「はぁい、ルヴァ」 そう言ってにっこりと笑った顔はいつにも増して艶やかだった。 「オリヴィエ！」 嬉しそうにルヴァが微笑む。 「遅くなっちゃったね。ゴメン」 「いえ。それよりいいんですか」 「ん？　何が？」 「今夜はオスカーやリュミエールと飲み明かすのかと思っていましたよ」 「あぁ」 面白そうにオリヴィエは笑った。 「リュミちゃんやオスカーとはいつでも飲めるからね。それより今夜はルヴァに会いたかったんだ」 言葉と同時にルヴァを抱き締める。 強く抱き締められて、ルヴァが「あ…」と声をあげる。 その口を、オリヴィエの唇が塞ぐ。 繰り返し繰り返し与えられる口付けに、ルヴァの身体から力が抜けてゆく。 その耳元にオリヴィエは、「ベッド、行く？」とささやいた。 オリヴィエは、ベッドに肘をついて上体を起こし、横たわったルヴァを見下ろした。 「ルヴァ…大丈夫？」 「えぇ、オリヴィエ…」 少し掠れた声でそう答えて、ルヴァは微笑んだ。 「ちょっと、無理させちゃったかな。…ゴメン」 労わるような眼差しに、ルヴァは軽く首を振る。 「大丈夫です」 言いながら、オリヴィエが「ちょっと無理させちゃった」と言った行為を振り返る。 カッと頬が熱くなるのがわかった。 「ルヴァ、愛してる…」 オリヴィエは優しくルヴァを抱き締める。 何度も口付けを交わして、ルヴァを抱き寄せたまま、ベッドに身体を預ける。 まだ、夜は深い。 「オリヴィエ…」 「ん、何？」 「今夜のあなたは…いつもと少し違いますね…」 「…そう、かな…」 「どうかしましたか」 「どうもしない」 オリヴィエはルヴァを抱く腕に、少し力を込める。 「でも…そうだね。ちょっとムキになってたかもしれない…」 「何にです」とルヴァが聞き返すより早く、オリヴィエは「オスカーのヤツにさ」とつぶやいた。 「オリヴィエ…」 「昼間の話。オスカーがルヴァからそんなこと言われてたなんて、知らなかったなぁ〜」 オリヴィエの口調は、いかにも悔しそうだった。 ルヴァがクスリと笑う。 「すみません」 そう言って、クスクスと笑うルヴァに、オリヴィエは「ルヴァ〜」と情けない声をあげる。 「まったくアンタってば、適わないなぁ」 「すみません…」 そう言って、ルヴァはまたクスクスと笑った。 「そういえばさ…」 「え？」 「私が守護聖になった頃のこと、思い出した」 「はぁ…」 「聖地に来る前から突っ張ってたからね。守護聖だからって別に同僚じゃんって思って、最初っからジュリアスだろうがクラヴィスだろうが呼び捨てにしてたんだよね、私」 「えぇ、そうでしたね」 「呼び捨てにされて、ジュリアスはムッとしてた。オスカーもリュミちゃんもきちんとしてたからさ。いかにも心外だって様子で…でも、まさか自分に対して敬称を付けよなんて言えないもんね。さりげないふうを装っていても、どうにも腹立たしいって感じが丸わかりでさ、笑っちゃったね」 「はぁ、そうですか…」 ルヴァは苦笑を浮かべる。 「クラヴィスも動じないようでいながら、一瞬驚いたのは確かだね。ジュリアスと違ってムッとするんじゃなくて面白がってたけどさ」 「クラヴィスは、まぁ、そういう人ですねぇ…」 いったい、何が言いたいのだろう…。ルヴァは訝しそうにオリヴィエを見詰める。 オリヴィエはルヴァに向かってにっこりと微笑んだ。 綺麗な笑顔だ…とルヴァも笑顔を返す。 「もちろん、もっと上の人たちも驚いてたね。まぁカティスは面白がってたけどさ。そんな中でルヴァだけが違ってたんだ」 「え…」 「アンタはさ、私が「ルヴァ」って呼び掛けたら、嬉しそうに笑ったんだよ」 「え、そうでしたか」 「うん。そのときはどうしてだかわからなかったけど、今日のでなんだかわかったような気がする」 「はぁ…」 「今思えば、私、あのときの笑顔で、ルヴァってヒトが印象に残ったんだよね」 「それ、ずいぶん昔の話じゃないですか」 「うん。昔の話。昔過ぎてすっかり忘れてた」 オリヴィエはルヴァを抱き寄せて、軽く頬に口付ける。 「アンタを好きになったのはもっと後になってからだと思ってたけど、きっかけは出会ったばかりの頃だったんだね」 「オリヴィエ…」 「ルヴァ、愛してる…」 しっかりと抱き締められて、ルヴァは、深いところから喜びが沸き起こってくるのを感じる。 「もう１回していい？」 オリヴィエが耳元でそっとささやいていた。 「今度は優しくするから…」 ルヴァは頬を染めてオリヴィエを見上げる。 優しい口付けが降ってくる…。

オリヴィエ様編です。 ちょっとセンチメンタルなオリヴィエ様… ブラウザのＢａｃｋでお戻りください