「あの…オスカー…やはりわたくしは１人で探すことにします…」 「そうか。馬車返しちまったんだろ。大丈夫か」 「えぇ。散策路の方に行ってみようと思いますので…」 「あぁ、そっちなら歩いてった方がいいな。じゃあ、気を付けてな」 オスカーはつないであった馬を引き出して、軽やかにまたがり、リュミエールに「じゃあな」と笑顔を向けると、一気に馬を走らせて行った。 さて…とリュミエールは歩き始める。 もうずいぶん夜も更けてきた。 ルヴァはいったいどこにいるのだろう… 聖殿に通じる、緑豊かな小径は、守護聖たちが時に散策をするのにふさわしい、安らげる空間だった。 　　　まさか、こんな時刻に散策などはしていらっしゃらないでしょうけれどね… リュミエールは小径に沿って歩いていった。 ルヴァのことで頭はいっぱいなのに、それでも、昼間とは趣を異にする夜の散策路は楽しかった。頬をなでてゆく夜風は心地好かった。 　　　今度、ルヴァ様と一緒に夜の散策をしてみましょう… 僅かに微笑んだリュミエールは、ふと、前方の暗がりに目を遣った。 闇に紛れて定かではないが、確かに誰かいる。 　　　もしや… 予感めいた期待と共に、リュミエールは足を速める。 近付いてゆくにつれて、人影は次第にはっきりしてくる。 ルヴァではなかった。 「オスカー！」 「よう、リュミエール、遅かったな」 「あなた、どうしてここへ…」 「ん？　いや…なんだかもうルヴァを探す気になれなくて…」 すでに、その表情まではっきりとわかるところまで近付いたオスカーは、リュミエールに向かってニヤリと笑った。 「なぁ、もうルヴァ探すのやめて、酒飲もうぜ」 「オスカー…別にあなたがやめるのは構いませんが…」 私を巻き込まないでも…と言うより先に、オスカーにしっかりと利き腕を取られていた。 「ずっと一緒に探してたから、なんだか俺だけやめるのが申し訳ないような気がするんだ」 「申し訳なくなんてないです。オスカー放してください」 「一緒にオリヴィエんとこ押しかけて、飲み明かそうぜ」 「オスカー、放してくださいってば…」 振り放そうとしても、オスカーは巧みにリュミエールの腕をつかんでいて、力を入れることが出来なかった。 「お前、ここんとこずっとルヴァのことばかりで、俺たちとの付き合い減ってるだろ」 オスカーはフッと笑うとリュミエールを抱き上げた。 「同期の付き合いは大切にしないとな。ということで、今夜は３人で飲み明かそうぜ」 「オスカー！！」 「暴れると落ちるぞ」 落とされそうになって、反射的にリュミエールはオスカーにしがみついた。 「そうそう。そうやって俺にしがみついててくれ」 オスカーは面白そうに笑って、ゆっくりと歩き出す。 「そんな…」 リュミエールは呆然として抱かれていた。 　　　ルヴァ様… 　　　　　【　Ｅ　Ｎ　Ｄ　】