「ねえ、ちょっと待ってよ」 突然後ろから声が掛かった。 ２人が「え？」と振り返ると、オリヴィエが「はぁ〜い」と手を振っていた。 いつも以上にきらびやかで派手派手しい装いだった。 「新年おめでと」 「あ、新年おめでとうございます」 「おめでとうございます、オリヴィエ」 にこやかに挨拶が飛び交う。 一通り挨拶が済んだところで、改めてオリヴィエがリュミエールを見た。 「ねえ、リュミちゃん、それはないんじゃない？」 「何のことです？」 「何のことって…リュミちゃん、今何してた？」 「来訪者の皆様に新年のご挨拶をしていましたが…」 「ルヴァと一緒に、ね」 「それがどうかしましたか」 「どうかって…そんなふうにルヴァを独り占めにしていいのかってこと」 「独り占め…。ルヴァ様とわたくしのことはあなたもご存じでしょう？」 「もちろん知ってるよ。だけど、ルヴァはリュミちゃん１人のものじゃないでしょぉ」 「…どういうことです」 「このサイトはルヴァの総受けサイトなんだから、ルヴァはリュミちゃんだけのものじゃなくって、私たちみんなのものだってこと。それを忘れないでね」 「オリヴィエ…」 リュミエールとオリヴィエの間で、ルヴァはいったいどういうことなのだろう、という表情で、小首を傾げながら２人の様子を交互に見詰めていた。 「さあ、わかったらルヴァを渡してちょうだい。私だってルヴァと一緒に挨拶する権利はあるはずでしょ」 オリヴィエがルヴァに手を伸ばすより先に、リュミエールはルヴァを自分の方に引き寄せてその肩を抱いた。 「リュミちゃん？」 「オリヴィエ、そうではありません」 「…ルヴァを渡さないつもり？」 「このルヴァ様は、わたくしのものです」 「この…ルヴァ？」 「ええ。このルヴァ様はわたくしだけのものです」 「ってことは、私の相手のルヴァとは違うっていうこと？」 「そうです」 「え？　まさか、相手の数だけルヴァがいるとか…総受けってそういう仕組み？」 「ええ。ご存じありませんでしたか」 「そっか〜。知らなかったなぁ…。じゃあ私のルヴァはどこにいるの？」 「さあ…普段よく一緒に過ごしている場所などにいらっしゃるのではありませんか」 「そう…？　じゃ探しに行かなくっちゃ。ルヴァ、リュミちゃん、またね」 急ぎ足でオリヴィエは立ち去った。 呆然として見送ったルヴァは、不思議そうにリュミエールを振り仰ぐ。 「ホントにそんな仕組みになっているんですか？」 「さあ…」 リュミエールは婉然と微笑んでルヴァを抱き締めた。 「わたくしは、今わたくしの腕の中にいらっしゃる、このルヴァ様がいてくださればそれだけでだけで充分ですから…」 「リュミエール…あなた、適当なことを言ってオリヴィエを追い払いましたね」 「さあ、どうでしょう…」 リュミエールは真顔で答える。 「少なくとも、他にルヴァ様がいらっしゃるところを見たことはありませんねえ」 「リュミエール…」 顔を見合わせて、２人は吹きだすように笑いあった。 窓の外には、美しい新年の空が広がっている。