「こちらへどうぞ」と招じ入れられたのは、ゼフェルの私室だった。 いかにも「機械好きの男の子の部屋」といったたたずまいに、リュミエールは思わず周りを見回す。 見ると、ゼフェルは床の上にあぐらをかいて、メカの組み立てに取り組んでいた。 「ゼフェル…突然申し訳ありません。あの…ルヴァ様がどこにいらっしゃるかをご存じではありませんか…」 「あ…あぁ…リュミエールか…」 ゼフェルが立ち上がって、大小の部品の山を乗り越え、リュミエールの方にやってくる。 「すれ違っちまったんだな。俺のせーかもしんねー。すまねーな」 「え…？」 「いや、俺、ルヴァに頼まれてるモノがあったんだけど、出来上がるのが遅くなっちまって…。後で届けてやるって言ったのに、ルヴァのヤツ、それじゃ落ち着かないからって、さっきまでそこで出来上がるの待ってたんだ」 「はぁ…」 リュミエールにはゼフェルの言う内容がよくわからなかった。 とにかくルヴァはさっきまでここにいたらしい。 で、今は…？ 「出来上がった途端にヒトにラッピングさせやがって、急いで出掛けていったぜ」 ゼフェルは言葉を切り、リュミエールを見てニッと笑った。 「あんたンとこへな」 「わたくしのところへ…」 「あぁ。なんてーか、俺が頼まれたのはあんたへのプレゼントなんだそーだ。嬉しそうにそう言ってた。包みを開けたときのあんたの反応が楽しみだってな」 「わたくしはルヴァ様を探して…ずっと歩き回っていました…」 「俺がもっと早くに渡してたらよかったんだが…。すまねーな」 「いぃえ。…あの、わたくし…すぐに帰ります。ゼフェル、お邪魔しました」 「あぁ。ルヴァによろしくな」 「はい…」 挨拶を交わすのもそこそこに、リュミエールは鋼の館を後にする。 御者に、出来る限り急ぐようにと指示して馬車に乗った。 　　　ルヴァ様…今参りますから…待っていてくださいね… ルヴァが、待ちくたびれて帰ったりしていないように、リュミエールはただひたすら祈っていた。 　　　　　【　Ｅ　Ｎ　Ｄ　】