リュミエールが凝視する先で、ゆらり、と人影が動いたと思ったら、あっという間に近付いてきた。 「おぅ、ルヴァっ、いるか！」 「ゼフェル…」 「あっと…リュミエールか。…ルヴァ、いるか」 ずかずかっと部屋に入り込んできたゼフェルは、リュミエールに気が付いて、何かバツの悪そうな顔で訊ねた。 「いぇ…ルヴァ様がいらっしゃらないので、ここで待たせていただいているのですが…」 「そっか」 「あなたは…何かご用でしたか」 「いや…まぁ、用っちゃ用だけどよ…」 ゼフェルが、リュミエールを見ながらどうしようかと決めかねていたとき、ゼフェルの背後に勢いのいい足音が響いて、「ゼフェル、待てっ！」とランディが飛び込んできた。 続いて「ゼフェル、ランディ、待ってよぉ〜」とマルセルが現れる。 「あなたがた…いったいどうしたのです」 「あれ、リュミエール様…ルヴァ様は…」 マルセルが辺りを見回す。 「ルヴァ様はまだお帰りではないのです。わたくしもそれで待たせていただいているのですが…」 「そうなんですか…」 マルセルがほっとしたように息をつく。 「ルヴァ様、お留守なんですか。ゼフェル、残念だったな」 「うるせーや、ランディ野郎…」 「まぁ、とにかくお茶でも差し上げましょうか…」 リュミエールはお茶の支度を頼んで、少年たちに椅子を勧める。 「それで、どうしたというのです」 お茶とお菓子で少年たちが落ち着いたところで、リュミエールは訊ねた。 「ゼフェルがややこしい仕掛け作ってはルヴァ様に挑戦しているの、リュミエール様もご存じでしょう」 食べるのに夢中なランディやそっぽを向いているゼフェルを置いて、マルセルが話し始める。 「ゼフェルったら、さっきもすごい仕掛けを作ったからルヴァ様に挑戦しに行くって飛び出してったんです。今度は解いたとたんにびっくりするようなことが起こるぞって笑ってたから、僕たちルヴァ様に注意しなきゃぁって思って追い掛けてきたんです」 「そうでしたか」 「なんだよ、マルセル。俺ァそんな無茶なことしようってんじゃねーぞ」 「ゼフェルのやることはいつも無茶なんだよ」 「うっせーな、てめーは黙って食ってろ」 「あ〜もう、ゼフェルもランディもやめてよ…」 少年たちの騒ぎは賑やかに続いていく。 これでは、ルヴァが帰ってきても、静かな夜を過ごすというわけにはいかないだろう… 少年たちのやり取りを聞きながら、リュミエールはそっとため息をついた。 　　　【　Ｅ　Ｎ　Ｄ　】