PARTY 　２００５．１２．２５

「あぁ、降ってきたねぇ」 華やかな声が楽しそうにそう言った。 振り返ると、ワイングラスを手にしたオリヴィエがいた。 その背後からは、賑やかなパーティーのざわめきが聞こえてくる。 ほんのりと酔いが回ったようなオリヴィエに向かって、ルヴァはふわりと微笑む。 「ええ、もう地面が白いですよ」 「朝までに積もりそうだね」 「ええ…」 オリヴィエは、テラスの手すりにもたれて外を見ているルヴァに歩み寄る。 「ホワイトクリスマス、か…。綺麗だよね〜」 「そうですね…」 「常春の聖地だって、やっぱり今日くらいはこんな天候がふさわしいかもね…」 フフッと笑って、オリヴィエは空を見上げる。 つられるように、ルヴァも視線を上げる。 真っ暗な空から白い雪がはらはらと舞い降りてくる。 美しい眺めだった…。 「パーティー、盛り上がってるよ」 オリヴィエがささやく。 「そのようですね…」 ルヴァもささやくように答える。 女王陛下主催のクリスマスパーティーは賑やかに続いているようだ。 「なんで、抜け出してこんなところにいるの？」 「さあ、どうしてでしょうね…」 ルヴァはクスッと笑った。 「あなたを待っていたのかもしれませんね…」 「おや…」 オリヴィエの片眉が上がる。 「この後、私の館で２人きりでクリスマスの夜を過ごすのに？」 「それとは別に、ですよ」 ルヴァはパーティーのざわめきの方に顔を向けて微笑む。 「パーティーの席でのあなたは、人を楽しませ、自分も目いっぱい楽しんでますけど…」 ルヴァは微笑んだまま、視線をオリヴィエに向ける。 「でもあなたは時々、パーティーの最中にフッとどこかへ行ってしまうことがあるでしょう」 「んー…まぁ、たまにね…」 「いわゆる群集の中の孤独、というのでもないでしょうけれど、賑やかな騒ぎからちょっとだけ離れたところにいることが好きなんじゃないですか？」 「理由なんて考えたこと無かったけど、そう…だね。みんなの楽しそうな騒ぎを外から聞いてるのが好きなのかもしれない。ずっと離れてるのはイヤだけれどね。少しの間、そんなふうにしてるのは、なんか気持ちが落ち着くみたいな感じがする」 「今夜はね、そんな…誰にも見せない、オリヴィエの素の顔が見てみたくなったんですよ」 「私の素の顔？」 「寂しがりやのクセに、時に孤独になりたがるあなたをね…」 ルヴァはクスクス笑う。 「…なんてね。ただ、外の風に当たりたくなっただけですよ」 「ルヴァ…」 オリヴィエは苦笑を漏らす。 「敵わないなぁ、あんたには。途中で姿が見えなくなったと思ったら、そんなこと考えてたなんて…」 「あははは…」 「そっと出てきたらルヴァがいたから、すっごい偶然！って喜んだんだけどさ…。なんか、ルヴァの思い通りに転がされてるみたいだね」 「そんなことないですよぉ」 「ま、いいわ。とにかく、こうしてパーティーの最中に２人でいられるんだから」 「オリヴィエ…」 「あ〜、こんなことなら、グラスもう１つ持ってくればよかった。補佐官殿秘蔵のカティスのワインなんだよ。開けたとき、ルヴァ、もういなかったでしょ」 「ええ」 「今更取りにいくわけにもいかないし…」 オリヴィエは手にしたグラスを見詰める。 「ま、いっか。…ルヴァ」 「はい？」 何気なく顔を上げたルヴァは、そのまま抱き寄せられ、口付けられた。 え、と思う間もなく、口移しにワインが流し込まれる。 芳醇な香りが口腔に満ちる。 飲み込んだ後も、しばらくは口付けされたままだった。 やがて、おもむろに身を起こしたオリヴィエは、「乾杯！」とささやいてにっこりと笑った。 「続きは後で館に戻ってからね。ワインよりも私に酔わせてあげる…」 「…オリヴィエ…」 ルヴァは、微かに頬を染めながらオリヴィエを見詰める。 今度は軽くついばむように口付けて、オリヴィエは、ルヴァの耳元でささやいた。 「メリークリスマス、ルヴァ…」 見詰め合う２人の上に、はらはらと雪が降りかかる―――

ふと気が付くと、今年はＴＯＰページにクリスマスらしい飾りつけもしていませんでした… ということで、急遽クリスマスのお話を書いてみました。 ほとんど何も内容の無いお話ですが…（＾＾； １週間に２度大雪が降ったため、クリスマスにまだ雪が残っています。 ホワイトクリスマス、というわけにはいきませんでしたが、まあ、イブの２日ばかり前に雪の夜は堪能しましたし、いい感じだったかな…と思います(笑) クリスマスは家でのんびり。それが最良…(笑)