Q2

「何というか、忙しい１週間だったんだねえ…」

オリヴィエがしみじみとした口調で言った。
ルヴァは「ええ、まあ…」と笑った。

問題を解き終わって、またのんびりと四方山話が始まった。
視察先で見つけた珍しい出来事を話していたオリヴィエが、「おや…」という顔でリュミエールに目配せする。
２人の視線の先で、ルヴァはまた眠りかけていた。

「やれやれ。よっぽど疲れてるんだねえ」

オリヴィエが小さな声でささやく。
リュミエールも「ええ」とうなずいた。

「昨夜はしっかりおやすみになったというのに、この状態では…」

「どうする？」

オリヴィエが意味ありげに尋ねる。

「仕方ありませんね…」

リュミエールがため息混じりに言って、２人はうなずき合った。

「ルヴァ、無理しないで寝ておいで…って言っても聞こえてないよね。じゃ、実力行使ってことで」

一応形だけ、という感じでルヴァに呼び掛けると、オリヴィエは、立っていって執事を呼んだ。
事情を聞いた執事は、何人かのスタッフを呼び集めて、ルヴァを寝室に運んでいった。
残された２人は、顔を見合わせて苦笑いめいた笑いを漏らす。

「さて、リュミちゃん、私たちはどうする？」

「とりあえず、新しいお茶を淹れませんか」

「あ、ああ。そうだね。お茶淹れて、まったりしてるうちにルヴァが起きてくるかもしれないし」

「ええ。目が覚めてわたくしたちが帰ってしまっていたら、がっかりされるかもしれません」

「お客を放って眠ってしまいました～　って、慌てるかもしれないしね」

「じゃあ、ゆっくりとお目覚めをお待ちしましょう」

「そうだね」

ということで、２人は主不在の客間でのんびり過ごすことにした。

「ん？」

オリヴィエが顔を上げて庭の方を見る。
リュミエールも同じようにそちらに視線を向けた。

「ガキどもがやってきたようだね」

「ええ。いつも元気がいいですね」

などと言っているうちに、賑やかな挨拶と共に少年たちが入ってきた。
少年たちは、オリヴィエとリュミエールを見て、一瞬戸惑ったように周囲を見回した。

「ルヴァはいねーのか？」

勧められたソファに腰をおろしながら、ゼフェルが尋ねる。
ランディとマルセルも同じような表情でオリヴィエとリュミエールを見ていた。

「いるよぉ～。今はちょっとお休み中だけどね」

「何だ、そりゃ」

「ルヴァ様は、ずいぶん疲れていらっしゃったので、少し休んでいただいているんですよ」

「つまり、昼寝中ってことか？」

「ええ、まぁそういうことです…」

「ふうん…」

「ま、いーじゃない。ほら、お茶淹れたよ」

「あ、すみません、オリヴィエ様」

「お菓子もありますよ」

「ありがとうございます、リュミエール様。わあ、美味しそうだなぁ」

「俺は甘いもんはいらねーぞ」

「そんなこと言わないでゼフェルも食べなよ。美味しいよ、これ」

「うん。マルセルのいうとおりだ。美味しいよ、ゼフェル」

「てめーらは勝手に食ってろ。俺はいらねー」

「ああ、ルヴァ様が何か用意していらっしゃいましたよ。ちょっと待ってくださいね」

リュミエールは、お茶の用意を乗せたワゴンの棚からしょうゆせんべいが入った菓子器を取り出した。

「ゼフェルやオスカーは甘いものが好きではないからと言っていらっしゃいました」

「さすがルヴァだねぇ。相変わらず用意のいいこと」

バリバリとせんべいを齧っているゼフェルを眺めて、オリヴィエが笑う。

「ああ、そうだ」

ふと思い出したようにゼフェルがポケットを探り出す。
ややあって取り出したのは、卵ほどの大きさのまろやかな物体――ペーパーウェイト？――だった。

テーブルの上の置かれたその物体は、不思議な光沢を放っていた。
みなの視線が集中する。

「何、これ？」

オリヴィエが尋ねると、ゼフェルは得意げにフフンと笑った。

「こいつは俺様の自信作だ。いい形だろ？」

「うん、とってもキレイだね、ゼフェル」

マルセルが素直な称賛の声をあげる。

「それだけじゃないぜ。こいつは作動させると、７色に変化するんだ」

「７色、ですか。虹の色ですね」

リュミエールがにっこり微笑む。

「ああ。それも、曜日に合わせて色を変えるようになってっから、これを見れば曜日がわかるんだぜ」

「そんなことが出来るなんて、すごいな、ゼフェル」

ランディが目を輝かせる。

「ねえ、ゼフェル、それで、今日は何色になるの？」

マルセルが尋ねる。
ゼフェルは意味ありげな笑いを浮かべて４人の顔を見回した。

「そこが問題だ。こいつが何曜日に何色になるか、いまから言うヒントで当ててみな」

「おや」

オリヴィエが面白そうにゼフェルの顔を見詰めた。

「さすが愛弟子だねぇ。ルヴァに似てきたじゃない」

「バ、バッカヤロー！　そんなんじゃねーよ」

「ま、いいからいいから。ほら、解いてあげるから、ヒントを言ってごらん」

「お、おう」

ゼフェルは、ポケットからメモ用紙を『取り出した。

「じゃあ、ヒントを言うぜ。あ、てめーらも頑張って解けよ」

ジロリ、と２人の少年に視線を走らせると、ゼフェルはヒントを読み上げ始めた。

「いいか、よく聞けよ。

１．火曜日は火のイメージの赤になるぜ。
２．黄の２日後は緑だ。
３．青の翌日が藍、あるいは藍の翌日が青のどちらかだぜ。
４．金曜日は赤か橙か黄のどれかになるんだ。
５．橙と緑は連続してない。
６．赤から紫になるまでの日数と、紫から青になるまでの日数は同じだな。

以上だ。さあ、考えな」

ゼフェルは楽しそうに笑った。

問：何曜日に何色になるかを当ててください。

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