Q1

「お茶のお代わりはいかがですか～」

ルヴァがのんびりした声で尋ねる。
地の執務室は、今日も穏やかなお茶会の午後となっていた。

「ありがとうございます」

リュミエールが微笑んでカップを差し出す。

「お茶のお代わりも嬉しいけど…」

カップを差し出しながら、オリヴィエが目の前の菓子器を指す。

「こっちは、もうお代わりはないのかな？」

「すみません。それはもうそれっきりなんですよ…」

すまなそうにルヴァが答えた。

「そっか残念…」

オリヴィエは菓子器に残った最後の甘納豆を摘み取る。

「何か別のお菓子を探しましょうか…」

ルヴァはパタパタと控え室に走っていった。

「ところで、オスカー、あんたずいぶん疲れてるみたいだねぇ。夜遊びが過ぎるんじゃないの？」

オリヴィエの言葉に、ルヴァとリュミエールもオスカーに注目した。
確かに、疲れているように見える。

「バカ言え。夜遊びしてる暇なんかあるか…」

「何それ…。じゃあなんでそんなに疲れてるのさ」

「うん…」

答えるのも面倒だというように、オスカーはゆっくりとオリヴィエを見た。

「この間、ジュリアス様に呼ばれてな、そろそろ年度末だから、視察の報告書とか、いろいろなレポートとか、未提出になっているものを至急提出するよう言われたんだ…」

「なるほど。それで必死になってるってわけか。でも、あんた、視察のときはいつもルヴァに報告書書いてもらってるじゃない。それが未提出ってのはどういうこと？」

「だって、ルヴァの筆跡のまま提出するわけにはいかないじゃないか」

「ただ書き写すだけのことも出来てなかったわけ？」

「いや…最近忙しかったし…つい…」

「呆れたねぇ…。そりゃ疲れるのも自業自得か。ま、頑張りな」

「手書きでお渡ししないで、プリントアウトすればよかったですねぇ。オスカー、すみません」

すまなそうにルヴァが言うのを、オリヴィエが制止する。

「ルヴァ、甘やかしちゃいけないって。内容は全部書いてもらってるんだから、せめて書き写しでもしなかったらこいつのやることなんにも無いじゃない」

「そうですね。オスカーだって書き写すくらいのことはできるでしょうし…」

オリヴィエに続いて、リュミエールもさらりとオスカーを攻撃する。
オスカーは「なんだよ、２人とも…」と口の中でつぶやいた。

「仕方がないですね。オスカー、お茶を飲んで一休みしたら、また頑張ってください」

苦笑を浮かべて、ルヴァが言った。

「早く片付けて元気を回復しておかないと、明日あたりまた忙しいことになりますからね」

「何？　明日何かあるの？」

ルヴァの言葉を聞きとがめてオリヴィエが尋ねた。

「ええ。先日の会議で出てましたβ-４-７星系の件ですけれど、少し進展がありましたから、明日くらいにはサクリアの調整が必要になると思います」

「そうなんだ」

オリヴィエが少し驚いたようにルヴァを

「ええ、さっき研究院に行って検討してきました」

「で、どのサクリアが必要になるの？」

「とりあえずは、光と闇、それから水と炎ですね」

リュミエールが反射的にルヴァを見た。

「水もですか」

「はい。４つのサクリアを順に送って、その後、様子を見ながら残りのサクリアの扱いを決めていきます」

「順、といいますと、ジュリアス様からでしょうか」

「さあ、どうでしょう…」

何かを思いついたらしく、ルヴァはにっこりと笑った。

「せっかくですから、１番初めにサクリアを送るのは誰なのか考えてみませんか」

「おや、問題にするつもり？」

「ええ。お２人には手ごろな問題になると思いますけど…」

「２人？」

訝しそうなオリヴィエに、リュミエールはオスカーの様子に注意を促す。
見ると、オスカーはソファの背にもたれてすっかり寝入っていた。

「なるほど」

オリヴィエはクスッと笑って肩をすくめると、ルヴァの方に向き直った。

「いいよ、２人で考えるようじゃない。問題言ってよ」」

「ええ、じゃあ考えてくださいね。

光と闇と水と炎のサクリアを送る順番はこんなふうです。

１　ジュリアス（光）は１番目ではありません。そして、ジュリアスが２番目でなかったら、リュミエール（水）は１番目ではありません。

２　リュミエールが３番目でなかったら、クラヴィス（闇）は４番目ではありません。

３　クラヴィスが３番目だったなら、オスカー（炎）はジュリアスよりも早い順番となります。

４　リュミエールはクラヴィスより早い順番になります。

さて、では１番目にサクリアを送るのは誰か、わかりますか？」

オリヴィエとリュミエールが真剣に考えているのを、ルヴァは楽しそうに眺めていた。
オスカーはまだぐっすりと眠っている。

　　　問：１番目にサクリアを送るのは誰でしょう。どう考えたかも書いてくださいね。