では第２問です

Q2

オリヴィエとリュミエールがルヴァの問題に答え終わって、３人は新しいお茶を淹れてくつろいでいた。
オスカーはまだ眠っている。

「ホントに疲れているんですね」

オスカーの様子を見て、しみじみとリュミエールがつぶやいた。

「慣れない頭使ってるから疲れてるんだよ」

どこか面白がっているような口調でオリヴィエが言った。

「休憩時間の間はゆっくり寝かせておいてあげた方がいいですねぇ」

ルヴァはいたわるようにオスカーを眺めていた。

突然、元気良く扉が開いて、少年たちがやってきた。
駆け込んできた勢いで挨拶しようとした少年たちに、ルヴァたちは揃って「シ～ッ！」と口の前に人差し指を立てた。

「何だよ。何かあったのか」

小さな声でゼフェルが尋ねた。
オリヴィエは黙ってオスカーを指差す。

「オッサン、寝てんのか？」

「執務に追われて疲れているのですよ」

そっとリュミエールが説明する。

「静かに寝かせておいてあげてくださいね」

少年たちの顔を見詰めながら、ルヴァが優しくささやいた。

「ところであんたたち、ジュリアスに提出する書類やレポートを溜めてないだろーね？」

お茶の合間に、ふと思いついたようにオリヴィエは尋ねた。
何を言われたのか、一瞬考えた少年たちだったが、すぐに首を振った。

「溜めてませんよ。全部ちゃんと出してます」

きっぱりとランディが言った。

「ええ。僕も溜めてません。ゼフェルも大丈夫だよね」

問いかけるようなマルセルの眼差しに、ゼフェルはフンと笑う。

「ったりめーだ。出すもんはさっさと出しちまった方が楽だかんな」

「おや～、意外と真面目なんだねぇ、鋼の坊やは」

オリヴィエは面白そうに笑った。

「前に、いっぱい溜めていたら、ジュリアス様にずいぶん叱られたんで、懲りたみたいですよ」

マルセルが言うのを、ゼフェルはジロリと横目でにらむ。

「余計なこと言うんじゃねー」

「いいじゃない、ホントのことでしょ」

マルセルが屈託無く笑う。
ゼフェルは「チェッ」とつぶやいて、堅焼きせんべいに噛り付いた。

「まあ、それは置いといて、せっかく来たんだし、あんたたちもルヴァから何か問題でも出してもらったらどう？」

まだクスクス笑いながらオリヴィエが言った。

「どういう話の展開だよ、それは。ルヴァも喜んで問題考え始めるんじゃねー」

ゼフェルが慌てて止める。

「え、いけませんかぁ」

少し寂しそうにルヴァがつぶやいた。

「ああ、いけねー。その代わり、こっちから問題出してやっから解いてみな」

意外なゼフェルの言葉に、ルヴァはびっくりしてゼフェルを見る。
オリヴィエとリュミエールは思わず顔を見合わせてから、ゼフェルに注目する。
マルセルとランディも同じように顔を見合わせてからゼフェルに視線を移した。

「何だよ」

「いや、さすがにルヴァの愛弟子だなぁと思って感心したよ」

オリヴィエがクスクスと笑う。

「そんなんじゃねーよ。で、解くのか解かねーのかどっちだ」

「解きますよ、もちろん。問題を聞かせてください」

ルヴァが待ち遠しそうにゼフェルを急かす。
そんなルヴァを、皆微笑ましく眺めていた。

「よし、じゃあ言うぞ。オリヴィエとリュミエールも頑張って解いてみな」

ゼフェルは得意げに話し始める。

「俺とランディはこの間、じゃんけんで、勝ったらその手によって何歩か進むというルールで競走した。
今からいうヒントで、１０回勝負をした後、どっちが何歩勝ったかあててみな。
もちろん、２人が出した手も１０回分全部答えるんだぞ」

「ああ、そんな遊び小さい頃やったねぇ」

「ええ、わたくしもやった覚えがあります」

「懐かしそうに話してんじゃねー。ヒント言うぞ」

ゼフェルはオリヴィエとリュミエールをジロリと見てから話を続けた。

「ルールはこうだ。
グーで勝ったら３歩、チョキで勝ったら５歩、パーで勝ったら６歩進む。
あいこなら進まない。
で、こんなふうだった。

１　４回目が終わったとき、俺は合計１４歩進んでいた。
２　６回目が終わったとき、初めてランディの合計歩数が俺を抜いた。
３　２人の間が９歩以上離れたことはなかった。
４　俺はチョキを４連続で出した直後にパーを出した。
５　ランディはパーやチョキよりグーを多く出した。
６　ランディはパーを連続で出したことはなかった。
７　あいこは２回あったけど、連続はしてない。

これだけだ。さあ、わかるか」

ゼフェルはにんまりと笑って大人たちを見回した。
ルヴァは「あ～面白い問題ですね～」と微笑んで頷いている。
オリヴィエとリュミエールはメモ用紙にあれこれ試行錯誤をしながら真面目に取り組んでいた。

「早く解けよ」

ゼフェルがルヴァを促す。

「はぁ…」

微笑みながら、ルヴァは、もうすでに解けてしまったことを言ったものかどうか考えていた。

　　　問：１０回分の２人の出した手と、勝負の結果を答えてください。

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