Q2


問題を解き終わって、オリヴィエとリュミエールはホッと息をついて、熱いお茶を口にした。
ルヴァも楽しそうにお茶を味わっている。

「それにしても分厚い本ばっかりだね。運ぶのも重かったんじゃない？」

「ええ、まあ少しはね。でも本の重さはあまり気になりませんし…。それに馬車を降りたところでオスカーに出会いましてね。執務室まではオスカーが運んでくれたんです。帰るときにも執務室に来てくれて、馬車まで運んでくれましたから…」

「相変わらず、ルヴァには献身的だねえ、あいつ」

「親切な人ですよね」

「あいつが親切なのは女性限定だよ。ルヴァに対しては、見捨てられないように必死ってとこかな」

「なんですか、見捨てられないようにって」

「だって、あいつのレポート、いつも面倒見てるでしょ？」

「え、ええ、まあ…」

「ルヴァに見捨てられたら、困るのが目に見えてるからねえ」

オリヴィエは楽しそうに笑った。
２人のやり取りを聞いていたリュミエールも、微笑みながら「そうですね」とうなずいた。
ルヴァは困ったように微笑む。

「別に、力仕事をしてもらうから面倒見ているわけではないですよ」

「まあいいじゃない。気の済むようにやらせときなさいよ。あいつのとりえは力と下僕体質なんだからさ」

「誰が下僕体質だ」

突然声が掛かる。
３人がそちらを見ると、呆れたような顔をしてオスカーが立っていた。

「おや、オスカー。いらしてたんですか」

「ああ」

オスカーは勧められたイスに腰をおろすと、抱えていた包みをルヴァに差し出した。

「これ。さっきここに着いたときに、王立研究院からの使いと一緒になってな。依頼されていたものが入手できたので届けに来た、とかいってたから、受け取っておいた」

「あぁ、すみません。ありがとうございます」

包みを受け取り、貼られていたラベルを確認すると、ルヴァは嬉しそうに微笑んだ。

「研究院にも何か頼んでたんだね。今度は何？」

声をかけたオリヴィエに、ルヴァはクスッと笑った。

「これは、ある星の民間信仰に係わる品なんです。この間調べていて、面白そうだったので、研究院にお願いして取り寄せてもらったんですよ」

「へえ〜。どんなの？見せてよ」

「ええ」

ルヴァは包みを解いて、中身をテーブルの上に並べた。

「可愛いですね」

リュミエールが微笑む。

「うん。素朴な形だけど、なんだか愛嬌があるねえ。ルヴァ、これ何なの？」

「これは『照る照る坊主』と『降り降り坊主』といいます。天候を祈るときのアイテムだそうです」

「天候…って、こんなものに天候を左右する力があるのか？」

オスカーが不思議そうに首をひねった。

「まあ、こういうものは、その人々の信じる力の集合体みたいなものですから…。これは割りと効力のあるものらしいですよ」

「どんなふうに使うの？」

「窓とか軒先とか、戸外に通じるところに吊るすんです。ここの風習では２つ並べて吊るすようですね」

「ふうん。で、どれが『照る照る坊主』でどれが『降り降り坊主』なの」

オリヴィエが尋ねると、ルヴァは面白そうにクスッと笑った。

「さあ、どれがどうなんでしょうねえ。外見からは、すぐに見分けはつかないんですよ」

「へえ〜」

３人は不思議そうに、並べられた「照る照る坊主」やら「降り降り坊主」やらに注目する。
ルヴァの目がキラリと光った。

「ああ、せっかくですから、ちょっと考えてみませんか」

「えっ！」

オスカーはあからさまにうろたえる。
オリヴィエとリュミエールは、やっぱりね、という視線を交わした。

「なあ、なんでそういうことになるんだ？」

オスカーはオリヴィエとリュミエールに訴える。
２人は肩をすくめて「さあね」と笑った。

「さあね。仕方がないよ、それがルヴァなんだから。私たちは、楽しんで解くだけさ」

「なんだよ、悟ったみたいなこと言うなよ」

などと言っている間に、ごそごそと照る照る坊主たちをいじっていたルヴァが作業を終えた。

「お待たせしました。じゃあ、いきますね」

ルヴァがにっこり笑う。
３人はその笑顔を見ながらわずかに身構えた。

「え〜と、天候は、晴れ・くもり・雨の３種類としましょう。
吊るすものと天候の関係はこうです。
・両方とも「照る照る坊主」なら翌日は晴れ
・両方とも「降り降り坊主」なら翌日は雨
・「照る照る坊主」と「降り降り坊主」１つずつなら翌日はくもり
いいですか？」

３人は神妙な顔でうなずく。

「そして、「照る照る坊主」の言うことはいつも真実で、「降り降り坊主」の言うことはいつもウソです」

え？と３人はルヴァの手元を見る。
テーブルの上に並べられた「照る照る坊主」だか「降り降り坊主」だかには、ルヴァの手によって名札とセリフが付けられていた。

Ａ「ＢとＣを吊るしたら、明日はくもり」
Ｂ「ＤとＥを吊るしたら、明日は雨」
Ｃ「ＤとＥを吊るしたら、明日は晴れ」
Ｄ「ＡとＣを吊るしたら、明日は雨」
Ｅ「あははは…」

「さて、明日が雨になって欲しいなら、どの２つを吊るしますか」

「え〜と…」

３人はブツブツとセリフをつぶやきながら考え始めた。

「何だよ、『あははは…』って…」

オスカーが首をひねる。

「Ｅの発言は考えなくていいということですよ」

リュミエールがささやく。

ルヴァは楽しそうにお茶の用意を始めた。

問：明日が雨になって欲しいなら、Ａ〜Ｅのうちどの２つを吊るしますか。
どう考えたのかも書いてくださいね。

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