こんな夜… ２００２．７．１
深い眠りの淵から、何ということもなく、不意にルヴァは浮上した。 まだ夜明けまでは間がありそうに、辺りは静まり返っている。 もう一度眠ろうとして、ルヴァは「おや」と思った。 自分の横には、ルヴァを抱きかかえるようにしてリュミエールが眠っていて、 そのリュミエールの右の手のひらが、ルヴァの胸に置かれていた。 眠ってしまったまま、ただ置かれている手のひらは、胸の上でじんわりと重い。 気にしなければそれまでのことなのに、ルヴァはその存在を妙に意識してしまった。 剥き出しの胸に触れる手のひらが、次第に熱を帯びてくるように感じられる。 何の意志も持たず、ただそこにある手のひらの下で、ルヴァの身体は少しずつ変化し始めていた。 どうして…どうしてこんな… 微かに寝息を立てて眠り込んでいるリュミエールの横で、どんどん熱くなってゆく身体を、ルヴァは持て余していた。 手のひらの重さに押されて、胸の頂上が硬く張り詰めてくるのがわかる。 うろたえて身じろぎをすると、張り詰めて鋭敏になっている頂点が手のひらに擦れて、胸の奥まで衝撃が突き抜ける。 「…っ！」 思わずあがりかけた声をぐっとこらえる。 息を詰めながら横を見ると、リュミエールは相変わらず安らかに眠っている。 美しい寝顔がこちらを向いて至近距離にあった。 身体の奥でますます熱が高まってゆく。ルヴァは目を閉じて切なげな吐息を漏らした。 どうしましょう… 僅かに潤んだ目を開けると、リュミエールの気持ち良さそうな寝顔が見える。 見ているうちに、なんだかルヴァはリュミエールが恨めしくなってきた。 私がこんなになってるのに、どうしてあなたは平然と眠ってるんです… ちょっと睨んでみる。もちろんリュミエールは気が付かない。 私一人だけがこんな気持ちになってるなんて、不公平じゃありませんか。 拗ねたような眼差しでリュミエールを見詰める。 絶対、不公平です。あなたもちょっとは悩んでください。 ルヴァはそっとリュミエールの腕を外す。 胸の奥にズンと衝撃がきたけれども、すでにリュミエールに仕返しすることにむきになっているルヴァは、グッと耐えた。 ゆっくりと手を伸ばし、リュミエールの唇に微かに触れる。 指先で、そうっとそうっと唇をなぞってゆく。 リュミエールが微かに身じろぎした。 ルヴァは動きを止めて、じっと息を潜める。 リュミエールは「…ん…」と軽く寝返りを打った。 ルヴァの方を向いていた身体が少し上向きになると、目の前から唇が消え、形の良い耳が現れる。 リュミエールがそれ以上動かないのを確かめると、ルヴァはそっと身を乗り出してリュミエールの耳朶に舌を這わせた。 「…ん…」とリュミエールの唇から息が漏れる。 ルヴァはゆっくりとリュミエールの中心に向かって手を滑らしていく。 昨夜もルヴァを何度も絶頂まで押し上げた猛々しいものが、今はおとなしく眠っている。 微かに微かになでていく。僅かに形を変えるほどに刺激して、手を引く。 そしてルヴァはそのまま寝たふりをする… 意識だけは痛いほどに張り詰めてリュミエールの動静を伺いながら、素知らぬ顔で寝たふりを続けていた。 「…んん…ルヴァ…様…」 リュミエールは半ば寝ぼけているようだったが、しばらくするとはっきり目を覚ました。 ルヴァが眠っているのを見て、「おや」といぶかしそうにしているのが伝わってきて、ルヴァはちょっと楽しくなった。 寝返りを打ってもう一度寝ようとしたリュミエールが、ややあって悩ましげなため息をついた。 リュミエール、どうです、眠れないでしょう… ルヴァはもう少しで会心の笑みを浮かべるところだった。 急いで気を引き締め、寝たふりを続ける。 リュミエールはまだ落ち着かないようだ。戸惑っているのがよく伝わってくる。 満足したルヴァは、そろそろ寝直すことにした。 さて、朝になったらどうしましょうか。 森の湖にでも行ってみるのもいいかもしれませんねぇ… などと考えながら眠ろうとしたルヴァは、突然抱き締められて驚いた。 リュッ、リュミエール… 心臓が高鳴る… リュミエールが素直に気持ちを表してくれるのは嬉しい。 でも、すぐに応えるのはやっぱりちょっと癪だから、まだ寝たふりを続けることにする。 