Q2



「まったく、ルヴァは一筋縄じゃあいかないねぇ。マルセル、あんたがルヴァの域に達するにはまだまだ精進が必要なようだよ」

オリヴィエが楽しそうにささやくと、マルセルはクスクスと笑った。

「オリヴィエ様、ルヴァ様のようになれるなんて、僕、思ってませんよ」

「よろしいではありませんか、マルセル。あなたが面白いと思える範囲で、ルヴァ様のようにパズルを楽しんでいけば。時々問題を出してあげれば、ゼフェルやランディも楽しめると思いますよ」

リュミエールが優しく微笑む。

「はい、そうですね。僕が面白いと思ったものはゼフェルやランディにも楽しんでもらえるようにします」

マルセルが笑顔で答える。
聞きつけたゼフェルが「げっ」という顔になる。

「マルセル、妙なことを考えんじゃねーぞ。おめーがルヴァみてーになったら、俺は口聞かねーかんな」

「ゼフェル、私みたいになったらって、それ、どういうことなんですか」

ルヴァが情けない声を出す。
楽しげな笑い声が皆から起こった。



「よう、今日も賑やかだな」

陽気な声がして、オスカーが姿を現す。

「オスカー、いらっしゃい。どうぞ、座ってください」

「ああ。あ、これ、うちの温室で咲いてたから」

「きれいですねぇ。ありがとうございます」

手渡された薔薇の花束を抱えて、ルヴァは花瓶を探しに部屋を出ていった。
オスカーはお気に入りのソファに腰をおろして、周りを見回す。

「盛り上がっていたようだが、何の話をしていたんだ？」

「ん〜、聞かない方がいいと思うよぉ〜」

オリヴィエがからかうような口調で言った。

「なんだよ、それ」

「あなたの苦手な話題ですよ」

リュミエールが笑いながら、お茶を勧める。

「俺の苦手な話題って、まさかアレか？」

怖々と確認するオスカーに、オリヴィエは真面目な表情を作って「そうだよ」とうなずいた。

「俺、帰ろうかな…」

「子供たちの前で情けないこと言うんじゃないよ。それに…」

「それに？」

「もう遅いよ。ルヴァが戻ってきた」

オリヴィエに促されて振り向くと、嬉しそうにやってくるルヴァが目に入った。
花瓶に飾られた薔薇を抱えている。
駆け寄ったリュミエールが、花瓶を受け取ってサイドテーブルの上に飾る。



「今朝、ジュリアス様と遠乗りに行ったんだが、その時にな…」

お茶を飲みながら、別の話題に持っていこうと、オスカーはいろいろな話を持ち出す。
どの話もルヴァの興味を引いたようで、少年たちも巻き込んで話は弾んだ。

「オスカーのヤツ、必死だね」

「ええ、頑張ってますね」

オリヴィエとリュミエールはそっとささやき合って小さく笑った。




陽がだいぶん傾いてきた。
少し前に少年たちは帰ってゆき、大人たちは、午後のお茶を楽しみながら、アルコールに移行するのはまだ早いな、などと考えていた。

「明日もお休みですから、今日は皆さんゆっくりしていってくださるでしょう？」

ルヴァは微笑んで３人の中堅守護聖を見渡す。

「うん、いいよ」

オリヴィエが即答しながらリュミエールに「ね」と笑いかける。
「ええ」とリュミエールも微笑んだ。

「で、ディナーの後には当然アルコールタイムだろ。ルヴァのとこにはいい酒がコレクションしてあるからな、期待してるぜ」

オスカーが嬉しそうに笑った。

「アルコールですか？」

そう言って、ルヴァはフフッと笑った。

「何だよ、何笑ってるんだ」

どこか怖々といった風情でオスカーが尋ねる。
ルヴァはオスカーを見てもう１度フフフッと笑った。

「何だよ」

「カティスが整えていってくれたお取っときをお出ししてもいいですよ」

「ホントか！」

オスカーの目が輝く。

「ええ。今から言う問題に正解してくださったら、ですけどね」

「それはないぜ、ルヴァ〜」

期待が一気に失望に転じたように、オスカーは元気がなくなる。
それが面白いとオリヴィエは声をあげて笑った。

「頑張ってくださいね、オスカー」

「ルヴァ、まさかもう酔ってるわけじゃ…ない、よな？」

疑わしそうに、オスカーはルヴァを覗き込む。
ルヴァはただクスクスと笑っていた。
オリヴィエとリュミエールは目を見合わせて笑いながら、軽く肩をすくめる。


「じゃあ問題を出しますよ、いいですか」

「ああ、いいぜ」

覚悟を決めたようにオスカーが答える。
ルヴァは満足気にうなずいて、話を始めた。

「ここに１つの村があって、村人たちはアルコールが大好きです。
オスカー、あなたみたいにね。
さて、
１）村人の９０％はワインを飲みます。
２）村人の８０％はビールを飲みます
３）村人の７０％はウィスキーを飲みます。
４）村人の６０％はブランデーを飲みます。
５）この４種類のアルコールを全部飲む人はいませんし、これ以外のアルコールを飲む人もいません。
では、この村の村人の少なくとも何％の人がアルコールを飲むでしょうか。
もちろん、アルコールを飲んでもいい成人だけを対象にしています。
未成年は数に入っていませんからね。

さあ、オスカー、答えてください」

「あ、ちょっと待ってくれ。えーと、ワインが９０％だろ…」


オスカーは一生懸命考え始めた。

「答えを出すのはディナーが始まるまでですからね」

ルヴァはまたフフッと笑った。
オリヴィエはリュミエールに「オスカーが無事答が出せるかどうか賭けない？」と持ちかけ、笑顔と共にやんわりと断られていた。
問：村人の少なくとも何％がアルコールを飲むでしょうか。
　　なぜそう言えるのかも説明してくださいね。
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