ」

ルヴァは２人の前に小さな包みを差し出した。
包みの中には小さな丸い塊がいくつかあった。

「これがお茶？」

「ええ、そうですよ」

「これは、細かく崩して使うのでしょうか」

「いいえ、そうじゃありません。これはこのままお湯を注ぐんです」

ルヴァは大振りのガラスのカップを３つ並べると、お茶の葉の塊だという球を１つずつ入れてお湯を注いだ。
見詰める３人の目の前で、カップの中のお茶の球はゆっくりとほぐれ、ゆらゆらと開いて見事な大輪の花となった。
３人の口から感嘆の声が漏れる。

「凄いね、これ」

「素晴らしい技ですね、ルヴァ様」

「ステキでしょう。私も実際に見るのは初めてなんですけれどね」

ルヴァは嬉しそうにお茶を見詰めていた。

「で、これは観賞用なの？」

「いえ、ちゃんと飲むためのお茶ですよ。飲んだらまたお湯を入れればいいんです」

「へえ～」

オリヴィエは試すようにカップに口を付けた。

「うん、ちょっと変わった味だけど、なかなか美味しいじゃない」

「ええ、美味しいですね」

「お気に入っていただけましたか。じゃあ、次の機会に少し取り寄せてみましょうか」

ルヴァはほんわりと微笑んでお茶を啜った。

「ところで、今日オスカーのヤツは来ないのかな」

ふと思いついたようにオリヴィエが言った。

「「ああ、オスカーなら今朝視察に出掛けましたよ」

「え～土の曜日だってのに視察～？　どこに？」

「昨日の会議に上がっていた、例の星です」

「ふ～ん。リュミちゃん、知ってた？」

「いえ…わたくしも初耳ですが…。ルヴァ様、何か非常事態ですか？」

「非常事態、というわけでもないんですけれどね、どうも炎のサクリアが乱れ気味なので念のためにということです」

「そうでしたか。うまく収まればよいですね」

「ええ。まあ大したことにはならないと思いますよ」

「ルヴァがそう言うんなら、きっと大丈夫だね。宇宙の一大事でないならいいんじゃない。オスカーは視察に行ってた方が悪さしなくていいってジュリアスも思ってたりして…」

「オリヴィエ、それは言わぬが花ですよ」

オリヴィエとリュミエールは顔を見合わせて我慢しきれないように笑った。
ルヴァは困ったような笑みを浮かべて２人を見ていた。

「オスカーはいないし、ガキどもはやってこないし、どうやら今日は静かに過ごせそうだね～」

オリヴィエは満足そうに微笑んで茶菓子をつまむ。
リュミエールはクスッと笑った。

「何？　どしたのリュミちゃん…」

「いえ、オリヴィエが…」

「私が、何？」

「オスカーや子供たちがいないことを寂しがっているみたいで」

「え？　そんなことないって」

「あ～そうですねえ。オリヴィエには静か過ぎるのはつまらないでしょうねえ」

「ルヴァまでそんなこと言う？　私は優雅に過ごすのが好きなんだからね。オスカーやガキどもが騒がしくしてちゃ落ち着いてお茶も楽しめないし…」

オリヴィエは、確かに優雅に過ごすのは好きだろうが、同じぐらい賑やかなのも好んでいる。
ルヴァもリュミエールも、その辺りはよくわかっているが、反論することもないから曖昧な笑顔でうなずいた。

「でも、せっかくですから、何かルヴァ様に問題を出していただいてはどうですか」

「え、どういうこと？」

オリヴィエは戸惑ったようにリュミエールを見た。

「オスカーがいないからといって、問題を解くことがないと物足りないでしょう？」

「いや、そういうことはないけど…」

「ルヴァ様、いかがですか。オリヴィエに何か楽しめる問題をだしていただけませんか」

「ああ、それはいいですねえ。ええ、何か考えてみましょうか」

「リュミちゃん～～」

オリヴィエがジロリとリュミエールを睨む。
リュミエールはおっとりと微笑を返した。

「ま、それもいっか。ルヴァ、オスカーに出すのとは一味違う、エレガントな問題にしてちょうだいねっ」

オリヴィエの注文に、ルヴァは「あははは…」と苦笑した。

「エレガントかどうかはわかりませんけれど、こんな問題はいかがでしょう…。

ゼフェルとマルセルがジャンケンの１回勝負をして、どちらかが勝ちました。
２人はこう言いました。

ゼフェル「マルセルはグーを出した」
マルセル「僕が出したのはグーじゃないです」

勝った人だけが真実を述べています。

いいですか？
では問題です。

マルセルが勝った確率はどれだけでしょう？」

ルヴァはにっこりと笑ってオリヴィエを見た。
オリヴィエは「確率？」と首を傾げる。
リュミエールも静かに考え始めた。

問：マルセルが勝った確率はどれだけでしょう。なぜそうなるかも説明してくださいね。