「もう少し探してみましょうか」 「そうだな。次はどこを探す？」 「森の湖…などには行ってらっしゃらないでしょうね…」 「森か…行ってみるか」 「まさかいらっしゃらないとは思いますが…」 「ま、ものは試しだ。行ってみようぜ」 「…えぇ」 ２人はまた馬に乗って森を目指していった。 森の中の小径を馬を走らせていく。 木の葉越しに月明かりが差し込んできていて、進むにつれて明と暗とに交互に包まれる。 馬の背に揺られながら、妙に現実離れした不思議な感覚を、リュミエールは感じていた。 「妙な感じだな」 「え？」 「夜の森を馬で走るのが初めてってわけじゃないが…」 オスカーはリュミエールを見て、微かに微笑んだ。 「今夜はなんだか夢の中にいるような、妙な感じがする」 「…わたくしも…今、同じように感じていました…。不思議な夜ですね…」 「そうだな…。まさかお前と一緒にいるからじゃないよな」 「まさか…」 「そうだよな」 オスカーは２、３度首を振ると、馬を急がせる。 森の中にも、湖の周囲にも、ルヴァの姿は見えなかった。 「…やはり…いらっしゃいませんね…」 「あぁ、いないようだな…」 オスカーは辺りを見回しながら言った。 「ルヴァ様…どこへ行かれたのでしょう…」 「俺、もういいわ」 「はい？」 「月の曜日に確認して片付ければ済むし…」 「そうですか…」 　　　でも、わたくしはルヴァ様を探し出して、お逢いしたいです… 「なぁ、オリヴィエんとこ行って酒飲もうぜ」 「え？」 「な、そうしよう。一晩中、飲み明かそうぜ」 リュミエールの返事を待たずに馬の向きを変えて走り出させる。 「あ、あのっ、オスカー」 「３人で飲むのは久し振りだな」 「オスカー…」 「ん、何だ？　それとも俺と２人で飲む方がいいか」 「違います、わたくしは…」 「あいつが遊びに出る前につかまえないといかんな。さぁ、急ぐぞ。しっかりつかまってろよ」 「オスカー…あっ」 馬が大きく跳ねて、リュミエールは慌ててオスカーにしがみつく。 「そうそう。離すなよ」 オスカーは笑いながら馬を操る。 振り落とされないようにオスカーにしがみつきながら、リュミエールは泣きたいような気持ちになっていた。 　　　ルヴァ様…今夜はもうお逢い出来ないことになりそうです… リュミエールのため息をよそに、馬は軽やかに森を駆け抜け、夢の館に向かって走っていった。 　　　【　Ｅ　Ｎ　Ｄ　】