２００１．４．３０
| きっかけは、ある日のランチタイムだった。 特に緊急の案件が飛び込んでこない限り、カティスはいつもルヴァを誘ってランチに出掛ける。 その日も二人はいつものようにランチを楽しんでいた。 食事が終わって運ばれてきたデザートを見て、ルヴァは嬉しそうに声を上げた。 「イチゴですね！」 その声と言い方があまりにも嬉しそうに響いたので、カティスは思わずルヴァを見詰めてしまった。 「お前、そんなにイチゴ好きだったか？」 「あ、すみません、つい･･･」 ルヴァの頬がほんのりと赤くなる。恋人になってまだそれほど間が無い少年のそんな様子が可愛くて、カティスの表情は自然に微笑んでくる。見詰められて、ルヴァはますます赤くなった。 「イチゴ、好きか？」 「えぇ、私の故郷にも同じ系統の果物はありましたけど、こんなに瑞々しくって、真っ赤で、甘いのは、聖地へ来て初めて食べました。なんだか、美しい宝石のような果実ですね」 そう言って、ルヴァは美味しそうにイチゴを食べた。嬉しそうな幸せそうな笑顔だった。 「ほら、俺の分もやるよ」 カティスは愛しくて仕方がないようにルヴァを見ながら言った。 金の曜日の帰り近く、カティスはルヴァの執務室を訪れた。 ルヴァは今週分の書類を全部片付けて休みに入れるよう、執務に集中している。 目の前に立つ人影にびっくりした目を上げ、それがカティスであることを認めてにっこりと笑った。 「カティス〜、びっくりしました。いついらしたんです？」 「ルヴァ、お前、明日何か用事あるか？」 「いえ、別に何もありませんけど･･･」 「じゃ、俺んとこおいで。いいもん見せてやるから」 「いいもの････？」 「ん〜、そうだな、少し薄着がいいな。動き易い格好で来るんだぞ」 「は、はぁ････」 「じゃ、明日な」 カティスは身を屈めるとルヴァの口元に軽くキスをして立ち去った。 残されたルヴァは見送って頬を赤く染めた。 土の曜日、ルヴァはカティスの邸に向かう。 動き易い格好でって･･･カティスは何を見せてくれるんでしょうね･･･ 執務服の足許まである長衣とは違う、私服にいつも好んで着ているゆったりした服装とも違う、ごく普通のシャツとパンツの少年っぽい格好がなんだかかえって落ち着かない。 不思議なくすぐったさを感じながらルヴァはカティスの邸を訪れた。 ルヴァを迎えたカティスは一瞬目を見開いて、そうして嬉しそうに微笑んでルヴァを抱き締めた。 「カ、カティスぅ〜」 「ははっ、すまん、すまん。あんまりお前が可愛いからさ」 「そっ･･･あ････だって････」 真っ赤になって口篭もるルヴァから身を離して、てのひらでポンポンと頭を叩く。 「さ、せっかく来てくれたんだから、約束のいいものを見せてやらなくちゃな」 カティスがルヴァを連れて行ったのは、庭のはずれにある小さ目の温室だった。 「この温室は、今までに見せていただいたことがないですね。何が作ってあるんですか？」 「ん？ まぁ、入ってみればわかるって」 促されて入り口を抜けると温かい空気と甘い香りが全身を包み込んだ。 「ぅわぁ〜〜！！」 「どうだ、ルヴァ。気に入ったか？」 「カティス〜。すごいです〜！！」 「そうか？」 嬉しそうなルヴァの様子にカティスの顔も綻んでゆく。 温室は一面イチゴ畑だった。ずらっと並ぶ緑の中のあちらこちらに真っ赤に熟れた実が重たそうに顔を覗かせている。 初めて見る光景にルヴァはうっとりと見惚れていた。 カティスはルヴァの肩にポンと両手を置いた。 「俺のイチゴ畑にようこそ」 「カティス････」 「さ、イチゴ狩りだ」 「イチゴ狩り？」 「そ。イチゴを好きなだけ採って食べることをそう言うんだ」 「好きなだけですか？」 「あぁ、よく熟れたのを見つけたら好きなだけいくらでも採って食べてくれ」 「････はい！」 「時間の制限は無いけど、おなか壊すほど食べちゃいかんぞ」 「カティスったら･･･そんなには食べられませんよぉ」 「ははは････そうか？ あ、採るときはこんなふうにな」 試しに一粒採ってみせるカティスの手元を、ルヴァは神妙な面持ちで見詰めている。 なんて、なんて大粒の美しい果実だろう。食卓で見掛けるイチゴと、本当に同じものなのだろうか････ 採ったイチゴを口に放り込みながら、カティスはルヴァに微笑みかけて一つウィンクをした。 「さ、行ってこい！」 背中をトンっと押される。 「はいっ！！」 と応えて、ルヴァは一面のイチゴ畑の中へ飛び出した。 すごい、すごい････。こんなに見事なイチゴがあっちにもこっちにも････。 どれを食べようかと考えて、ルヴァはしばし立ち止まる。 