Ｑ１

「あぁ〜よくいらっしゃいました〜」
にこやかな笑顔でルヴァが客を出迎える。ルヴァの私邸でのお茶会にはいつもみんなお構い無しに訪れるけれど、今夜はちゃんと事前に出席の確認をとっての夕食会。「晩餐会なんて大げさなものじゃないですよ〜」とルヴァは笑っていた。
やってきた客は案内されてテーブルに着く。まぁ、毎度おなじみの顔触れであることに変わりはない。

「あ、こんにちは、リュミエール様、オリヴィエ様」
「こんにちは、マルセル」
「うーん、今日もお肌ピチピチだね、マルセルちゃん」
「何ですか、オリヴィエ様。僕もうお化粧されるのイヤですからね」
「大丈夫、何もしないから、怖がらないで隣おいで」
笑顔で招かれて、マルセルはまだ半信半疑で近付く。
「ホントに何もしません？」
「しない、しない。大丈夫だって」真剣にオリヴィエが言う。（とりあえず、今はね）という言葉は口には出さない。
「それなら…いいんですけど…」マルセルはそっと席に着く。
「あの、ゼフェルはランディを誘って一緒にくるっていうんで、僕一足早く来たんですけど…」言いながら周りを見回す。空席がまだいくつかある。
「皆さんが揃うまで、お茶でも飲んで待っててくださいね〜」
ルヴァがすまなさそうに言うのに、３人とも笑顔で頷いて、いつものようにあれこれと雑談を楽しむ。

遠くから何か排気音のような音が近付いてきていた。
「ん？何か聞こえない？」
「…あぁ、エアバイクの音ですよオリヴィエ様。ゼフェルったら乗ってきたんだ」
言われてみれば確かにゼフェルのエアバイクの音だった。だんだん小さくなって停止するかと思った途端、再び排気音は大きくなり、地面に突っ込んだ大きな音がして、静かになった。
ルヴァが慌てて飛び出してゆく。３人も後に続いた。

「バッカヤロー。急にしがみつくヤツがあるか。思わずスロットル握っちまっただろーがっ」
「地面に近付いた時ふらついたじゃないか。俺、落ちるかと思ったんだよっ」
「何を！俺の運転技術をバカにするのか！だいたいてめーが身支度なんてもんにもたもたしてやがるからスピード出さないと間に合わねーよーになっちまったんだろーが！」
「身支度って、ゼフェルが構わなさ過ぎるんだろ！ルヴァ様のご招待なのにそんな作業着みたいな恰好で…」
「悪かったなっ！俺は鋼の守護聖なんだから、これが一番のカッコーなんだよっ！」
「何わけわかんない理屈言ってるんだ！」
ルヴァたちが駆けつけた時、ゼフェルとランディは花壇の中に座り込んで言い争っていた。その脇にエアバイクが横たわっている。これだけ元気なら、怪我は無さそうだ、と誰もが思った。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いてください。怪我はありませんか。」
声を掛けられて、初めて二人は周りで見詰める目に気付いた。
「あ、すみません、ルヴァ様…」
「ルヴァ…その…せっかくの花壇…悪ィ」
「あなたたちに怪我が無ければそれでいいですよ。どこか痛いところはないですか」
「いや、別にどこもなんともねーよ」
「俺も、大丈夫です」
「そうですか。じゃあ、手と顔を洗ってらっしゃい。なんならシャワーを浴びてきてもいいですよ」
「あ、あぁ。すまねーな。ほら、ランディ野郎、行くぞ」
「うん。ルヴァ様、すみません」
「構わないですよ、ランディ。ゼフェルはいつものことですから」
「うっせーな。もたもたしてると置いてくぜ」
「あ、待てよ、ゼフェル！」
今事故ったとは思えない勢いで二人は走り出した。マルセルが後を追って走ってゆく。
やれやれといった面持ちで大人たちは館に向かった。

シャワーを浴びた顔にも腕にも擦り傷だらけの２人を加えて、食事会は始まった。

「あれ？まだ席空いてるじゃん。誰かまだくるんか？」
「えぇ、あと一人。少し遅れるから先に始めていてほしいと連絡がありましたから」
「ふ〜ん」
ゼフェルはテーブルに着いている顔触れを見回した。
「いないのはジュリアス、クラヴィス、オスカーの３人か…。ルヴァ、誰なんだ？」
「さぁ、誰なんでしょうね」
「はぁ？なんだよ、それ…」
「リュミエールとオリヴィエは知ってますからね、あなたたち３人で予想してごらんなさい」
３人の少年たちは顔を見合わせた。
「う〜ん、そうだな、俺は…オスカー様じゃないと思う…」
「僕はねー、ジュリアス様かクラヴィス様のどちらかだと思うよ」
「俺ァ…ジュリアスだと思う…」
３人がそれぞれに意見を言ったところで、にっこりと笑ってルヴァが言った。
「あ〜、あなたたちの予想は…そうですねぇ、少なくとも一つは正しいですが、少なくとも一つは間違ってます。さぁ、これであと一人がどなたなのか分かりましたね」
え、これだけで分かるのか…と３人は再び顔を見合わせる。
しばらく考えるような時間が流れて…
「あぁ！」と頷いたり、首をひねったままだったりする少年たちを、面白そうに眺めながら、大人たちは食事を楽しんでいた。
問：遅れてくるもう一人とは誰でしょう？
　名前と、そう判断する理由を簡単に説明してください。

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