馬車が王立研究院に着いた。 車寄せにはルヴァの馬車の姿はなかった。 　　ここにはいらっしゃらないようですね。 念の為に何人かの研究員に聞いてみたが、ルヴァの来訪は無く、また所在を知っている者も無かった。 リュミエールはがっかりして馬車に戻った。 馬車を出して、ふと振り返ると１台の馬車が研究院の門をくぐるのが見えた。 　　もしかして… リュミエールは馬車を戻すよう命じる。 馬車が研究院に戻ると、研究院の建物の傍に人影が見えた。 夜の風を受けて、ターバンの端がそよいでいる。 リュミエールは馬車から飛び出して叫んだ。 「ルヴァ様っ！！」 前方の人影が、立ち止まって、こちらを振り返る。 リュミエールは走り寄る。 「リュミエールじゃありませんか。どうしたんです」 驚いたようにルヴァが言った。 「ルヴァ様っ」 近付いたリュミエールは、ルヴァを強く抱き締めた。 「リュミエール、どうしたんです。そんなにしたら苦しいですよ」 「ルヴァ様…」 ちょっと恨めしそうに、リュミエールは身を離した。 ｢ルヴァ様が突然いなくなってしまわれたので、お探ししておりましたのですが…」 「え、あの…今日は片付けなければならない雑事が多いので、それを済ませたらすぐに、あなたの館へお伺いしますって…あの…伝言がいきませんでしたか…」 「いぇ…なにも聞いておりませんが…」 「あぁ…それではすっかりあなたに心配を掛けてしまいましたねぇ…」 ルヴァはそっとリュミエールに身を寄せる。 「すみません、リュミエール…」 「いいぇ…いいぇ、ルヴァ様…」 リュミエールはルヴァを抱き締めて耳元でささやく。 「こうしてお逢い出来ましたから…もう、それで充分です」 「リュミエール…」 「それで、ルヴァ様、ご用はもうお済みですか」 「えぇ。ここが最後です。確認事項がいくつかあるだけですから、そんなに時間はかからないでしょう。それですべて終了です」 「では、このままわたくしの館まで来てくださいますか」 「えぇ…あなたが、よろしければ…」 「ルヴァ様…」 ２人は軽く口付けを交わす。 「では、急いで済ませてきますね」 「えぇ、ここでお待ちしています」 もう一度口付けを交わして、リュミエールはルヴァを見送る。 しばらくしたら、用事を済ませたルヴァが戻ってくる。 少しでも早くリュミエールの元に来ようと、小走りになるルヴァの姿が目に浮かぶ。 頬を紅潮させてやってくるルヴァを抱きとめて、抱き締めて、その頬に口付けをして… 館へ戻ったら、朝までゆっくりと愛し合おう… ルヴァを探して回ったあれこれを話して、２人で笑い合おう… ルヴァを待つリュミエールの顔は、幸せそうに微笑んでいた… 　　　【　Ｅ　Ｎ　Ｄ　】