「ルヴァ様…」 リュミエールはそっとささやいてルヴァに口付けを送る。 しなやかな指先がルヴァの身体のここかしこに愛撫を加えてゆく。 気のせいだろうか、リュミエールの口付けも愛撫も、いつもよりいっそう甘く激しくルヴァを攻め立てている。 反応しないように寝たふりを続けるのがだんだん辛くなってくる。 そろそろ目を覚まそうか…と思った矢先、リュミエールが耳元でそっとささやいた… 「ルヴァ様、いつまで寝たふりを続けるおつもりですか」 ズバリと言われてルヴァは「あっ」と思ったが、ここで目を開けるのはいささか体裁が悪い。 「そうですか。こんなにしてもまだ目が覚めないほど熟睡していらっしゃるんですね」 目を閉じているのに、なぜだかリュミエールがにっこりと笑ったのがわかった。 「それでは…このようにしても大丈夫なのでしょうか…」 リュミエールの唇がルヴァの唇をかすめ、首筋をたどって胸元に下りてゆく。 胸の頂上で既に硬く立ち上がっている突起を口に含んで舌先で転がす。 ルヴァは思わず「…ぁ」と声を上げた。 「ルヴァ様、眠っていらっしゃるのでしょう」 面白そうに言うと、リュミエールは反対側の胸に唇を寄せる。 舌先で強くはじかれて、ルヴァはビクッと身をよじる。 「ルヴァ様」 からかうような声に、ルヴァは目を開けて切なそうにリュミエールを見詰めた。 「リュミエール…意地悪しないでください…」 「わたくしが…何かいたしましたか」 「何かって…あの…」 「そもそも、わたくしに悪戯を仕掛けて寝たふりをしていらっしゃったのはどなたです」 「だって、あれはあなたが…」 「え？」 「…いえ、何でもないです…」 「何でもなくはないでしょう。…ルヴァ様、さあ、どうしてあんなことをなさったのか、おっしゃってください」 「でも…」 口ごもるルヴァに、リュミエールはクスリと笑った。 「そうですか。わかりました。ではもう何も申しません。どうぞ朝までゆっくりとおやすみになってください」 そう言いながらリュミエールは、ルヴァの身体に指先を滑らせる。首筋から胸元へ。胸元をさまよって更に下へ。 ルヴァの中心にたどりついた指先は、やんわりと包み込むと、すぐにまた上へと這い上がってくる。 上から下へ、下から上へ。リュミエールの指先はルヴァの身体を繰り返し繰り返し何度も往復する。 さわさわと、中途半端な刺激が波のようにやってきて、それでいて決定的な快感は与えられない… 「…リュミエール…」 ルヴァは切なさに身悶える。 涙に潤んだ目で訴えられて、リュミエールはすぐに陥落した。 リュミエールももうこれ以上耐えられない段階まで昂ぶっていた。 「ルヴァ様…」 見詰め合って口付ける。 そそがれる愛情を、今度はルヴァもちゃんと受け止めてしっかりと応える。 もどかしさを振り払うように、いつしかルヴァの方から激しく求めていた。 熱く情熱的な口付けが何度も何度も交わされる。 「…ん…んんっ…ぁ…ぁあっ…」 「…ルヴァ様…よろしいですか…」 「リュミ…エール…もう…もう…ぁぁぁっ…」 リュミエールはぐっと身体を進めてルヴァと一つになる。 ２人の身体の奥でくすぶっていた昨夜の余韻が、再び大きく燃え上がる。 激しい快感のうねりが２人を大きく包み込んで、奔流となって走り抜ける… リュミエールの腕の中で、ルヴァは静かに眠っている。 そのまなじりに涙が溢れているのをそっと指先でぬぐって、リュミエールは優しく微笑みかける。 「ルヴァ様…今夜のあなたは、いったいどうなさったんでしょうね…」 ルヴァの頬に小さく口付けると、リュミエールも眠りに付いた。 外には、そろそろ朝の気配が漂い始めている… END |
| あははは… なんというか…ソレしかないお話です（＾＾ゞ 唐突にこういうものが書きたくなるときが、時々やってきます。やってきたら素直に従って書いてしまいます（笑） この二人も、たまには、というよりしょっちゅうかもしれませんが、こんなふうに戯れることもありますでしょ、きっと…（笑） １８禁だ、というほどのモノでもありませんでしたね。 えぇ、どうやってもぬるいモノしか書けません（*＾-＾*） |