　Q2

「さ、じゃあ新しいお茶を淹れましょうか。何か新しいお菓子をもらってきますね」

ルヴァは席を立って、厨房の方へ歩いていった。
残された２人は僅かに肩の力を抜く。

「やれやれ。普段ならともかく、パーティーの席上でこんな苦労はしたくないよねぇ」

「ええ。パーティーのときはゆったりと楽しむのがいいですね」

「だよねぇ～。あ～疲れた」

「何を騒いでるんだ、極楽鳥」

突然背後から声が掛かった。
２人は振り向いて、来訪者に向かって微笑み掛けた。

「おや、オスカー。またルヴァにレポートを泣きつきに来たの？」

「つまらないことを言うな。俺はただルヴァに視察の土産を持ってきただけだ」

オスカーはソファに腰をおろすと、テーブルの上に鮮やかな包装紙の包みを置いた。

「視察はいかがでした？　オスカー」

「ああ、特に問題はなかったぜ、リュミエール。お前にも関係することが少しあったから、後で資料が届くはずだ。目を通しておいてくれ」

「わかりました」

「なぁんてもっともらしいこと言ってるけど、その資料はアンタが作ったものじゃないんでしょ、オスカー」

「あぁ？　ああ。王立研究院のヤツらが作ったものだぜ。なんでだ？　なにか問題があるか？」

「問題はないよ。研究員たちの作成した資料なら内容は確かだし」

「なんだよ、その言い方は…」

オスカーは拗ねたような目付きでオリヴィエを見た。
オリヴィエは「フン」と鼻先で笑う。

「ところで、ルヴァはどこへ行ったんだ？」

「新しいお茶菓子をもらいに行ってるよ」

「そっか」

オスカーはソファの背にゆったりともたれた。
オリヴィエは、その様子を見ながらニッと笑う。

「ねえ、オスカー？」

「なんだ？」

「私たちに感謝しなさいね」

「突然、なんだよ。なんでお前に感謝しなきゃいけないんだ」

「聖夜から新年にかけてのパーティーで、アンタが楽し～く過ごせるのは、リュミちゃんと私のおかげだからさ」

「話が見えんな」

オスカーは戸惑いながらリュミエールに救いを求める視線を向けた。
リュミエールはクスッと笑う。

「パーティーで、ルヴァ様に難しい問題を出されずにすむ、ということですよ」

「え？」

オスカーは言われたことをゆっくり考えているらしい。
やがて、嬉しそうな、安心したような笑顔を浮かべる。

「そうかぁ。それは嬉しいなぁ…」

「でしょ。だから、感謝してよね」

「ああ。感謝でもなんでもするとも」

「じゃ、今夜はアンタんとこで飲もうね」

和んでいたオスカーの表情が、急に訝しげに引き締まる。

「お前、それが目当てかよ」

「さあね。とにかく、感謝の印に最高の品を出してもらうからねっ」

「お前なぁ…」

「にぎやかですねぇ。おや、オスカーいらしてたんですか」

戻ってきたルヴァがオスカーに笑顔を向けた。
オスカーはシャキッとした男前の顔で挨拶をする。

オスカーが持ってきた土産のお菓子も封を開けられ、一気にテーブルの上は華やかになった。
新しく淹れたお茶と一緒に、まったりとお茶会が展開する。

「ああ、そうだ。ルヴァ、研究院のヤツらからあんたに伝言があるんだ」

オスカーはポケットから何枚かの折り畳んだ紙を取り出した。

「またいつものヤツらしいぜ」

ニッと笑ってルヴァに手渡す。

「いつものって、また研究員たちからルヴァへの問題かな？」

「ええ、そうでしょうね」

オリヴィエとリュミエールはささやき合いながらルヴァの手元を見ていた。
紙を広げて読み始めたルヴァは、嬉しそうにほわぁと微笑んだ。

「これは楽しい問題ですねえ。皆さんも一緒に考えてみませんか」

「やっぱりそうだったね」

「ええ」

微笑む２人の傍らで、オスカーは諦めたように笑っていた。

「ちょっとややこしいかもしれませんね。メモとペンを用意しましょう」

いそいそと人数分のメモとペンを用意すると、おもむろにルヴァは問題を読み上げた。

「いいですか。じゃあ読みますね。

５人の研究員が休みの日に読書をしました。
読み終わるまでの時間は、誰もがキリのいい「ちょうど○時間」でしたが、全員異なる時間でした。
５人の名前は、男性はアーサー、バート、カイン、女性はドロシー、エマです。
５人の姓は、デイヴィス、クラーク、トムスン、エリスン、ハミルトンです。
次のヒントから、誰（フルネーム）が何を何時間で読み終えたか当ててください。

１．エマがかかった時間は歴史全集を読んだ人の半分で、ディヴィスさんの２倍。
２・ハミルトンさんは８時間かかった。それより早く読み終えた人は２人以上いる。
３．カインの時間と哲学書を読んだ人の時間の平均がトムスン嬢のかかった時間。
４．ミステリを読んだのは２人で、バートはミステリを読んでいない。
５．エリスンさんは自然科学の本を読んだ男性の３倍の時間がかかった。
６．アーサーのかかった時間は自然科学の本を読んだ男性の２倍だった。

これだけです。
さあ、考えてください」

３人はそれぞれメモを見ながら考え始める。
ルヴァは楽しそうにお茶を飲み干すと、おもむろに解き始めた。

問：５人のフルネームと、何を何時間で読み終えたかを答えてください。

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