リュミエールは逸る胸を抑えて、ゆっくりと階段を上っていった。 階段は淡い間接照明で照らされて、ほのかに明るい。 階段を上がって、一つ上の階に着いた時、覗き込んだフロアは暗いままだった。 リュミエールは更に階段を上っていく。 いくつかの階段を上っていって、微かに灯りの洩れるフロアに着いた。 　　ルヴァ様…ここにいらっしゃるのでしょうか… リュミエールはフロアに歩を進める。 灯りの位置を探りながら、書架を回りこんでいって、とうとう、机に向かう後ろ姿を見つけた。 スタンドの灯りの中にターバンをかぶった頭が浮かび上がっている。 　　ルヴァ様… リュミエールは足音をたてないように注意して、そっと近付く。 ルヴァの真後ろまで来ても、ルヴァは気が付いていない。 一心に本のページを繰り、ノートに書き込みをしているルヴァを、リュミエールは愛しそうに見詰める。 一段落付いたらしく、ルヴァがペンを置いて、ふぅと息をついた。 そのタイミングに合わせて、リュミエールがそっと後ろから抱き締める。 突然のことに、ルヴァは「ひゃぁっ！」と声を上げて、身を硬くしたが、続いて耳元でささやかれた「ルヴァ様…」という声に、嬉しそうに微笑んだ。 「リュミエール…」 肩越しに振り仰いだ、その口元に、軽い口付けを落とす。 「本当にびっくりしましたよ、リュミエール。心臓が止まるかと思いました」 ちょっと睨むようにして見詰める眼差しがあまりにも艶やかで、リュミエールは目が離せないでいる。 ｢申し訳ありません、ルヴァ様。やっとルヴァ様を見つけることが出来て、嬉しかったのでつい…」 「私を…見つける…って、あの…」 周りを見回して、ルヴァははっとした。 「え、あの…もうこんなに遅くなっていたんですか…。まだ宵の口だと思っていたのに…」 ルヴァは、すまなさそうな表情でリュミエールを見る。 「すみません、リュミエール…。ほんのちょっと調べ物をするつもりだったのに…。すぐ終わるからと思って、あなたに何の連絡もしないで来てしまいました。心配を掛けてしまいましたね」 リュミエールはいとおしそうにルヴァを抱き締める。 「いぃえ、こうして無事お目に掛かることが出来ましたから…わたくしはそれだけで充分です」 「リュミエール…」 強く抱き寄せて、深く口付ける。 「ルヴァ様、わたくしの館に、一緒に帰ってくださいますか」 「えぇ…リュミエール…」 微笑み合って、軽く口付けて。 書架に本を戻しノートやファイルをまとめて、帰り支度をするルヴァの姿を、リュミエールは微笑を浮かべて見守っていた。 これから始まる２人の週末を思い描きながら… 　　　　【　Ｅ　Ｎ　Ｄ　】