では第１問をどうぞ

Q1

「お茶のお代わりはいかがですか？」

ティーポットを手に、ルヴァが微笑む。
のんびりとした土の曜日の午後のひととき、地の館ではいつものようにまったりとお茶会が開かれていた。

「ん～、今日の茶菓子もなかなかいけるじゃない」

オリヴィエが楽しそうにつぶやく。
そうですね、と、リュミエールがうなずいた。

「どうやら、また主星かどこかからお取り寄せをなさったようですね」

クスクスと笑うリュミエールに、ルヴァは照れたような笑いを漏らす。

「ええ、主星のね、１００年以上続いている老舗の銘菓ですよ」

「ふむ…　ま、あんまり甘すぎなくていいな…」

「オスカー、無理して食べなくっても、私がアンタの分食べてあげてもいいんだよぉ」

オリヴィエが笑いながら手を伸ばしてくるのを、オスカーは「ふん」と払いのける。

「心遣いはありがたいが、それには及ばないぜ。けっこう好みだ」

「あ、そ」

オリヴィエは素直に自分の茶菓子に戻る。
２人のやり取りを見て、リュミエールはまたクスクスと笑った。

様々な話題が飛び交って、和やかな時が過ぎていった。

「そういえばオスカー」

四方山話の途中で、ふと思いついたようにルヴァが言った。

「ん、なんだ？」

「あなたは、やっぱりお茶よりコーヒーの方がお好みなんでしょうか」

「あ、ああ…そりゃコーヒーは好きだが…」

「どしたの、ルヴァ。　こいつに気ィ使ってコーヒー出そうっていうつもり？」

「気を使っているわけではありませんけれどね」

ルヴァはオリヴィエに向かってフッと微笑む。

「昨日、面白いものを見つけたんですよ」

「へえ～。何を見つけたっての？」

「ええ、ちょっと待ってくださいね」

パタパタと走っていったルヴァは、サイドテーブルの引き出しから何かを取り出して戻ってきた。

「これなんですよ」

テーブルの上に広げられた１枚の紙に、中堅３人の視線が集中する。

「これ…何？」

オリヴィエが訝しげな視線をルヴァに向ける。

「なんだと思います？」

「この豆というのは…コーヒー豆ではありませんか？」

リュミエールが首を傾げる。

「ええ、そうですよ、リュミエール」

ルヴァはにっこりと笑った。

「コーヒー豆かぁ。じゃあ、これはコーヒーのブレンドのレシピってこと？」

「ええ、まあ、そういうことですね」

ルヴァは秘密めいてフフッと笑った。

「これ、カティスが書いたものなんですよ」

「カティスの？」

３人がルヴァを見る。

「ええ。カティスの文字です。カティスはお酒も好きでしたけど、コーヒーも好きでしたからね」

ルヴァは懐かしそうにその読みやすいが独特のクセのある文字の列を眺めた。

「本の間に挟まっていたんです」

「本、ですか？」

「ええ。考えてみたら、その本は、カティスに返してもらってからずっと、本棚に置きっ放しでした」

「おや、そんなこともあるんだ…」

面白そうにオリヴィエがつぶやく。
皆それぞれに、カティスのことを思い出していた。

「ねえ、ルヴァ」
改めて書かれた内容に目を通していたオリヴィエが首を傾げる。

「これ、レシピっていっても素直に書かれてるわけじゃないんだね」

「ええ、そうなんですよ」

わかりましたか、とルヴァは微笑む。
リュミエールとオスカーも内容を確認してうなずいた。

「カティスは、私に解いてみろというつもりでこれを書いたのかもしれませんね」

少年たちのいたずらに気が付いたときのような笑みを浮かべて、ルヴァは言った。

「なのに、それを本の間に挟んだまま忘れてたってわけか。カティスらしいね」

フフン、とオリヴィエが笑う。
陽気で、面白いことが好きで、どこか子供っぽいところのあったカティスを思い出して、皆、クスッと笑った。

「ということで、せっかくですから皆さんで解いてみませんか」

３人の顔を眺め渡して、ルヴァはにっこりと笑った。
３人は、やっぱり、というように、ため息を隠してうなずいた。

「じゃあ、これを読んで、１杯のコーヒーを淹れるのに、それぞれのブレンドでどの豆を何ｇ使うか、考えてください」

ルヴァは楽しそうにカティスの残した紙を示す。
３人は改めてその記述に目を通した。

「ブレンドは　クインズブレンド、スカイブレンド、ロイヤルブレンド、スーパーブレンド
豆は　アオヤマ、ジャキリロマン、ジルブラ

４つのブレンドは全てこの３種類の豆の組み合わせ。
どのブレンドも３種類の豆をすべて使い、他の豆は使わない。
豆は０．５ｇ単位で使う。
１杯分に使う量は次の通り。

・使う豆の量はの合計は、クインズブレンドだけが８ｇで、残り３ブレンドはすべて６ｇ。
・スカイブレンドとロイヤルブレンドで使うジャキリロマンの量は同じ。
・ロイヤルブレンドでもっとも多く使う豆の量は２．５ｇ（ただし１品種だけとは限らない）。
・スカイブレンドで使う豆の量がもっとも少ないものは１．５ｇ（ただし１品種だけとは限らない）。
・クインズブレンドで使うアオヤマの量はロイヤルブレンドで使うアオヤマの量のちょうど２倍。
・クインズブレンドとスーパーブレンドで使うジルブラの量は同じ。
・スーパーブレンドとスカイブレンドで使うアオヤマの量は同じ。
・１つのブレンドで１品種の豆を４ｇ以上（４ｇちょうども含む）使うことはない。
・４種類のブレンドを１杯ずつ作ったとき、もっとも多く使う豆はジルブラの９．５ｇで、他の２品種はそれより少ない。

以上。

１杯のコーヒーを淹れるのに、それぞれのブレンドでどの豆を何ｇ使うか？　　　　」

読み終わって、３人は思わず顔を見合わせた。
小さく肩をすくめると、それぞれに計算を始める。
ルヴァは楽しそうにその様子を眺めていた。

問：１杯のコーヒーを淹れるのに、それぞれのブレンドでどの豆を何ｇ使うかを答えてください。