ＨＰ開設４周年記念
雨の午後… ２００４．６．１２
休日の聖地は、珍しく雨模様だった。 外に向かって押し開けられた背の高いフランス窓の向こうには、見えるか見えないかの細い雨が音もなく降り続いている。 リュミエールは窓辺の床にいくつもクッションを集めた中に座り込んで、ぼうっと窓外の風景を眺めていた。 流れ込んでくる、少しひんやりとした空気は、微かに雨の香りを含んでいる。 ゆっくりと深呼吸したリュミエールは、気持ち良さそうに微笑んだ。 目に映るものも、耳に入る物音も、今日はすべてが柔らかくまろやかだった。 リュミエールは満足気に息をつくと、傍らに置いたハープを取り上げた。 しばし目を閉じて周りの空気に身を委ね、そうしてそっとハープを爪弾く。 指先の紡ぎ出す音も、今日はほんのりとくぐもって柔らかかった。 微笑みを浮かべて、リュミエールはハープを奏で始める。 優しい調べが、雨の中を流れていった。 心のままに引き続けていたリュミエールは、ふと、そっと背にもたれかかってきた微かな重みに気が付いた。 自然に笑顔となる。 声には出さず、唇だけが「ルヴァ様…」と言葉を綴った。 満ち足りた幸せを感じながら、リュミエールは静かにハープを弾き続けた。 やがて、旋律が空中に吸い込まれるようにして、演奏は終わった。 そのまま余韻を楽しんでいる間も、ルヴァはじっとリュミエールの背に身を寄せていた。 「…ルヴァ様…」 ささやくように呼び掛けると、ルヴァは黙ったまま、リュミエールの肩口に頭を摺り寄せてきた。 「どうなさいました…」 問い掛ける声に、ルヴァは応えない。 ただ黙って身を摺り寄せる。 リュミエールは嬉しそうな微笑みを浮かべる。 こんなふうにルヴァが甘えてくることなどめったにない。 朝から根を詰めていた調べ物が終わって、ホッとしているのだろうか…。 リュミエールは軽く首を振る。 理由などどうでもいい。 こうして、ルヴァが素直に甘えてきてくれていること以外、何も考える必要はない。 ただ、このひとときを二人で過ごすことの幸せを感じていればいい。 「ルヴァ様、どうなさったのです…」 わざと聞き返すと、ルヴァはイヤイヤをするように押し付けた頭を左右に振った。 「…え…？」 さらに聞き直すと、まだイヤイヤをしながら、両手でリュミエールの装束をつかんで身を寄せる。 肩越しに、愛しげな視線をルヴァに向けて、リュミエールはもう一度「ルヴァ様…」と声を掛けた。 ルヴァはリュミエールの方に顔を埋めるようにしている。 リュミエールはクスリと笑うと、ハープを脇に置き、ツィと身体をひねってルヴァを膝の上に抱きとめる。 ルヴァは「あ…」と声をあげて倒れこんできた。 向かい合うように身体の位置を整え、しっかりと抱き直す。 「ルヴァ様…愛しています…」 「リュミエール…」 「これまでも、これからも、わたくしはあなたをずっと愛します…」 「リュミエール…」 ルヴァは両手を伸ばしてリュミエールの身体を抱き寄せる。 抱き寄せられるまま、リュミエールは嬉しそうにルヴァに口付けた。 二人の想いが通じてから、もうどれほどの時が流れただろう。 長いようでもあり、まだほんの束の間のことのようにも感じる。 二人寄り添って、永遠の時を共に紡いでゆけたら…。 見詰め合う眼差しが、お互いに同じことを願っていることを伝え合う。 想いを籠めて、二人は口付けを交わした…。 窓の外では、まだ、煙るような雨が降り続いている。 すべてが柔らかくまろやかで優しい、そんな午後だった。 Ｅ Ｎ Ｄ |
|
サイトを立ち上げてから、もう４年になりました。 ただ、ただ、リュミ様とルヴァ様のお話を書きたい、ルヴァ様受けのお話を書きたい、という思いだけで、ここまで走ってきました。 肝心の６月１０日頃は何か気忙しくて、４周年だということをころりと忘れておりました。 従って記念企画など何も出来なかったんです（＾＾； でも、それではやっぱり寂しいかなぁ…と、急遽リュミルヴァの短い短いお話を書いてみました。たわいのないお話です（＾＾； どうぞ、これからもよろしくお付き合いくださいませ。 |
|