一つに手を延ばして実を摘もうとすると、それよりも向こうに見える実の方が赤く熟れているように思われて、じゃあそちらの実を、と向きを変えると更にその向こうにもっと美味しそうな実が隠れていて････。 ルヴァはなかなか最初の一つを摘むことが出来なかった。 これじゃあいつまでたっても食べられないですね。 ルヴァは自分で自分の困惑ぶりがおかしくなってきた。 そうですよ、カティスは好きなだけいくらでもって言ったじゃないですか。どれから始めたっていいんですよ。 クスっと笑って、手近な実を一つ摘んで口に入れる。 口の中に豊かな甘さが広がってゆく。 あ、なんて･･･美味しいんでしょう････ ルヴァは嬉しくなった。 こんなに綺麗で、こんなに美味しいイチゴがこんなにたくさんあって、そのどれを食べてもいいのだ。 それはなんて贅沢な幸せだろう。 砂漠の星から来た少年には、本当に夢のような風景だった。 ルヴァは弾むような足取りで歩き回りながら、ところどころで足を止めて果実を味わった。 食べるに従って、さらに味わいが増すように思われて、飽きることが無かった。 「どうだ、美味いか？」 だいぶん食べた頃、真っ赤な実に手を延ばしたところへ後ろから声が掛かった。 「えぇ、カティス。とっても美味しいです。これまでに食べたイチゴにはミルクとか練乳とかが添えてありましたけど、そんなもの無い方が美味しいんだってことがよくわかりました」 実を摘みながら振り返らずにそう応える。 肩に置かれた手にそっと手を添えると、繋ぎあったてのひらから温もりが伝わってくる。 身を捻るようにして振り仰ぐと、自分を見下ろしているカティスの温かい瞳に出会った。 「カティス･･･」 そう言いかけたルヴァの目がカティスの口元に吸いつけられる。 右手でイチゴを入れた籠を持ち、左手をルヴァに委ねたカティスの口には、大粒の色鮮やかなイチゴが咥えられている。 「ほうは、ほへはよはっは･･･」 言葉にならない言葉を発して、にっこり笑うと、咥えたイチゴを口だけでモクモクと食べ出す。 ルヴァは吹き出した。 「カティス、お行儀が悪いですよ！ ほら、口元が汚れてます」 ポケットからハンカチを出して拭いてやる。 くすぐったそうにしていたカティスが、ルヴァを見てニッと笑った。 いつの間にか籠を地面に置いた右手がルヴァの顎を持ってクイッと上を向かせる。 「お前の口元も汚れてるぞ」 顎の先をつかんだまま、親指の腹がルヴァの口元を拭っていく。 掠めるように上唇に触れられて、ルヴァの口から「あ･･･」と声が漏れた。 それが合図ででもあったかのように、カティスはルヴァに口付ける。 イチゴの甘い香りの吐息が絡み合い、カティスの舌がルヴァの口腔を蹂躙する。 イチゴの甘さの唾液がこぼれ落ちる。喉を伝うそれをカティスの口唇が追いかける。 「･･･あぁっ･･･」とルヴァが切ない声を漏らす。 その口を再びカティスの口が塞いだ。 ルヴァは両手をカティスの背に回して、必死でしがみついている。 支えてもらわなくては、自分ではもう立っていられそうにない。 カティスはそっとルヴァを地面に倒していく。その間も口付けは止まない。 ターバンの代わりに頭を覆っていたバンダナも取り払われ、蒼緑の髪が顕わになる。 深い口付けに責めたてられ、剥き出しの頭を愛撫されて、ルヴァの意識は朦朧となっていった。 シャツのボタンが外され温かな空気が胸に触れる。カティスのてのひらがルヴァの胸元をまさぐる。 与えられる刺激に、ルヴァの身体が震える。その切なさから逃れようと身悶える。 カティスの手は愛撫を続けながら胸から腹へと下がっていった。 ファスナーが引き下ろされ、カティスの手はルヴァの中心に行き着いた。 ルヴァの身体を衝撃が貫く。 「･･･や･･･はぁっ････」やっと解放された口が叫ぶ。 「あ･･･ダメ･･･ダメです、カティス･･･。もう･･･」 「大丈夫だ、ルヴァ。我慢しなくっていい。素直に感じたまま昇り詰めていけばいい」 「でも･･･でも････あ、あぁ〜〜！！」 高く声を放ってルヴァは達した。 震えながらしがみつくルヴァをカティスは優しく抱き締める。 服装を整えてやりながら、カティスはルヴァの耳元でささやいた。 「続きは･･･夜、ベッドの中でな･･･」 それからかなりの間、ルヴァはイチゴを食べる度に頬を染めていたという････ |
うーん、やっぱりイラストのイメージをぶち壊してるような気が・・・・
ま、これはこれとして読んでいただければ・・・・（お、開き直ってる）
リコさん、すみませ〜ん、こんなのでどうでしょうか・・・（＾＾；